第18話

 当日は王宮へ上がるのに失礼がないギリギリの質素なワンピースを着て少し化粧(げじ眉)をしてから馬車に乗り込んだ。今回は侍女を連れて行ってもいいのでメリダと共に参加する。


 城に着くと従者は中庭が一望できるサロンへと案内してくれたわ。私がサロンに到着すると、既に王妃様は席に座っていたわ。


「モア・ウルダード参りました。ご招待頂きありがとうございます。王国の月であるラディーヌ王妃様にお会いできて嬉しく思います」


七歳らしくたどたどしい言葉遣いで挨拶をする。王妃様はにこやかに私を向かい側の席に促した。


「フフッ。とても七歳とは思えないわ。クロティルドが気にするのも分かる気がするわ」


私はちょっとよく分からないと言いたげな表情をして微笑んでみる。


「この間のお茶会ではモア嬢に迷惑をかけたわね。まさか大勢いるお茶会の場で、あんな事が起こるとは思ってもみなかったのよ。怖い思いをさせてしまったわね」

「クロティルド王太子殿下に止めていただいたのでドレスが汚れただけで済みましたっ。でも、年上の人達が笑いながらぎゅーって腕を掴んだり、笑ってお茶をかけてきてとっても怖かったですっ」


私は俯きながら少し震える仕草をする。


「……そう。怖い思いをさせてしまったようね」


 王妃様は私に興味を無くしたようでそれ以上は聞いてこなかった。先ほど殿下が気にしていると言っていたから見定めようとしていたのかもしれない。王妃になる器ならこれくらいで負けてはいられないわよね。


まさか七歳の女の子がここまで演技をするとは思っていないようだ。私としては王家に関心を持たれないよう必死だけれど。


「モア嬢、お詫びの品は何がいいかしら?なんでもいいのよ?」


唐突に聞かれてどう答えるべきか悩む私。


「……えっと、噴水の周りにあった白い花を一つ分けて貰えませんか?」

「あら、あの花?まだ一般には出回っていない花だったかしら?」

「あのお花、とても綺麗だったので王宮に来た記念にしたいのです。押し花にしてお祖母様にも見せてあげたいと思って……」


「ふふっ。可愛い願いね。良いでしょう。お茶会が終わるころに従者に持たせます」

「有難うございます。嬉しいです」

「では私はこれで。クロティルドがそろそろ来るわ。少し話をしてから帰りなさい」


王妃様はそう言うとスッと席を立って行ってしまった。同時といってもいいほどにクロティルド王太子殿下がサロンへと入ってきた。私は立ち上がり、礼を執る。

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