第7話 国を出る


 三人ともぐっすりと寝て次の日、

「おはぁ」

「うぃ」

「おはよ」

 まだ寝ぼけ眼で外を見ると騎士団が集まっている。

「え?」

「なんで?」

 ドアを開けるとすぐに槍が出て来る。

「お前たちは何者だ?」

「俺たちは冒険者ですけど」

 カードを見せる。

「なんだ、Fランクか、なぜここに?」

「オークの巣の討伐に」

「あははは!お前たちがか?」

 ちょっとムッとするなこいつ。

「そうですけど何か?」

「我々がきたからオークの巣はもう無いぞ?」

「は?」

「だから、オークの巣を討伐して来たのだ」

「いや、昨日オークキングまで倒したのは俺らですけど?」

「なに?あれは残骸と言うのか?!」

「でしょうね」

 プルプルと怒っている騎士にオークジェネラルを見せてやる。

「ぬおおお!」

「これがジェネラルでオークキングはもっと大きいですよ」

「こ、これをこちらに渡すことは」

「は?手柄を横取りしようとしてるの?」

 収納にジェネラルを入れる。

「我々が手柄を?あははは、お前たちにはまだ早いから俺たちが報告してやろうってだけだ」

「それを横取りと言うんですが?馬鹿ですか?」

 こいつは胡散臭いと車に乗り込む。

「おい!出てこい!お前たちにも金をやろう」

「いらないでーす」

「チッ!こいつらを殺せ!」

 槍が飛んでくるが全く傷つかない俺の愛車!

 そっちがその気なら。車を走らせて騎士をはね飛ばす。

「まだやります?」

「ば、化け物め!もう許さんぞ」

「まだらしいから」

 もう一度車を走らせて騎士団をはね飛ばす。

「もう一回?」

「こ、この野郎」

「もう一回だって」

 何回だって繰り返してやる。

「もう一回?」

「も、もう勘弁してください。すいませんでした」

「わかればいいよ」

「しかし、騎士団の名が」

「もう一回?」

「いえ、すいません」

 騎士団はほぼ壊滅状態だ。まぁ、このくらいしても大丈夫だろ。

「んじゃ、ギルドに報告に行こうか」

「「おう」」

 車で途中まで行き、そこから歩いて行く。

「久しぶりに感じるのは俺だけか?」

「俺もだよ」

「さて、どうするかね?」

 ギルドに報告して大丈夫かな?


「なんですって?オークの巣を壊滅させた?」

「はい、そりゃ大変でした」

「だってまだFランクですよ?」

「ランクはあんまり関係ない気がするんですが」

「しょ、証拠は?」

 ケンタにオークキングの頭を出してもらう。

「ひ、ひぃ!お、オークキングの頭」

「うおっ!あいつらすげえな」

  「やばっ」

      「あんま近寄んなよ」


「ギルマス呼んできます」

 受付のお姉さんは階段を上がって行った。

「ピンクだった!」

「見てんじゃねーよ!」

 ダイジロウのスケベにも困ったもんだ。まぁ、俺も見えたけど。


「そんなことが、が、が、あれはオークキングの頭か」

 ギルマスは降りて来るなりオークキングの頭に夢中だ。

「で?討伐金なんかは出るんですよね?」

「は?Fランク如きが何を言っているんだ?」

 やっぱりか、

「ならこれは無かったことにして、他の国に行こうぜ!」

「はーい」

「賛成」

 オークキングの頭をしまって他の国に行くことにした。

「いや、待ってくれ!」

「もういいです。んじゃね」

「待てって言ってるでしょうが!!」

「何?」

「それを買い取ってやる。それでどうだ?」

「話にならないな」

 俺たちはギルドを出てウスイさんのところへ来た。

「この国を離れますんで、そう伝えといてください」

 あいにくウスイさんは留守だった。

「はい、かしこまりました」


 門を出る時に騎士団と再会したが、何も言わずに車に乗り込む。

「む!何処へ行くんだ!」

「この国に嫌気がさしたからほかの国に行きまーす」

「そんなこと許さんぞ」

「ムーリー」

「せめてオークキングの」

「じゃーねー!」

 車を発進させて街道を直走る。

 

 途中でゴブリンに襲われてる荷車があったので助けると奴隷商らしく、さっさと逃げるように鍵を外してやった。ほかの女は逃げたけど奥にいた子供は逃げられないようだ。

「どうした?逃げないのか?」

「逃げても一緒、私は生きられない」

「んー、なら俺たちと来るか?」

 旅は道連れだしな。

「おいおい、こんな子供どうすんだよ?」

「俺たちで面倒見てやるんだよ」

「お前名前は?」

「サティ」

「ふーん、俺がジョーで後ろのでかいのがダイジロウ、ちっこいのがケンタな」

「ちっこくないだろうが!」

 ケンタが文句を言うが言葉のアヤだ。

「サティは隣に座るか」

 助手席に座らせてシートベルトをしてやる。

「んじゃ出発!」


 サティは速いと最初怖がっていたが慣れたのか窓の外を見ている。

「おー、あれが国境か」

「なげぇなぁ」

「このまま突っ切るか?」

「それじゃあお尋ね者になるじゃねぇか」

 途中から歩いて国境までくると、出るのはいいらしいが隣の国にはいるのに金貨が飛んでった。

「国跨ぐだけで金取りやがって」

「ガチャやった方がいいっつーの!」

 ダイジロウとケンタは文句タラタラだ。


「ここが次の国、帝国ロジグレイルか」

「まだマシならいいな」

「だな、それだけだぜ」


 でかい街に着くと入町税が取られた。

「まぁ、銅貨だからいいけどな」

 ギルドに行く。ここは賑わっているようだ。

「お姉さん、買取はどちらで?」

「右に扉がありますよね?そこです」

「ありがとう」

 右の扉に行こうとすると、男どもに囲まれる。

「何を売ろうってんだ?」

「何も持ってないだろ?」

「これだけど」

 オークキングの頭を出す。

「ひぇ!」

「あ、あぁ、すまなかったな」

「いいえ!」

 オークキングの頭をしまって、扉の中に入る。

「おう!何を持って来たんだ!」

「ここじゃ狭いな」

「お、大物か?んじゃこっちきな!」

 ついて行くと倉庫のようなところに出た。

「ここならいいだろう?」

「あぁ、んじゃ」

 オークキング、ジェネラルを二つ出す。

「うお!オークキングにジェネラルじゃねーか?巣を潰したのか?」

「おう!潰して来たぜ!」

「こりゃ、すげえな。買取金額にビックリすんなよ?」

「まだオークが山のようにあるんだが?」

「オークもか?何体くらいだ?」

「百はあるな」

「なら五十だけ出してくれ。それ以上は値が下がる」

「了解!」

「それじゃあこれを受付に渡してくれ!」

「あいよ!ありがとう」

「あぁ!またきてくれよな!」


 受付にさっきの紙を渡す。

「し、少々お待ちを」

「まーたギルマスか?」

「こちらにどうぞ」

 受付のお姉さんに呼ばれて行くと別室に案内される。

「またせたかな?俺がここのギルマスだ」

「俺がジョー、サティ、ダイジロウ、ケンタ、だ」

「Fランクってのは本当か?」

「ランクは後からついて来るもんじゃねーの?」

「たしかに、オークの巣についてだが」

「あぁ、隣の国でオークの巣を壊滅させたが、まともな対応じゃなくてな!この国に来たんだ」

「そうか、それは大変だったな」

「そりゃもうね」

「それで買取金額だが、オークキングが金貨一万枚、ジェネラルが八千枚、オーク五十体が金貨五百枚だがこれでいいか?」

「正当な値段なら文句は言わないよ」

「正当な値段だ。オークションに出せばもっと値が上がるがどうする?」

「いいよ、これで十分だ」

 一万八千五百枚か、一気に大金持ちだな。

「あとランクをCまで上げることにする」

「それはありがたい」

「本当はBでもよかったんだが権限がなくてな」

「いや、ありがたい」

「それでは白金貨十枚と大金貨八五枚だ」

「アイテムボックスにいれて確認した」

 アイテムボックスは何が幾つ入っているのかわかる。収納もだけど。

「それは凄いな、アイテムボックス持ちか」

「内緒で頼むよ」

「あぁ、それでこの街にはどれくらいいるんだ?」

「さぁ?飽きるまではいるつもりだ」

「そうか、じゃあ、またな」

「はい、ありがとう」

 握手をして別れる。


 ギルドを出ると服屋によってサティの服を買ってやる。下着なんかも自分で選ばせるが、わからないみたいで店員にお願いした。

「覚えていけよ?」

「うん」

 俺の服の裾を掴んで離さない。

 宿は四人部屋を頼んで下の酒場で飯を食う。サティはがっついていたが、次第に眠くなったみたいだ。

「本当に子供だな」

「ジョーはいいのか?」

「何が?」

「俺たちが帰ったら一人になるぞ?」

「だからいまのうちに教えるんだよ」

「そうか」

「ならいいけど」

 ダイジロウもケンタも何を気にしてるんだか。

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