ガチャ車の旅ー男三人キャンピングカーで異世界へー

あに

第1話 異世界へ



「ふんふんふーーん」

 中古で買った軽のキャンピングカーを軽快に走らせる。


「「「いえぇぇぇぇい」」」

 車のBluetoothで繋がりスピーカーから流れるアイドルの歌に合わせて大声を出す。


 大人になってからも連んでいる三人で遠出を計画し高速を上っていく。

「次のSA寄ってくからよろしくー」

 現在、時刻は夜中の三時過ぎ。にしては前後の車も無く、大型のトラックすらさっきから見ていない。運転で疲れているのか少し心細いので息抜きに身体を伸ばしたい。


「あと12キロ先にあるから、運転代わろうぜ」

 助手席から声をかけてくるのは|朽葉大治郎

《クチハ ダイジロウ》、体格の良さが特徴で怖がられるが臆病な性格だ。

「おう、頼むな」

「大治郎が運転すんの?また煽られるぞ?」

 後ろから文句を言うのは矢作健太ヤハギ ケンタ小柄だが1番顔が良くモテるが、一番オタクだ。

「っせーな、法定速度を守ってるだけだろ!」

「トロトロ走ってんから煽られんだよ!」

「だぁ!うっせーよ!」

 んで、運転してる俺は伊藤丈イトウ ジョウ体格も普通、性格は明るい方だと思う。


「トンネル何キロだった?」

「1200」

「にしては長くねぇか?」

「だな」

 トンネルに入ってからだいぶ走っているがまだ出口が見えない。


「お、出口か?」

「……違くね」

「おい!停まろうぜ!」

「なんかヤバいって!」

 出口の雰囲気じゃないが、トンネル内で停車するのも危ない、どうする?

「っこむぞ」

「「だぁぁぁあぁ!」」




 あれからどれくらい経つのか分からないが身体の自由が効かない。シートに座ってる感覚はある。とりあえずは無事だったようだ。「なんだここ?」

「…あ、喋れるわ」

「おうジョウも大丈夫か?」

「いてて、後ろの俺はあたまぶつけたんだが」

 大治郎も健太も大丈夫のようだ。

 周りを見ると森?…木で周りを囲まれている。

「落ちた?」

「かも?でも怪我してなくね?」

「俺は頭打ったって!」

 落ちたにしては衝撃も無かった。

「てかここどこ?」

「静岡を走ってたはずだけど」

「俺を心配しろよ!」

 夢でもみてるのかな?健太がうるさいからそれはないか。

「ちょっと外見てみるか?」

「だね」

「もーいい!てか、この木なんの木?」

 よくみると見たことない木に囲まれている。バックミラーで見ても後に下がる余裕は無い。

「え、やだなぁ。こわいなぁ」

「っと、来た道無いな。上も空しかないし、いつのまにか昼間だぞ?」

「健太、あんま遠くに行くなよ」

 さっさと降りた健太に声をかける。

「大丈夫だって、てかなんとか運転できるくらいの幅しかないぞ?」

「は?俺の車を置いてくのか?」

 んなばかな。

「いや走れるとは思うけど道がそっちしか無いのはどゆこと?」

 よくみるとそのようだな。

 ゆっくり車を進めていくと歩いてついてくる健太。大治郎はキョロキョロと辺りを見回している。


 数キロ走ったところで森から出られ、辺り一面草原になった。

「なんじゃこりゃ?」

「ゴルフ場でもなさそうだな」

「いや、こんなとこそうそうないだろ」

 健太が乗り込んできて三人でわちゃわちゃしていると草原から、

「お、お、狼?」

「囲まれてんぞ!」

「ちゃんとシートベルトしろよ!逃げるぞ」

 囲まれてる間を車を走らせるが何匹か引いてしまったようだ。

『レベルがアップしました』

 ん?

「今なんか言ったか?」

 後ろから健太が声をかけるが、こっちはそれどころじゃ無い。

「どーけどけどけどけ!」

「うおおおおおおおお!」

 俺の愛車がボコボコになるのも構わず、狼から逃げるので必死だ。

 ドンッと音がして、一番でかいやつをひいてしまった。

「バンパー交換かなぁ。金のかかることばっか」

「つか狼逃げてくじゃん」

 群れのボスをひいたようで、狼達が逃げていく。

「ここはサファリパークか?」

「それもちがうな。さっきなんか声が聞こえただろ?」

「声?」

「たぶん俺たち地球じゃ無いとこにきてんじゃね?」

 ん?地球じゃないとこ?

「ラノベでよくある異世界じゃね?」

「んなばかな」

「…す、ステータスオープン」

 大治郎が小声でいうと、よくあるRPGのステータス画面がでている。

「で、でた!」

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

朽葉大治郎 22歳 

レベル2 職業 無職

力 D

防 D

速 E

知 E

魔 E

スキル 柔道 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「ほぉ、よくできてんなぁ」

「つか、凄くね?」

「すげぇよな!」

 ゲームはよくやってたけど自分がそうなるとは思っても見なかった。

「「ステータスオープン」」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


矢作健太 22歳

レベル2 職業 無職

力 E

防 D

速 E

知 E

魔 D

スキル 工作 鑑定


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


伊藤丈 22歳

レベル2 職業 無職

力 D

防 D

速 D

知 E

魔 E

スキル 剣術 収納


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「ジョーだけ高くね?」

「誤差だろ?」

「俺なんか低すぎだろ」

 車内でわちゃわちゃやってると“ゴンゴン”と車を叩く音が、そちらへ目をやると、

「ゴブリンじゃね?」

「だな」

「てか俺のクルマ!」

 外に飛び出しぶん殴って車の傷を確認する。

「おー、良かった!凹んでないな!」

 車をグルリと回るとさっきの狼達との傷なんかもない。

「つか、ゴブリン死んでね?」

「動かないね」

 自分の車を叩かれる怒りから手が出てしまったが、死んじゃったかな?

『ご…ゴブ……』

「あ、死んだな」

「弱っ!」

「ナンマンダブ」

「しゃーないべ!俺の車を叩くこいつが悪い!」

 俺は悪く無い!


「つかジョーでもゴブリン一発なんだから俺ら強いんじゃね」

「次は俺がやるぞ!」

 馬鹿二人はヤル気だ、外に出てきた。

 外に出た俺は辺りを見回して、やっぱり異世界ってーのに来たんだと再認識。

「……どーやって帰る?」

「「さぁ?」」

「ガソリンの問題もあるのだが」

「ラノベ的には車は問題無いと思うぞ?よくあるパターンだとガソリン減らない、壊れないとか」

「マジか!最強じゃねーか!」

「てかどの程度の文明よ?よくある中世的な?」

「だったら車やばくね?」

「やばいな」

 中世ってどんなんよ?騎士とか?

 後は森、前は草原。

「どーするよ!キャンプにはもってこいだが!どーするよ?」

「いや、しかしキャンプどころじゃ無いだろ」

 たしかにキャンプどころじゃ無いわけだが、キャンプしに来て異世界って。

「とりま車に戻るべ」

「はぁ、だな」

 車に戻ると後ろから健太がうるさい。

「ガチャガチャがあるんですけど?ガチャガチャ」

「ちょ、ごちゃごちゃうるさいよ健太」

「だってガチャガ「うるさーい!」」

 ちょっと疲れて俺は運転席で目を瞑る。


「ジョー…ごめんだけど健太の言ってることほんとなんだけど、見てみてくれよ」

「なんだよ大治郎もかよ…とりあえず後ろに行けばいいんだな」

 後ろに行くとガチャガチャマシーンが備え付けてある。

「いや、ここにあると三人寝れないでしょ……って、なんでガチャがあるんだ?」

「「だろ?」」


 もー訳が分からないことだらけだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る