第3章終幕

Day.4


今日はクエストに行く。


そして、今日で最後である。


マルカイに、会わなくてはいけない


「さて、行くか」


「はい…」


「あれぇぇ?勇者じゃぁぁあん。」


マルカイの声が、聞こえる。


来た。


マルカイは、どうやら、サクタに話しかけているようだった。


「…」


「お前…生きてやがったのか」


「そっちはぁぁ、ぁぁぁぁああああ!お前、さては、そうかぁぁ。偶然だな。だが、死んでもらう。」


「…!」


俺の事を勇者と言わないあたり、俺の正体を知っているのだろうか。


まぁ、いいけど。


「やれ。勇者。」


「おい、どういう事だ?」


「…」


「やれぇぇぇぇぇぇ!勇者ぁぁぁぁぁ!俺が!拾ってやったのにぃぃぃぃ!お前が追放されてぇぇぇ!助けてやったのにぃぃぃ!逆らう気かぁぁぁぁ!?」


「おい。どういう事何だ」


「言う事聞かねぇならぁ、し ょ ぶ ん するぞぉぉ、良いのかぁぁ?いや、もういやねぇや」


俺は、マルカイの声が、


マルカイのやる事が、


マルカイそのものが


とても嫌いらしい。


俺の意識とは別にマルカイは宙に浮いていた。


「!!!勇者モドキが俺に楯突くなぁぁぁ!」


キィィィン!


鉄と鉄が、ぶつかり、削れていく音が響いた。


カァン!カン!キィィィ!




『気体』


「かっ!おま、ぇぇぇ!」


「あまり喋らない方がいいですよ。二酸化炭素を肺に貯めてるので。」


「かは!」


どうやら、死んだらしい。


だが、サクタはマルカイのスキルの事を知らないかのように、魔法を解いてしまった。


「おい!」


「えっ?」


「勇者ちゃん。じゃあねぇぇ。」


サクタは、マルカイにやられそうになる。


急いで、行き、攻撃を跳ね返す。


すると、サクタは倒れてしまった。


どうやら気絶してしまったらしい。


だが、見られていないのなら、


「黒き漆黒の雷よ、」


本気を出せる。


「放たれ無に還るがいい」


俺は、周囲に低気圧で雲を発生させる。


バフをつけ、遠慮なく放つ。


「黒雷」


そう、言い放った瞬間、音に出せない音が響き、漆黒の雷がマルカイを穿つ。




だが、彼は不老不死だ。


当然生きている。


「あ、あぁ、お、まえぇぇぇ、何しやがぁぁあるぅぅぅぅ!」


「来いよ、本気で相手してやる」


「はぁぁぁぁぁぁあ!」


これじゃあどっちが魔王か分からないな。


俺が今の所勇者なのに、魔王に思えてきた。


ま、魔王だけど。


「遅い」


「くは!」


「弱い」


「ゴホ!」


「もっと、強くなきゃ」


「かは!あ、てんめぇぇぇぇぇぇぇ!」


もう飽きたよ


俺は風のようにそれを言い、


周りの壁を壊し、


グッシャグッシャにしてやった。




「ん…」


数十分すると、サクタが起きた。


「勇者さん!」


「大丈夫。終わったよ」


「えっ?」


驚いている。ま、生き返るって分かってるだろうし、そりゃぁな。


「行こう」


「は、はい」




「凄い瓦礫…」


「ここからの方が近道だ。行こう」


「…はい」


行こうと瓦礫に乗った。


「ゥ゙」


微かに、でも確かに瓦礫の下からマルカイの呻き声が聞こえた。


死ねずに、生き返るそれも、何度も。


「ヒィ、ゔ」


サクタが、吐きそうになった。もしかして…


「…気づいた?」


「…!」


「大丈夫」


「…」


「名前、聞いてませんね」


「俺の?」


「はい」


「俺の、名前は…」


「ユウだ。」


「僕は、サクタです。」


「よろしく。サクタ」




パキ…。




この、音は…




俺の




心が、無くなった音だ。




何かが壊れた音だ。


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