第6話 風の谷のドラゴン ②
二人は、ドラゴンに見つからないように恐る恐る巣穴に近付く。
「ここかしら?」
ドラゴンの鱗の色から二人は直感でそこに親がいると思った。
二人は、見られないようにゆっくり近付くと近くの岩陰に子ドラゴンを置いた。子ドラゴンは、ピーピー声を立てた。仔猫程のサイズだが、声の威力はその倍以上はある。
二人は焦り、その場を引き換えそうとした。
すると、向こう側からゆっくりとドラゴンが近付く。母親だろうかー?
子ドラゴンは、ピーピー声を立てると母親の元へとぼとぼ歩み寄るー。
母親ドラゴンが、子ドラゴンを優しく舐め回す。そして、コチラを向き口から炎を吐き出す。
二人は榎の向きを変えると一目散に、その場から引き換えした。
二人が、庭に戻るととっくに授業は終わっておりマーガレットはカンカンに怒っていた。二人は、しばらく丸くなると校長室へと向かった。
「そうです、ドラゴンが、ドラゴンがいたんです。」
「ええ、私とブリギットはこの目で見たんです。」
二人しにりにその時の状況を話す。
マーガレットはヒステリックになっていたが、校長は笑いながら彼女を宥めた。
「そうかい、そうかい、今度、その話を聞かせてもらおう。」
「あー、怖かったね。先生、誰も信用してないっぽいみたいだし・・」
「ゴメンね。私に付き合ってくれて。」
「何、言ってるのさ、仲良くなった訳だし。あんまり落ち込まないで。ブリギットは、良い事したんだよ。」
二人は、広く長い廊下を歩いた。途中で、二人に対するヒソヒソ声でセイラは軽く不機嫌になった。
向こう側の方から、カツカツと女性のヒールの音が響き渡る。真紅のローブを纏い、上質なステッキを携えている。
「魔法省の人だね。」
「うん。」
ブリギットは、彼女を見ると急に顔を曇らせた。
「どうしたの??」
「・・私の、ママよ。」
二人は、ブリギットの母親とすれ違う。ブリギットの母親は眉を吊り上げ、口をへの字に曲げた。相当、起こっているみたいだ。
「何していたかと思えば…ブリギット、あなたまた問題を起こしたみたいね?ああ、あなたの顔を見てると、亡くなったおじいちゃんを思い出すわ。」
ブリギットの母親は、キンキン声でヒールをカツカツ音を立てていた。その音が、如何にも苛ついているかのようで、セイラは不快に思った。
「でも、ドラゴンが・・怪我をしていたの・・」
「はっ?ドラゴンが、怪我を!?あなた、何の為にこの学校に来たと思ってるの?」
ブリギットの母親のヒールの音は、益々強く小刻みに音を立てていた。
「魔法の勉強でしょ。」
「よく分かってるじゃないの?だったら、何で入学試験結果悪かったの?」
「私は、ホントは魔女になりたくないし、自分は向いてないと思う。魔法以外に大事なものだってある筈だし‥」
「は?あなた、何考えてるの?あなたは、何も能力がないんだから何もできないんだから、言われたことをしていればいいの。分かった?」
ブリギットの母親は、早口で捲し立てた。周りの生徒らは唖然とし彼女を見ていた。
「ちょっと、ママ、やめて。ここは、学校よ。」
ブリギットは、顔を紅くし周りを伺いながらヒソヒソ話した。
「あー、あなたのせいで大分時間を食ってしまったわ。私は、これから理事長に用があるから、ここで失礼させてもらうわ。」
ブリギットの母親は、ヒステリックに声を荒らげてカツカツヒールを響かせこの場を去った。
「大丈夫?」
セイラは、恐る恐るブリギットに尋ねた。ブリギットは、明らかに家庭に問題があるようだ。
「うん。大丈夫。いつもの事だし慣れてるから。私の母方は優秀な魔法使いの一族なんだけど、父方にちょっと問題あってね…」
ブリギットは、箒を強く握りしめると拳を強く震わせていた。
「私は、ブリギットの考えに同意だな。魔法以外に大事なものがきっとある筈だし。」
セイラは、早口でブリギットを慰めた。これ以上、何を言ったら良いのか分からなくしばらく微妙な沈黙が流れた。
「何で、私だけ、こんな思いをしなきゃいけないんだろ‥」
ブリギットは、俯き軽く涙ぐんだ。
二人は、無言で長い廊下を歩いた。
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