第13話 魔法と秘密 ①
ルーナと同じ寝室の他のメンバー達にも魔王石の事が知れ渡ってから、みんな思い思いの願いを叶えていた。
部屋中、女子トークで花を咲かせていた。
「ねぇ、私、髪がこんなに綺麗でサラサラになっちゃった…」
「わあー、ホントだ。私は、ほらコスメがこんなに…」
「何これ、最新のコスメ!?総額300万くらいもする中々手に入らない最高級、あのイメルダ王女御用達のお店の…」
「ほら、私は、こんなにお洋服が沢山…イメルダ王女と御揃の‥」
「わあー、素敵なワンピース…」
「私は、沢山メイクして、お洒落して、あのベガとランダに…」
「キャー、わたしも、」
「あっ、このネックレスとピアス欲しいな…」
「あー私もー」
女の子達は、カタログや雑誌を眺めながら二つの石を取り囲み黄色い声で盛り上がっていた。
それから、3日が経った。
セイラは、徐々にブリギットの様子がおかしいと感じるようになってきた。
そして、同じクラスの子の何人かも明らかにおかしいー。急に容姿端麗になった者、成績優秀になった者、高価なコスメやアクセサリー、衣類で着飾りやお洒落になった者達や、癖毛が見間違える程綺麗なプラチナブロンドのストレートヘアになった者までいる。
ー魔王石は、1つしかない筈だ…他にあるとは考えられない。
それよりも、ブリギットの事だ…彼女の様子が明らかにおかしいー。
最近の彼女は、魔法についての知識や実務はほぼ完璧なのに、性格が冷ややかで刺々しくなっていたのだ。
いつものブリギットは、気弱だが穏やかな感じて人当たりはとても良い。
しかし、今の彼女は気が強く口調もきつめだ。いつものおどおどした感じの彼女が、周りに対して敵対するかのようにツンケンしていたのだった。
それから、セイラとの距離も次第に離れていったのだった。
それは、セイラがいつもの退屈な魔法史を受けて睡魔に襲われていた時の事だったー。
ーセイラ、魔王石よ。ほら、魔王石を使うの。
「あんたは!?」
ー夢の中で見た少女の声だ…。
「咲山セイラさん。」
先生は、コホンと咳払いするとセイラはハッとし前を向いた。
「先生、聞こえませんか?少女の声が…」
「少女の声…?」
ー残念。私の声は、貴女にしか聞こえないのよ。
「何で…?」
「咲山セイラさん!」
先生は、口調を強めた。
「…ごめんなさい…」
セイラは丸くなり、首を傾げ渋々席についた。
ーねぇ、ねぇ、貴女がこの世界の言葉が通じるのは何でだと思う?
「え!?」
セイラのその声に、先生は大きく咳払いをした。
「えっ…あ、はい…すみません…」
セイラは、先生の厳しい視線を感じ丸くなった。
ー大丈夫よ。心の声でちゃんと通じているから。
クローバー.ハートは、甘くねっとりした声で優しくなだめた。
ーねぇ、何でこの世界では貴女は普通に言語が通じてるのかしら?不思議に思わないー?
ーえ…?
気づきもしなかったー。
そう言えば、確かにそうだ。違う国同士異なる言語を使う。ましてや、異世界となるとそれは当たり前にある筈なのだ。
だが、セイラはここの世界の住人達と当たり前のように言語が通じ普通にコミニケーションをしている。
ーちょっと、感じてみましょうか…異なる言語というものをー
パチンと指を鳴らす音が聞こえたかと思えば、先生は早口で奇妙な言語で話していた。
先生の話している言葉が全く分からないー。英語でもなければ、中国語でも韓国語でもない。北欧のようでそれとも異なる、早口で独特な抑揚やトーンで先生が話をしている。
黒板や教科書を見ても、奇妙な幾何学模様のような暗号のような文字がズラリと書き記されていた。
「え…?」
セイラは、ノートを見た。ノートは、元々の自分が使っている言語で書かれている。日本語だ。
ーどういう事ー?
ーこれが、本来のこの世界のこの国の言語よ。あなたは、魔王石の力で普通に言葉が通じコミニケーションを取れていたの。貴女は、魔王石の力でこの世界の人と言語が通じるようになった。貴女とこの国の住人は、魔王石を通してそれぞれの言語で、お互いの言葉が通じあっていたの。魔王石は触れると大きな変化をもたらす。だけど、その石の力は元々強大であらゆる法則に普段から影響するのよ。
ーえ、もっと、わかりやすく言ってよ。
頭がこんがらがるー。最近のブリギットのことで頭が一杯一杯なのに…
先生は、尚も謎の言語で話し続け意味不明な幾何学模様の文字を板書し続けているー。
頭が、パンクしてしまいそうになるー。
ー要約すると、魔王石は近くにいる人に干渉し五感に働きかけるの。つまり、魔王石は既に貴女の近くにあったことになるわね。
クスクス笑い声が拡がる。
ー魔王石が、他にあるとでも言うの?ルーナは、『返した』と、言ってたから…
ー世界はね、まだまだ貴女の知らない事だらけなのよ…
少女は、いたずらげにクスクス笑いながら話す。何処となく不安を仰ぐ話し方だ。
ーあのアルカナの魔女達は、何の力で蘇ったと思う?
ーもしかして、い、石の力…?
ーそうよ、貴女、勘が鋭いのね。とある誰かさんがとある目的で、死んだ魔女達を次々と蘇らせた。
ーだ、誰が、何の目的で…?
ー教えなあい。だって、貴女が簡単に知ってしまったら、つまらないもの。
クローバー.ハートは、人の心を弄ぶのが余程好きなようだ。
ーねぇ、私は、私は、どうなるの…?代償を、代償を支払わなきゃいけないんでしょ…?
そうだ…自分は近い内に石になってしまう。あるいは、直ぐに寿命が尽きてしまうのだろうかー?
ー大丈夫よ。貴女の魔力は、元々強大だもの。誰かさんの遺伝でね。また、貴女は守られてるのかもね…
ーお母さん…?
ーでは、お母さんにヨロシク
クスクス笑い声が木霊する。
その笑い声は、徐々に小さくなっていく。
そして、少女の声は消えた。
「待って!」
セイラは、立ち上がった。
「セイラさん!」
先生は、セイラを睨みつけた。感じる言語は、元の日本語の状態に戻っていた。
どうやらその奇妙な少女は、自分に何らかのヒントを与えているようにも感じたのだった。
しかしながら、何の意図があるのかは定かではないー。
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