第15話 魔法と秘密 ③

 ルーナと同じ寝室のメンバーは、魔王石のことで全員職員室に呼ばれ全員事情聴取されることとなった。


 シーラは、2週間にわたり

放課後1時間残って勉強する羽目になった。


「先生、頭がクラクラして目が、目がしょぼしょぼしてしまいます…」


シーラは、一番前の席で眼を擦りながら頭を抱え眠気を堪えていた。ノートの字が、ミミズが張ったかのような感じになっている。

「シーラさんなら、分かってるんでしょう?これらの問題。完璧に解けてましたからね?」

数学の先生は、教壇の側の椅子に腰掛けながら腕を組んでシーラを監視している。

「いえ…これは…けど、私は今になって思います、この√(ルート)とかXやYは、今後に何の役に立つのか、問題解いて何の意味があるのかが、よくわかりません。数学的な思考と言いますけどね…大切なのはこういう機械的な堅苦しい事より、人の心、情かと思うんですよ…私は。」

シーラは、必死になり無駄な抵抗を述べた。

「屁理屈は、お止しなさい。貴女は、その心が濁って弱かったから石の力にすがってズルをし堕落してしまったのです!」

先生は、強い口調でシーラを睨みつけた。

彼女は、相当カンカンであるようだ。

「…ひっ…」

シーラは、ビクッとし丸くなり渋々問題を解こうとした。




「あー、もう、頭がカチンコチンになっちゃう…」

シーラは、寮の寝室のベットで大の字でうつ伏せになった。

コスメやアクセサリー、宝石は、ただの石になっており、衣類や靴はただの布切れや木の置物に様変わりしていた。

幻を見せられていたのだろうか?これが本来の姿だったのだろう。部屋のメンバーは、愕然とした。

「シーラが悪いんでしょ?ズルしてたんだから…はあ~」

エウロパは、元の容姿に戻り、大の字で仰向けになり全身の力が抜けてしまっていた。痩せてた夢のようなひとときを思い出してはため息をついていた。

「そ、それは認めなくはないけどさ…」

「やはり、世の中、そううまい話はないのよね…」

「そうよね。でも、楽しかったわ。良い夢みさせてもらったわ。」

「うん、私も。」

他の同室のメンバーも、苦笑いしながら寂しそうに石や布切れ、木の置物に視線をやった。

「ねぇ、ルーナ、あの石、どうなっちゃったの…?何でも無限に願いを叶えてくれるって…」

「そうだよ!エウロパの言う通りだよ。私、折角うまくいってたのに、あの石がおかしくなったせいで…」

シーラが、口を膨らませて、ブーブー文句を言った。

「分からない…分からないわ。私、学校の先生らしき人から、貰った石だもの…」

ルーナは、ベットに腰掛け枯れ木のように元気がなく俯いていた。

「先生らしき人って、魔法で先生に化けてた怪しい魔女だったんでしょ…?」

エウロパは、目を半開きにし大の字でひたすら天井を眺めて喋った。

「今思えば、そうだと思う。私、どうかしてた。最近、ちょっと、家庭の事情で…」

ルーナは、元気がなくなっていた。彼女の曇った表情から、何処かしらに他に隠し事があるようだった?

「それは、確かに仕方ないかもしれないけどさ…ごめん、言い過ぎた。」

「ごめん、私も。ズルしたのは、私だし…」



「ごめん、確認なんだけど…後で、私達全員罰を受けることはないんでしょうね…?」

部屋のメンバーの一人が、恐る恐るルーナに尋ねた。

「うん、それはないと思う。私、校長先生に呼ばれて、事情をちゃんと話したから。」

「…そう、それなら、良かったわ…」








 朝、身体が少し重かった。例の謎の魔女と戦い必用以上の魔力を使ったから、体力を消耗したのだろう。


 セイラは、横になり昨夜校長と話した時の事をぼんやり思い出した。




『先生、魔王石は、どうするんですか?』


『これらの石は、引き続き調査し魔法省に引き渡す事にする。』


『だれが、何の為に作って、誰が何の目的で持ち出したのでしょうか?』


『そうだな…お前達が知るにはまだ早いだろうと、思って言わまいとばかり思ってたのだが…』


校長は、渋い顔をすると思い口を開いた。



『今から、1500年程前の話だ。とある魔法使いが娘息子のために、魔王石を制作することになった。魔法使いは、強力な魔力を有した魔法の使い手だった。そんなある日のことだった。その魔法使いは無実の罪により、死罪となった。死刑執行の後ー、彼の作った石に触れた者は、謎の体調不良や事故にあい、次々と亡くなってしまったんだ。この石を湖に投げ捨てると、投げ捨てた者は湖に引っ張られ溺死し、いつの間にか石そのものが戻ってしまっていたんだ。魔法で破壊しようとした魔法使いは、己の身が粉々にもなった。魔法使い達は、考え抜いた結論が、細かく細かく切って、封印しようと言うことだった。しかし、この石の呪いは強烈で、切った者はたちまち亡くなった。こうして、各地にその石が散らばったんだ。ドラゴンやユニコーンといった魔法生物が咥えて持ち出し、呪いの力が広まった。魔法使い達はら、呪文を唱え呪いの石に更に石で覆いかぶせた。しかし、魔法生物や他の魔法使いの魔力の影響もあり、単なる呪いの石ではなくなった。人の願いを叶えてくれると、囁かれるようになったんだ。しかし、その石の力で人は退廃していき、しまいには石になる者までいた。そして切り分けられ、小さくなって持ち運びしやすくなった。そして、魔法界各地で石の力が放たれた。これが魔王石の由来なのだよ。』


『この、魔法使いは、このあたりに暮らしていたのでしょうか?』


『勘が良いな。当たりだよ。ちょうど、学校の辺りに魔王石があったのだろう。』


『聞いた話なんですけど、例のアルカナの魔女も、この石の力で蘇ったとか…?あ、噂ですけど…』


『その通りだよ。誰がなんの目的で蘇らせたのかは知らぬが、魔法界では大罪だぞ…』

校長は、そう言いかけると首を横に振った。

『すまん、すまん。話し過ぎた。この学校は、ワシが守るから心配無用だ。何かあったら、すぐ相談するように。』 


校長先生は、いつにもなく険しい顔つきだった。セイラは、彼の顔の皺は、深く深く目立っているような感じがした。

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