第16話. 酔っ払いと後始末3
自室への帰り道。アリストはコウタローの肩を借り、ゆっくりと帰っていた。
「コウタロー。今日は楽しかったか?フォードさえいなければ、私と楽しい時間をすごへたのに残念だったな。コウタローが来て私の仲間になってくれて私は嬉しいぞ。他の幹部どもはどうも私を邪険にしてきて悲しんだぁ。…
勇者であるコウタローは少し気まずかった。
…コウタロー?本当にありがと…」
歩きながらアリストは寝てしまったので仕方なくコウタローは背に担ぐようになった。
魔王城の中は夜のせいか静かで、なかなか他の魔族には合わなかった。
アリストの自室の前にてアリストは目が覚めた。
「うっ。気持ち悪い。」
「え?トイレですか?すぐ部屋の鍵を開けますので少々お待ちください。」
「無理だ…」
大量の酒がアリストの胃から逆流し始めた。
朦朧とする意識の中でアリストは思った。
ここでもし吐いたならコウタローは一生自分と口を聞いてくれない。もしコウタローに吐瀉物がかかることがあれば一生恨まれる。尊敬する上司の自分の尊厳がなくなってしまう。部下から見捨てられると私は立ち直れなくなる。元勇者、憤怒のアリストが失態など見せてはいけないと。
「うむ。下ろしてくれ。飲み込んだから大丈夫だ。」
(えっ。汚ない)
「ちょっとやめてくださいよ。アリスト様。早くトイレで出してください。」
正直飲み込んだとかコウタローは聞きたくなかった。
トイレに篭りながらアリストはあることを閃いた。それも天才的な発見だった。
翌日、ドラゴンの里にて
「ドラゴンはもう飲めないのか?酒は山ほど持ってきたんだ。もっと飲んでくれ」
ドラゴン達に大量の酒を振る舞うアリストとコウタローの姿がそこにはあった。
「じゃんじゃん出てくるな。」
そしてそこには、巨人どもの吐瀉物と共に川に吐き出される魔王軍兵士達がたくさんいたのだ。
そう。アリストは自らの経験から、酒を飲めば吐く、と言うことを学び、さらにフォードから手に入れたい酒池瓢にて大量の酒を生成、宴会ののちの救出を見事にやり退けた。
「どーだ。コウタロー。私の作戦は?完璧だろう。」
酸っぱい匂いを我慢しながらアリストはコウタローに問う。
「いや。全く感服です。オロロロ」
コウタローの貰いゲロを見届けてアリストはできる上司に咲いたのだ。
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