元勇者の魔王幹部と付人勇者
京天寺 きちえ
第1話. 異世界転生と転生会議
コウタローはとある企業の営業マンとして勤めていた。
中学ではサッカー部、高校では陸上部に入っていたこともあり、スタミナだけには自信があった。
過渡期のため、朝は4時から出社、タイムカードを9時と18時に押し、退社は大体,深夜1時だった。
「ふー。今日もなんとかなったな。」
そう思いながら帰路に着くと突然胸に電気が走った。かと思えば呼吸がうまくできない。吸っているのか、吐いているのか、はたまた、呼吸をしていないのか。耳鳴りが10秒ほど起きると、突然の無音、視野が狭くなり、真っ暗になると…
「死んでしまうとは情けない。」
「これが勇者でよろしいのでしょうか。」
「この世界を救うにはこの方に頼むしかありません。」
「ここは…」
真っ暗な空間だがコタロウーが横たわる地面だけが光っている。そして周りには多くの人々、いや神々がコウタローを見守っていた。
「あなたは今死んでしまいま…」
「おぉー異世界転移の定番ですね。感動です。」
コウタローは神々の声を遮り話し出す。
「我々は神。お前を勇者に任命する。」
「いや。私は反対ですぞ。この様な何も持っていない人間などを勇者になど」
「え?」
「そこは特殊な能力を与え補填すると先ほど話したではないですか。」
「それは強靭な人間にするということで合意し…」
「天使!なぜ結論が出ていないのにこの様な者を呼び出した。」
「お時間はもう過ぎておりますので…。」
神や天使が数人で話している姿を見て、コウタローは勤めている会社の会議室を思い出していた。
「どこも会議が時間通りに終わらないのは同じなんですね…。」
「神様。そろそろ時間ですので転生の手続きをお願いします。勇者様はそちらのリストから必要な能力を選びください。言葉は共通語が話せるようにしておきますし、一般常識程度なら身につけて転移させますので」…
そう言ってコウタローは紙を数十枚を渡された。
「まだ、決まってないでしょうが‼︎」怒る神の1人。
「そんな怒鳴られても天使たちも困りますよ。」なだめる別の神
「あっ……隠蔽の能力生きてる時に欲しいかったな。」呟くコウタロー。
「お時間ですので、手続きにさせていただきます。」仕切り出す天使。
リストは未記入のまま突然回収され、「あっ。」と一言だけ言ったコウタロー。
「転移先はどこの国にしますか?神様」天使が尋ねる。
「いや。だからまだ合意してないでしょう!」再度怒る神。
「次の転移者がおりますので…」
「なら転移なんてさせなくてもいいんだよ。困るのは下界なんだから。」さらに激怒する神。
「下界が困るのをほっとくのはダメですな。」指摘する神。
「ちょっと別会議がありますので失礼します。」退席する神。
「勇者さんにどこの国がいいか聞いてみたらどうかな?転移先ぐらい決めさせてあげてもいいだろ。」問う神。
「僕は車酔いが激しいのでできれば徒歩圏内で魔王討伐したいです。」勇者仮。
「展開の都合がありますので…神々に決めていただきたいのですが…」
「そう言っていつもの街に何人の勇者を転移させたのかね。制度もいいけどね。そこの見直しからやらないといかんよ。ほんとに。」小言を言う神
「神様お時間ですので、転生をよろしくお願いします。」
銅鑼が鳴り、一瞬静まり返る。
「それでは勇者、世界を平和にするために転生するのだ。」
議長の様な神が突然一言言い放ち、コウタローの体は光出す。
「うわー。何も決まらないのに時間だけ費やして最後現場が混乱するやつだ。」
コウタローはボヤきながら転生をした。
再考した結果、勇者は別の者に決まりましたとかありそうだな。とある天使は思いながらコウタローを見送った。
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