第9話. 魔王軍幹部と雷帝勇者3
緑豊かな草原は荒野とかし、大きな戦闘が行われているのは見なくてもわかった。大地はコゲ、草原は燃え、魔物や魔獣は近づくことさえ憚られていた。
コウタローは息を呑んだ。
魔王幹部の強さとは自分のような非力な勇者では相手にならない。そう判断せざるを得なかった。
泣き喚くアリスト、気を失う勇者セダール、そこに居たのは圧倒的頑丈な彼女の姿だった。
どうやら勇者セダールは魔力切れにより気を失っているようだった。
「流石です。アリスト様!勇者に力の差を見せつけてやりましたね。」
とりあえず、コウタロー付き人として、アリストを褒め称える。
「ぐずっ。えっ?」
鼻を啜り、自分の部下が近くにいることにようやく気がついた。
「流石です。アリスト様、勇者を倒すなんて!」
「ぐずん。え…ちがうんだ。私じゃない。私は何もしていないんだっ。私は元勇者として暴力で人を倒すようなことは一切していないんだっ。」
話し合いで解決すると言って飛び出してきた手前、アリストは暴力を奮っていないことをコウタローに説明をした。
普通の魔族なら勇者を倒したことを誇るかもしれないが、元勇者を自負しているアリストはそんなことをしない。
「いやー勇者を魔力切れにして、傷つけずに倒す。流石、人も魔族も愛されている魔王軍幹部アリスト様。」
サラリーマン時代に鍛えた太鼓持ちスキルによりコウタローは更にアリストを褒め称える。
「…まぁ。うむ…。それほどでもないけどな。ぐずん。」
こんなに部下に褒められ、尊敬の眼差しで見られるのは元の世界で勇者をやっていた時ぶりだ。
アリストは心底嬉しかった。
「後始末は私の方でやりますので!」
「じゃあ…コウタローに任せようかな。ぐずん。すまぬが私は先に帰らさせてもらう。少し雷のダメージが効いた様だ。」
アリストはそう言ったが、コウタローは無傷のアリストを見て少し引いていた。
「あっ。そうですね。ツノとか防具とか少しゴゲえてますもんね。任せてください。」
「あっ。勇者は殺すんじゃないぞ。勇者は民の希望だからな。…ぐずん…あと、幹部のみんなには私が勇者に無視されて続けて、少し泣いたこと言わないでくれ…。ぐずん……。」
鼻水を啜り、いつもより気持ち小さく見える竜の翼を広げて魔王城に帰還した。
コウタローはとりあえず、勇者から指輪を2つ、そして魔剣をもらい、その場を後にした。
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