第17話. 大戦と火砲1
結局のところ、アリストとコウタローの1番の仕事は交渉などという頭を使うことではない。
戦火交える戦場にて場を治めることである。
魔王軍に攻めてくるのは何も勇者パーティだけではない。魔族を含む他国の兵士や、王国の騎士団などもいる。
圧倒的な戦闘力のあるトトリス魔王軍であるが、兵士の人数はあまり多い方ではない。
そのため魔王幹部はよく大戦が起こればそこに参加要請を受ける。
今回はアリスト、そして鬼頭の真面目コンビが召集された。
「なんだ。アリスト君が来るなら私が来る必要などないだろう。」
「何を言っている。相手の兵士は5万に出してこっちは4千しかいないのだぞ。お前の能力で少しくらい兵士を強化しないとやっとれん。」
鬼頭の手前そう言ったが、正直なところどちらの兵士も傷つけたくないと願うアリストである。
すでに王国側は兵士を隊列させ、今か今かと開始の合図を待っていた。
それに対し、魔王軍は召集したのみ、隊列は同族ごとにバラバラで烏合の衆であった。
アリストも元勇者であるのでこう言った大戦には不慣れ、指揮官をするのもあまり得意ではなかった。
鬼頭は自身の能力、生物改造を使い、数百名の魔族を強化したが余りの敵の数に落胆していた。
「10人は倒せと命じておいたよ。まぁ我々の勝利だろう。」
勇者や近衛騎士団のような強者が出てこない限り、十数倍の数の差など魔王軍に取ってはどおって事ないのだ。
大きな鐘の音と共に、戦火が斬られる。
初日はやはり魔王軍がかなり優勢かと思われたが、数百名の高レベル冒険者が参加しており、中々優勢とまではいかなかった。
「いや。困ったものだね。魔法というものは。理屈がわからないから無力かもできない。私は前の世界ではただの科学者戦闘なんてものは皆無でね。只々不思議に思えてしまう。大量の火薬でもあれば施し用もあるが数万の兵士を倒すほどのものはないか。」
鬼頭は頭を悩ませながら自身の付人に愚痴をこぼす。
「そろそろ、私が出よう。鬼頭の強化魔獣達はあくまで物理特化だ。私は魔法も使える。遠距離から攻撃してみるよ。今回こちらは魔法の使えるものは少人数だしな。1時間後に一発でかいのを打つ。コウタロー戦場に伝えてきてくれ。」
「はい。承知しました。」
コウタローは伝令班達を介し、戦場にアリストの参戦を伝えた。しかし、正直コウタローもこの大戦は気乗りしていない。多くの魔族血が流れる以上に、アリストに多くの人を殺させる可能性があるからだ。
アリストの付人としてはあまり主人の嫌がることをさせたくない。
伝令を伝え終わる頃には、アリスト最前線に向かう準備を整えていた。
「コウタロー。戻ったか。私はそろそろ最前線へ向かう。私の魔法を数発撃てば王国の兵士達は散るだろう。数百名命を落とすだけだ。」
そう言ったアリストの表情は苦痛に満ちて、寂しそうな顔をしていた。
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