第18話. 大戦と火砲2

「アリスト様。無理はなさらないでください。時には責任から背を向けることも必要ですよ。」

 コウタローはできないと分かっていてもそう言ってしまった。


「コウタロー。私は元勇者だ。今まで、罪人や魔族を元の世界で殺してきた。しかし、罪のない兵士を殺すのはこの世界に来てからだ。毎度嫌になるよ。神より与えられた力を今では異世界の戦争で使うことになるとは…。大丈夫だ。普段通り本気は出さない。軽く広範囲魔法で驚かすだけにするよ。」


「………」

 コウタローはただ聞くことしかできなかった。


「私は幹部とはいえど、身なりはただのドラゴンニュート。人に尻尾と羽が生えた程度だ。ドラゴンに怖気付かない兵士が私を見ても怖気付くはずがない。皆が恐怖で沈めるためにはやはり見せしめが必要なんだ。なーに。私が怪我をするような者は戦場に出ていない。軽く捻って帰ってくるからシャワーの準備だけ頼む。今日は一段と血を浴びると思うからな。」


コウタローはアリストが戦場から帰ってくるとシャワーを浴びながら泣いているのを知っていた。

 いくらシャワーで流そうとも充血した目だけは隠せない。

 実力も、本心も、涙も全て隠していたがコウタローには全てわかっていた。


「アリスト様。隠すことはありません。僕は分かってますよ。」

「何も隠してなどいないさ…私は行く。」

 そう言ってアリストは本拠地を飛び立とうとした。

その時コウタローは妙案が浮かんだ。

 

 「アリスト様、僕も連れていってください。」

 コウタローの真剣な目に何かあると感じたアリストはコウタローを背中に乗せて連れて行くことにした。



 戦地へ向かうなら味方の兵士が騒いでいるのが聞こえた。

 今日はやけにいつも以上に騒いでいた。向こうに勇者でもでたのか?アリストはそう思っていた。


 いつも以上に王国の兵士を倒すことに躊躇いを感じていた。それは背中に付人を乗せているせいもあるのだろう。コウタローの手前、手を抜けば真意を問われるだろう。しかし、コウタローといると自身の罪悪感が少しは無くなるような気がした。


「コウタロー。お前は不思議なやつだな。なぜかお前といると力が出る。」

とアリストはつぶやいた。

 

コウタローは聞こえていなかったのか遠くの雲の方を見て、特に何も言わなかった。



アリストが戦場上空に着くと、突然風が吹き、戦場に嵐が来た。雷が鳴り、雲が割れその割れ目からアリストは戦場上空に現れたため、アリストが天候を操っているように戦地からは見えた。


「なんだ!あれは!雲が割れたぞ。」

「何者だアイツは!」

「背中に翼!魔族だ!」

「天候を操る魔族など聞いたことがない!」

「神ではないのか!?」

「逃げろ!やつはやばい!」


敵兵は大混乱だった。

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