第19話. 大戦と火砲3

「鎮まれ!人間ども!!我は憤怒のアリスト。魔王軍幹部にして雷撃と火炎を操りし、最強のドラゴンニュートだ!!」

 アリストは言ってない。言い放ったのは背中に隠れているコウタローだ。


「魔王軍幹部!」

「クソ!上空に敵が現れたぞ!」

「魔法攻撃を急げ!」

「放てー」


 王国軍は巨大な魔法陣から火炎魔法をアリストに向けて打つ。

 しかし、アリストから見ると少し離れたところにむけて打っており何が起こったかわからなかった。


「無傷だと!」

「なんだあれは!」


「アリスト様今です!適当に最大火力魔法を撃ってください。」

「いや。しかし。そんなことすれば人が…」

「外していいので撃ってください。あの雲を目掛けて。」


「ぼ、ボルケーノ!」

 アリストは雲に火炎魔法をぶつけた。

周辺の雲は一瞬で蒸発。上空数千メートルの火柱の熱さが地上に伝わる。


「アリスト様。もっと詠唱とかしっかりやって欲しいんですが…。」

コウタローは不満そうに文句をつけた。



 上空から現れた幹部。そしてその火力のある魔法に敵兵はさらに大混乱していた。


「撤退だ!」

「逃げろ!」

「奴は危ない!奴とは戦うな!」

「バケモノだ!!」

「人類の敵だ!!」

「殺される!!」


 恐怖にひきつっり、怯えて逃げ回る兵士たち。

 撤退を余儀なく数分で当たりに王国兵はいなくなった。何人か王国兵は腰を抜かし、気絶したものさえあらわれた。


「コウタロー。お前何かやったのか?」

「ちょっと演出をしただけです。流石です。アリスト様。」


 両軍とも血をほとんど流さずにこの度の戦地は終結。王国軍は撤退し、魔王軍の領地は守られた。



 本拠地にアリストとコウタローは戻った。

「さすが。アリスト君だね。火炎魔法一発であの人数の兵士を黙らせるとは。」

 鬼頭はアリストの戦いに感服していた。


 普段なら3、4発撃ってようやく撃退のところを今日は1発しか撃っていないためアリスト心なしか誇らしかった。何より敵兵に直接攻撃をしていない。


「ふっ。鬼頭。私が本気を出せばあの人数全て焼き払うことさえできる。今日は疲れた。私は帰るぞ。」

「恐れ入った。あの数を全て焼き尽くせるとは。片付けは私がやらせてもらうよ。魔王国に帰って休んでいてくれ。」


 アリストは上機嫌だった。コウタローの隠蔽の力が上がり、幻惑魔法が使えるようになっていたため、アリストは魔王幹部最強の戦火の女神として扱われた。

 全てはコウタローの言う演出というもののおかげだった。


「コウタロー。今日は全く人を殺さなかったなー。いやー。実に気分がいい。」

「アリスト様人を殺すのは嫌いですもんね。それはよかったです。」

「これも全てコウタローの演出のおかげだ。これで両軍共に被害がでないといいんだかなー。」


 アリストの願った通り、今回の戦場により憤怒のアリストの強さが証明された。あいつは危険だと王国でも言われ始め、その他の国々にもアリストと戦うと命がなくなる。魔王を越すほど危険視されていた。


「今日はなんていい日なんだ!皆が喧嘩をしなくなる。これに尽きたことはない。」

 そんなことを考えてアリストは1日を終えた。

しかし、アリストはこの後、この日のことを後悔することになった。


 

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