第12話. 契約とルール3

その数日後、アリストはコウタローにお遣いを頼んでいた。

「ではコウタロー。これの資料を幹部達へ渡しておいてくれ。」

資料には”魔王軍ルールの明確化”と記載されていた。

そこには敵を倒した時の分前や、魔王軍の管轄内容、強いては掃除当番までツラツラと十数項目ほど。


「まだまだ足りないと思うが、今度の議題で皆から出してもらおうと思う。赤字記載は私が今回出したい内容だ。皆の承認を取りたいと思ってな。」


 “これは所謂ワークフロー承認って奴では”とコウタローは思った。

 コウタローが転生前にサラリーマンとして働いていた時には何度も上司達に承認を貰っていたがまさに、アリストがやっているのはそれだった。


 手書きは読み辛くてダメとか、フォーマットが違うとか、最後にちゃんと魔王様に承認してもらわないとダメとかいいかったが

「順番はどうしますか?」

「順番は誰でもいいぞ。魔王軍幹部皆に渡してくれ。以前セツナが言っていたんだ。難しい議題の時には皆で決めてちゃんと合意したって言う承認をもらうんだと。これも一つの契約だ。」


 前向きに奴隷制度を無くすために考えたんだなとコウタローは感じていた。


「前の世界では暴力に訴えたのだが、今回はちゃんと皆に相談して決めることにしたんだ。」


 承認されることが目標ではなく、議題に挙げることで既に達成感に満ち溢れ、ドヤ顔をするアリスト。


 アリストは赤字できちんと”奴隷保持を禁止する”と書いてあることをコウタローに見せつけた。


「これは一度円卓会議で承認をもらった後に回した方がいいですね。」

「そうなのか?会議でやると時間がかかりそうだったので皆にサインだけ貰えばいいと思ったのだが。」


 まずダは絶対にサインしないだろ。とは言わない。


「うむ。コウタローが言うなら仕方がないな。明日招集をかけてくれ。最近は勇者も出てこなくて皆暇をしていると思うしな。サインはいいから資料だけ配っておいてくれ。」


 コウタローは手書きで清書をし、コピーをして幹部達に事前資料を配るとこにした。


 案の定ダは激怒。セツナは受け取って数秒見てサイン。鬼頭は目を通すと小言をいい。シャルロッテは却下。他の2名は不在のため資料を渡すことすらできなかった。

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