第12話 格闘ゲームの特訓 その1
『小学生の時にやってたスマバーってゲームあったじゃん。あれの最新版が出たから配信でやろうと思うんだけど、その前に練習したいから対戦相手やってくれない?』
5月末の定期テストを終えてひと段落ついたとき、『定期テストお疲れ様』というメッセージと共に姉から送られたメッセージだった。
スマバーとはスマッシュバーサスという対戦型のゲームだ。カジュアル層では格闘ゲームのくくりで認識している人も多いが、実際は攻撃を与え吹っ飛び率を上げて相手を画面外へはじき出したほうが勝利するというアクションゲームである。
新作が出たことは知っていたが、小学生の頃に十分やって満足したため、中学生の頃に出たソフトもやっていなかった。まあ、ハードの方も持っていなかったので仕方がなかった点もあったのだが。
『いいよ。久々にやってみる』
『ありがとう。じゃあ、週末でいいかな?土曜日は配信だから金曜日で』
了解、というキャラクターのスタンプで会話が終わった。数えるともう四年も触っていなかったのか、中学の頃にスマホを買ってもらったのとソシャゲが流行ったのもあってか、据え置きのゲームを触る機会がめっきり減ってしまっていたので、金曜日が素直に楽しみだった。
いくつかのサイトで調べてみたところ、昔一番扱っていた丸いピンクのキャラクターは多少の変化はありつつほとんど同じような操作で遊べそうだったので安心した。ただ、キャラクター数が大幅に増えていたし、さらにアップデートで増えるらしいというので、かなり衝撃的だった。最近のゲームは凄いんだななんて高校生ながらおじさんみたいな感想を持ってしまった。
♢
金曜日、いつものように連絡してから部屋に入るとすでに姉がゲームを始めていた。季節が6月になり、夏服に変わったものの蒸し暑く、気持ちが悪かったので先にシャワーを借りて汗を流すことにした。
シャワーを浴びてリビングに戻ると、シャワーで冷えた身体には少し寒いくらいに部屋の中は冷房が効いていた。姉はアイスを食べながらゲームをしているようだが、ゲームに夢中になるあまり、カップのアイスの中身は半分ほど残っているにもかかわらずほとんど液体のようになっていた。
「おつかれー。アイス食べる?」
「いや、後でいいわ。ゲームしよ。久々で結構楽しみにしてた」
「おっけー。プロコンでいいよね。二つ目買ったんだ~」
「ありがとう。俺もこっちのほうが好き」
約束をしてからのここ数日、いくつかの動画を見て脳内でシミュレーションをしているだけでも昔を思い出して結構楽しかった。小学生の頃に自分で見つけたコンボよりもよりずっと強い動きが動画サイトに投稿されていて、今の小学生はこれらの動画を見て研究しているとしたら自分の頃よりもずっと強いのだろうななど衝撃を受けることも多かった。
「早速対戦でいいかな?結構遊んでキャラクターも解放したんだよ」
「いいよ。アイテムなしのタイマン?」
「んー。配信的にはアイテムある方が面白いかなって思ってるけど練習だし、一旦なしで。ルールは3ストックでいいかな?2でもいいんだけど」
「3でいいよ。了解」
そう言って一対一の対戦画面に入る。多くのキャラクターが並ぶ画面で俺は迷わず昔一番使っていたキャラクターを選択した。プププという名前のピンクの丸いやつだ。
手加減して他のキャラクターを使うことも考えたが、対戦の練習ということでとりあえず本気で行くことに決めた。
「なつかしー。昔使ってたね。それ」
「覚えてるんだ」
「まあ、まだそんなに経ってないし。私はこの子にしよっかな」
そう言って彼女が選んだのはハンマーを持った双子のキャラクターだった。昔からいるやつなのでよく知っている。新キャラを選ばれたら何をされるか分からなかったので助かったというのが本音だった。
「じゃあ、始めるよ。ステージは終点で」
「おっけー。平坦なところね」
そんなこんなで姉との試合が始まった。キャラクターの操作は案外体で覚えてるもんで想像以上にスムーズに戦うことができた。
結論から言ってしまえば結果は3タテ、つまり一度も倒されることなく俺が勝利を飾った。
正直、ここ一週間で始めた初心者が、辞めたのが数年前とはいえ思い出してみれば、小学生の頃に地元最強だった人間に勝てるはずはなかったのだ。
「いやー。想像以上に一瞬だったね。正直コメントに困るレベル」
「まあ、思い出せば俺同級生に負けたこと無かったかもしれん。ゲーマーの友人の兄とタイマン張ってギリギリで負けたのは今でも覚えてるけど」
「確かに大勢の友達との負け抜けルールでずっとコントローラー握ってたもんね」
「なんで知ってんの」
「いや、私も今思い出した」
練習のために誘われたのに、これでは試合にならない。ハンデでもつけて遊ぼうかと思ったところ、姉のスマホが鳴ってメッセージが表示される。
『バースマやってるよね?一緒にやらない?』
それはメイさんからのメッセージだった。
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元ネタは当然スマ◯ラです
キャラクターもわかるように書いたつもりなので適宜保管して読んでいただけるとイメージしやすいかもしれません
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