第14話 格闘ゲームの特訓 その3

 メイさんは部屋にやってきた後、姉と軽い談笑を交わす。それを終えるや否や、彼女は早速彼女が俺に話しかけてきた。

「強かったけど戦い方が今どきじゃない。初心者ではないけど昔のシリーズを結構やりこんでて、このゲームに触ったのが今日で二回目。これが私の推理。どう?あってる?」

 彼女は凛々しい顔を僕に向け、どや顔でそう宣言した。相変わらず、紫色のメッシュが良く似合っている。


「ほぼ正解です。ただ、触ったのは今日が初めてでした。メイさんとの試合の前に僕も姉さんをぼこぼこにしたので今日二回目って意味では二回目でした」

「え!?じゃあほとんど昔の感覚でやって私と互角だったんだ。だいぶすごいと思うよ。あのキャラクターはサブのサブ、3番目によく使ってるキャラクターなんだけど。私大体ネット対戦で上位5%くらいなの」

「つまり俺もそれくらいってことですか?」

「そうなるね。しかもこれから伸び代しかない。いつかガチキャラ同士でタイマンできたらいいね」

「そうですね。俺も楽しみです」


 そんな話をしていると、この場においては圧倒的に下手くそな姉がうらめしそうにこっちを睨んでいた。


「ごめんごめん。てっきり謙遜で言ってたのかと思ったら、本当の初心者でびっくりしちゃった。ハンデ戦もあるし、アイテムとかのランダム要素つければ運の要素も増えるし、みんなで遊べるよ」

「もう知らない。二人で遊べば~?優君も私なんかより他の女の子の方がいいみたいだし」

「ちょっと、姉さん。めんどくさい彼女みたいな拗ねかたはやめてよ」

「おや?妙だな。めんどくさい彼女の拗ねかたを知っているということは過去にそのような女と付き合ったことが……」

「ないです。普通にドラマとか漫画のテンプレじゃないですか。話をややこしくしないでください」


「じゃあ、お姉さんからの公認ももらったので堂々と大乱闘しましょうか」

「メイさん、テレビはリビングにありますよ。なんで寝室の方に俺の腕をひっぱるんですか」

「ああ、ゲームの方ね。勘違いしてたわ。ごめんごめん」

「お願いなんで冗談でもやめてください」

「勘違いしちゃうから?」

「ファンに殺されそうだから」

「バレなきゃOKだよ」

「それ言ってばれた人が大勢いるんですよ」

「XXXXXXXとか?」

「…………」


 怒涛のボケに突っ込みを放棄したら、冗談はこれくらいにして、と言ってゲームを始めることになった。彼女もコントローラーを持参していたようで、それの設定をしてからゲームを起動する。


 3人と弱めのCPUを加えて4人で戦うことになった。アイテムも面白そうなものを選んで、ステージも様々なものを試す方向になった。メイさんと俺は最初300%というほとんどの攻撃が即死になるようなハンデを背負って戦っていたが、あまりにも勝てないということで最終的に100%のハンデに落ち着いた。


 数戦やって気づいたことと言えば、このゲームのバランスの良さだった。なんだかんだで、皆でゲームをして全員が楽しめるというのは、小学生の時にはなかったかもしれない。苦手なゲームは楽しくなかったし、得意なゲームでも負けると楽しくなかったが、今は勝っても負けても楽しかった。


 アイテムを色々切り替えて遊んでいたのだが、このアイテムは盛り上がりそうだったり、画面映えがするだったり、なんて話を二人が交わしているのを見ると、やっぱり二人とも根っからの配信者なんだと思った。


 そんなこんなで三人でそこそこな時間遊んでいたら、あたりはすっかり暗くなっていた。体感的にはほとんど一瞬だったので本当に驚いた。


「どうする?どこか食べに行く?」

 と姉が言ったが

「「飯食ってる場合じゃねえ」」

 と二人のゲーマーの意見が一致したため、外に食べに行くことはなしになった。ただ、食事を抜くのはいけないと言われ、姉が3人分の料理を作ると宣言した。俺は一人暮らしとはいえ、姉が料理をしているところを見たことがなかったし、どちらかと言えばずっと出前を取っているイメージだったので心配で仕方がなかった。


 メイさんはそんなことは知らないので、やったーと喜んでご飯できるまで二人でゲームしようぜなんてこの場の最年長らしからぬことを言っていた。まあ、きっとできるのだろう、と姉を信じることにして二人でまたテレビ画面に向かうことにした。


 

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