第21話 運をねじ伏せる

CRアイテム【無限料理箱】

・魔力と引き換えに無限に料理が出て来る

・料理は指定はできずランダム

・とてもマズい(呪)


「呪いが致命的過ぎる」


 食料がいくらでも手に入るのはいざという時に助かるが、マズい飯しか出てこないのでは拷問だ。


「この呪いが解けるまで使い道はなさそうね」

「ああ、そうだな……いや、待てよ?」


 マズい飯に文句を言うのは人間だからだ。例えばゴブリンたちなら意外といける可能性もあるのではないか?


「ギャアッ!!  ――ぺっ」


 ダメだったわ。一口食べて吐き出したよ。後でちゃんと掃除しとけよ。


「ゴブリンでダメだとすると……アリたちはどうだ?」

「アリってなんでも食べるイメージがあるけど味覚ってあるのかしら?」

「工兵アリたちに食べさせてみよう」


 地面を掘って蟲の女王の巣穴を作っていた工兵アリにマズい料理(ゴブリンの食べ残し)を与えると普通に食べ始めた。


「これならいけるな。アリたちの分の食料を用意する必要がなくなった」

「うう、大きなアリはやっぱり気持ち悪い……このアリはカードにならないんだっけ?」

「そうだな。蟲の女王の産んだ虫は全部“トークン”として処理されてカード化はできないぞ」


 ユニットカードならカード化している間に回復するし食事も睡眠もすませることができるが、トークンはそれができないから寝る場所や餌を用意してやる必要がある。カードと違って携帯もできないし使いにくいな。


 基本的にガチャで当てたものがカードになる。生産品も同様で、ガチャで当てた“素材カード”から作ったアイテムは“アイテムカード”にすることができるが、それ以外の素材で作ったものはカードにできない。

 例えば俺たちが外から持ち込んだ食材を料理してもカードにならないが、素材カードの食材から料理を作った場合はカードとして保存が可能になる。この辺のルールはいろはから聞いたが、生産系のユニットなら誰でも知っていることらしい。


 そして今回の工兵アリのようにユニットがスキルで生み出したトークンや、無限料理箱から取り出した料理などはカード化できない。

 基本的にスキルやアイテム効果で作りだしたものはカードにできないと考えていい。例外は【従僕の杖】や【奴隷の首輪】の効果で手に入るモンスターカードくらいだろう。


「俺の手持ちでトークンを呼び出せるのはこの二つかな」


SSRスキル【徴兵令】

・24時間SRとRの兵士トークンを召喚する

・再使用まで一週間


SSRユニット【蟲の女王】

・ランクの上昇にあわせて様々な蟲ユニットトークンを生み出す女王

・ランク1:工兵アリ ランク2:兵隊アリ ランク3:重装アリ


 【蟲の女王】の虫トークンは永続だが【徴兵令】の兵士トークンは24時間の制限付き。再使用までの時間も長いので基本的にお蔵入りだ。そのうちどこかのタイミングで試したいとは思っている。


「達哉が持っているスキルに確か【守護者召喚】ってスキルがあったでしょう? あれは?」

「これは特殊ユニットだな。トークンともカードとも書かれていない」


スキル【守護者召喚】

・特殊ユニット【守護者】を召喚する

・守護者は召喚されたベース・拠点から一定以上離れることはできない


 読んで字の通り【守護者】を召喚するカードなのだが、少し考えている。

 【守護者】は『召喚されたベース・拠点から一定以上離れることはできない』と書いてあるように召喚された場所を守護する存在のようだ。

 例えばこの場所で使えば【聖なる地】の守護者になってしまい、他の場所に移動できなくなるというわけだ。【徴兵令】と違って再使用時間も書かれていないし、最初に使用する場所は慎重に決めようと考えている。


「特殊ユニット……【師範】のメイファもそうだったわね」

「メイファはカード化しなくても睡眠も食事も不要らしいから【守護者】も同じかもしれないな」


 ちなみにカードの絵柄だが【徴兵令】に描かれているのは鉄の鎧兜を着けたファンタジー風の武装集団。【守護者】に描かれているのは人型ロボット――アンドロイドタイプではなく重装甲のメカメカしいタイプだった。ロボットなら無休で働き続けても問題ないから安心だな。


 ◇


「おっと、レベッカから連絡か。よし、無事にカードを回収したみたいだな」


 便利に使い倒しているレベッカからSSRカードが届いた。

 一緒にパーティを組んでいたメンバーから入場許可を貰っていたので、アリーチェたちの分も合わせて五人分のSSRを宝箱から回収するように命令しておいたのだ。

 そう。多少ガチャの結果が悪くとも関係ない。運不運は他のところでフォローすればいいのだ。


「手に入れたカードは……ふむ」


SSRベース【電脳の城】

・電脳空間に存在する仮想空間

・電子機器を介してこの空間にアクセス可能

・許可を与えられた者のみこの空間に転移可能


SSR消費アイテム【必殺技習得チケット】

・【必殺技】を習得する。固有技で性能は使用者に依存する

・一人一種類のみ。複数使用すると新しい必殺技に上書きされる


SSR消費スキル【差し押さえ】

・SSRカードを一枚指定し、効果を一週間無効にする


SSRユニット【悪意ある助言者】

・人々の耳に悪意を囁く悪魔

・悪意は毒。耳から入りやがて心を腐らせる猛毒である


SSRユニット【怠惰な奉仕者】

・人類に奉仕する怠惰な駄天使

・怠惰な天使は人類を救わない


 どのカードも一癖ありそうなカードばかりだ。

 これどう使うかだが……面白いじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る