第20話 家族の時間/ガチャの時間
「ママ、パパかえってきた!」
見知らぬ娘に案内されて氷山に向かうとママが待っていた。
「ちゃんとお迎え出来て偉いわ、チカ。さすが私の娘ね!」
「きゃー!」
謎の少女――チカを杏奈が抱きしめると、チカが楽しそうに笑い声をあげた。
うん。やはりチカだったようだ。知ってた。
「娘……まあいいか。それでチカはどうなったんだ?」
「もう達哉ったら。私たちの娘なのに反応が薄いんじゃない?」
「すまんな」
杏奈が家族ごっこをしたいというなら少し付き合うくらいはいいが、俺は両親に可愛がってもらった記憶がないので家族というのがよくわからない。
呪術台の横に佇んでいたベアトリーチェが意地の悪そうな顔で口を開く。
「強化は成功したわよ、よかったわね、パパ」
「お前までパパと呼ぶな」
「あら、いつでもママになる準備はできるのに。つれないわね」
カードのユニットは妊娠するのか……?
確かめたいような、聞くのが怖いような。まあ【性魔術】で常に避妊はしているから問題ないだろう。
チカと一緒に騒いでいる杏奈を放って、ベアトリーチェとココから強化の詳細を聞く。
SRユニット【雪娘チカ】 ランク“2”
・高宮杏奈専用ユニット
・特定条件を満たした場合にランクが上昇する
「残念ながらレア度はSR。SSRには届かなかったわね」
「妾の力不足なのじゃ。すまぬ、あるじ」
「そうか……。まあ、ランク上昇効果というのがあるから問題はないだろう。よくやってくれた、ベアトリーチェ。ココ」
どうやらレア度はSRのままらしい。手持ちにSSRが三十枚以上から勘違いしそうになるがやはりSSRは希少なんだな。
だがSRでもランクが上昇するなら実質SSRと変わらない。むしろ“SRは同行者の人数に数えられない”というメリットと考えられるだろう。
「それで、ランク上昇の条件は? すぐにできるのか?」
「うむ、それなんじゃが、あるじと杏奈が――」
「だ、ダメ! その条件は秘密よ!」
特定条件とやらを確認しようと思ったが、顔を真っ赤にした杏奈が割り込んできた。
「そ、その時になったら教えるから、今は秘密よ!」
「……そうか。わかった」
まあ、この反応とベアトリーチェのニヤニヤ笑いから大体察せるが。後で教えてくれるというなら今聞き出す必要はないだろう。
とりあえずチカの強化は大成功ということでいいだろう。
◇
チカの一件が終わったので次はガチャに関する実験を行うことにした。
「杏奈。ポイントを渡すからガチャを回してみてくれるか?」
「私がガチャを回すの? 構わないわよ」
「それじゃあポイントを……ん?」
実験をしようと思って1000ポイントほど杏奈に譲渡しようとしたところで、メニュー画面に【注意書き】が現れた。
“このままポイント譲渡すると譲渡対象者のランク3ガチャが解放されます。よろしいですか?”
「……これも対策されてるのか」
「どうしたの?」
「どうやらランク差を利用したガチャの利用に対策が施されているみたいだ。少し調べてみよう」
一旦キャンセルして幾つか条件を変えて検証してみた。
その結果、“ポイント・カードの大量譲渡”がアウトだと判明した。
渡せるポイントはガチャ十回分まで。カードもSSR一枚かSR三枚までで、それより多く渡そうとすると上位のランクガチャが解放されてしまう。
ただし、一方的な譲渡ではなく“カードとポイントの交換”ならば可能のようで、杏奈が持っていたSRと俺のポイントを交換するというトレードは成立した。
また、受け取り側でポイントやカードの受け取りを拒否することも可能で、その場合もランクガチャの解放はされない。低ランクの相手に大量のポイントを送って無理やり上位ランクのガチャを解放させるということはできないようだ。
「この仕組みだと低ランクの使徒に大量のポイントを与えてガチャを引かせるというのは難しいな……」
「工夫次第ではやり方もありそうだけど、そんなことするより普通にポイントを稼いでガチャを回した方が早そうよね」
思いつく限りのパターンを試した俺たちはそう結論付けた。譲渡できるポイントも少ないし、悪用しようにも制限がきつすぎた。
それよりも他の使徒を支援する時にこの上限を超えないように気をつけるべきだろう。
◇
「というわけで、三階に到達したのでガチャを回そうと思う」
今の手持ちカードはほとんどがランク1、ゴブリンなどの一部がランク2になっている。武器は【悪鬼羅刹の魔剣】があるので問題ないが、防具などはランク1をそのまま使っているので正直心もとない。
「クエストも受けてきたんでしょう? どのくらいポイントが手に入ったの?」
「今の手持ちは3000ポイント弱だな。2000ポイント使ってランク3ガチャを五十回回そう」
「……たった一日でそんなに稼いだのね」
杏奈が呆れた顔をしているが、俺が自分で稼いだのは1000ポイント程度だ。一階・二階のモンスターを倒した分がボス初回撃破ボーナス込みで600ポイント、クエスト報酬のポイントが緊急クエストの分を含めて400ポイント程度。
残りの2000ポイントのうち半分が契約を結んだ使徒から送られてきたポイントで、残りの半分は杏奈とベアトリーチェが一階のSSRを回収中に手に入れてきた分だ。
今もレベッカがダンジョンでモンスターを討伐してポイントを送ってきているが、やはり使える使徒が増えるとポイントの収入が一気に増えるな。アリーチェたちもそろそろ起こしてダンジョンに送り込むか。
「それじゃあランク3ガチャを回すぞ」
「この瞬間がドキドキするのよね。五十回で何枚SSRが当たるかしら」
排出率1%程度だと思うから出ない可能性も高いが……杏奈が楽しみにしているようなので黙っておこう。
「引くぞ」
まずは最初の十連。
素材 7枚
R 3枚
「……ハズレだな」
「……ハズレね」
素材カードの排出率はまだよくわからないが、この結果が悪いことだけはわかる。
「気を取り直して、次だ!」
十連二回目。
素材 3枚
R 6枚
CR 1枚
「……呪いのカードか」
SRもSSRもなしで真っ黒な呪いのカードが一枚。これは後でココに持って行こう。
「呪いのカードってSRよりも出にくいはずなんだけど、さすがマスターよね?」
「それ褒めてないだろ……もう一気に行くぞ」
三十回。
R 6枚
素材 4枚
四十回。
素材 4枚
R 6枚
「いい加減SRくらい出てこい!!!!」
最後の十連!! SRでいいから当たれ!!!
41回、銅――R。
42回、銅――R。
43回、白――素材。
44回、銅――R。
45回、銅――R。
46回、銅――R。
47回、白――素材。
48回、銅――R。
49回、白――素材。
50回、白――素材。
「このクソガチャめ!!!!!!!!!!」
2000ポイントも突っ込んだのに全部溶けたぞ!! クソ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます