第18話 次のステージ
【悪魔の魂】によるモンスター化。怪物とか猛獣とかそういう系かと思っていたが。
「これってサキュバスか?」
「んひぃ! はにゃ、はなせえ……!」
舞台の上にいる悪ガキ――メスガキ?の尻尾を握ってやったらそれだけで腰を抜かしたようだ。いくらなんでも弱すぎじゃないか?
「そうね。悪魔の一種、女淫魔、吸精鬼。さっき使った悪魔の魂がサキュバスのものだったということでしょうね」
「体の変化に心がまだ追いついていないみたいです。少し時間を置けば女性の体に徐々に慣れてくると思います」
「オ、オレは、男、ふにゃぁ……」
ベアトリーチェたちが冷静に観察しているな。尻尾をにぎにぎするだけで蕩けた顔で崩れ落ちるというのに、どこか男なんだか。
「しっぽ、しっぽらめ、はなせ、はなしてぇ……」
「離してください、お願いします、だ」
「んひっ……な、なんでオレが、おまえにゃんかにぃ……ひうっ!」
「あら、楽しそう。わたしも混ぜてさせてちょうだい」
「師として弟子の教育は私にも責任があります。お手伝いしますね」
横から二人も楽しそうに混ざり、あれこれ弄繰り回してみた。
「よし、今日からお前はサキュバスの“サキ”だ。わかったな」
「は、はぃぃ。わかりましたぁ、まおうさまぁ……」
三人がかりで教育した結果、あれだけ強情だったメスガキがようやく従順になった。なぜか俺が魔王と呼ばれているが……【魔王の冠】の影響か?
まあ命令を効くなら問題ない。メイファの道場でしっかりと訓練するように言いつけた。
「達也、達也ー!」
メスガキの件も片付いたところで、ひと休みしていたはずの杏奈がやってきた。
泣きそうな顔で金色の壺を抱いている……ああ。どうやら見つけてしまったらしい。
「チカが、チカの様子がおかしくて、呼びかけても反応しないの!」
「そうか……」
壺の中を確認するが、溜まっていた淫気は全てなくなっていた。どうやら全部チカに吸収されたようだ。
相変わらずなんとも幸せそうな顔で寝ているが、杏奈が呼び掛けても反応をしないということは泥酔状態に近いんだろうか。
「ベアトリーチェ。どうだ? そろそろ馴染んだか?」
「そうね。もう大丈夫だと思うけど……ちょうどいいから呪いもかけてみたらいいんじゃないかしら」
「呪い!?」
「ま、また妾か!?」
杏奈と、なぜかココまで震えているが、まあそれはいい。
「どんな呪いだ? 弱くなるのは論外だが、呪いをかけたからと言って強くなるわけでもないだろう?」
「それは呪いの使い方次第よ。今回の呪いは“譲渡不可”の呪い。アンナ以外の人間にチカを使えないようにして二人の結びつきを強化するわ」
「譲渡不可か……。まあ、杏奈からチカを取り上げるつもりもないから別に構わないが……」
自分に不利になる呪いをあえてつけることで強化する。そういう使い方もあるのか。使いこなせば便利そうだな。
「後は仕上がり次第だけど、アンナの淫気を使ってアンナ専用のカードにするのよ。まあ期待していてちょうだい」
「そこまで言うなら任せよう。――と言うわけで、チカを杏奈専用カードに生まれ変わらせるぞ」
淫気の壺からチカを取り出して呪術台に乗せ、壺は回収しておく。
「それじゃあアンナ、ここに来て。ココも手伝ってちょうだい」
「ベアトリーチェ、チカは大丈夫なのよね? 別人になったりしないわよね?」
「安心しなさい、大丈夫よ。……ほんの少し姿が変わるかもしれないけど」
「ねえ、今なんて聞き捨てならないことを言わなかった?! 本当に大丈夫なの?! ねえ!」
「うぐぐぐ……わ、妾の仕事が多過ぎだと思うのじゃ? 普通は呪い師をここまで酷使せんと思うぞ……?」
まあベアトリーチェに任せておけば後は大丈夫だろう。たぶん。
◇
ベースでやることを終えて一度外に出た。他の使徒から連絡はまだなし。
梟さんにポーションを入手したのでまた買取希望の連絡を入れ、恭二たちにもメールを送っておく。恭二たちはまだ寝ているから呼ぶとしても夕方くらいになりそうだ。
「一人で進めるところまで進んでみるかな」
諸々の準備を終えて時間ができたのでダンジョンへ。
SSR装備とスキル、ユニットカードにゴブリンたちを連れてダンジョンの二階に進む。
マップを全部埋めたが残念ながら隠し宝箱は見つからなかった。
「宝箱が隠されているのは一階だけなのか?」
SSRの性能を考えると一枚出るだけでもかなりのアドバンテージになるとは思うが……本当にそうだろうか?
「同じSSRと言っても格差があり過ぎる気がするんだよな」
例えば蟲の女王の生む虫ユニットは序盤から安定して出番があるが、壊れた機械パーツなんて技術者と設備が揃ってようやく使えるかどうかだろう。
もちろん、その苦労をするだけの価値があのパーツにある可能性もあるが、使いにくいという点に変わりはない。
「何か見落とししているのか?」
いくつか理由は考えられるが、今はまだ検証するのに時間も人手も足りないな。宝箱については気に留めておこう。
マップを埋め終わったのでボス部屋に行って囲んで叩いた。一階と同じホブゴブリンで大剣を用いた剣術を使う戦士だったので多少苦労したが、数の暴力の前に屈した。
こうして俺は一人で三階に足を進めた。
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