第36話 シェアメイト

 

「…ーマ。ねぇ、ユーマ。起きて」


「んっ、んん。……りえる、おはよ」


 リエルが俺の顔を覗き込んでいた。


 朝から美少女に起こしてもらえるなんて最高だ。


『私だって声をかけようとしたんです。でも、祐真様がまだ眠そうでしたので、気を使ったんです。私の声で起こして差し上げたかったのに……』


 アイリスもありがとね。



「やぁ、起きた? 僕はここの寮長をやってるフリスト。よろしくね」


 短髪の美青年が手を差し出してきた。


 ソファーから身体を起こし、その手を握る。

 女の子みたいな綺麗な手だった。


 もしかしたらフリストが気にしてるかもしれないので、口には出さないでおこう。


「初めまして。ユーマって言います」


「うん。新人が入寮するって昨日の夕方連絡があったんだけど、夜まで待っても来なかったから先に寝ちゃった。あっ。ちなみに敬語とか要らないからね。5人しかいない寮なんだから、軽い感じで仲良くやってこ」


 6部屋あるけど、入寮してるのは5人なんだ。 


「先生たちに呼ばれて、色々と話しているうちに遅くなっちゃった」


「そうなんだ。まぁここは門限ないから、特に問題ないけどね。他の寮生にも君を紹介していい?」


「ぜひ!」


 頼りになる寮長様だな。

 コミュ障にはありがたい。


「アルメリア、ニーナ。こちらユーマ。昨日からウチの寮に入った」


「ユーマです。よろしく」


「アルメリアです。よろしくお願いします」


 金髪で腰ぐらいまでのストレートヘアの彼女は、お嬢様っぽい優雅な所作で挨拶してくれた。貴族令嬢だったりするのかな?



「私はニーナ、よろしくね」


 ショートの黒髪から猫耳が生えていた。ニーナは猫獣人って種族なんだろう。語尾が「ニャ」ではないのがちょっと悲しい。異世界で猫獣人と言えば「○○ニャ」って語尾だろう。


 仲良くなれたら、一度は語尾変更をお願いしてみたい。



「リエルはもう自己紹介したの?」


「うん。ユーマを起こす前にね。みんなが男部屋から出てきた私に驚いてて、私自身も状況を理解するのに時間がかかっちゃった。昨日、寝ちゃた私をユーマがここまで運んでくれたんでしょ?」


「うん、そうだよ。あ、もちろん変なことはしてないから」


「それは信用してるから、大丈夫」


 ふふっ、と笑うリエルが可愛かった。



 男は俺とフリストのふたり。

 残り3人が女子。


 ハーレムとはいえないが、女子比率が高いのは嬉しいな。


 そう言っても俺から話しかけるのは、リエルとフリストだけになりそうだけど。



「ユーマもリエルも、寮で過ごすための備品はまだないだろ?」


「うん。タオルとか欲しい」


 シャワーを浴びたい!


「今日は授業が休みなんだ。だからみんなで買い出しに行こう」


「いいね。良い店紹介して」


 昨晩の新魔法研究会で教師たちから奨学金としてお金を貰っていた。だから買い物に行くこともできる。


 金銭感覚については、女神様が用意してくれた今は無き古城に物価の参考資料があった。それを見た記憶から計算すると、俺の手元にはこの世界の一般的な4人家庭が1年間暮らせるくらいの金貨がある。


「私も買い物に行きたい! だけど、先にシャワー浴びて良いかな? 昨日、起きれなかったから」


 リエルはシャワーなんか浴びなくても、良い匂いだよ。って思ったけどそれを言うと変態っぽいので止めておく。


 俺もできればシャワー浴びたいけど、タオルが……。


「リエル、タオルとかもってないでしょ? 私のを使っていいよ」


「わぁ! ニーナ、ありがと」


「ユーマには僕のを貸してあげる」


「助かりまーす!」


 水魔法でめっちゃ綺麗にして返しますね。


 フリストからタオルを借りてシャワールームに向かう。



 彼のタオルは、なんだかすごく良い匂いがした。

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