第37話 美少女たちとの買い物

 

「日用品はこの店で買うと良い。たくさん買っても後で寮まで運んでくれるんだ」


 フリストに案内されながら、魔法学園の中を歩いている。この学園はかなり大きくて、中に一通りの店舗が揃っている。価格も学生用に安く設定されているから、外の街まで買い出しに出ていく必要は無いらしい。


「杖などの装備系魔道具はあちら。魔力回復薬などの消費系アイテムはあちらにお店があります」


「この道をまっすぐ進んだ先にも消費系アイテムのお店あるけど、私のおススメはこっちのお店かな。たくさん買うと割引してもらえるの」


 アルメリアとニーナも買い物についてきてくれた。


「ねぇ、ニーナ。さっき貸してくれた洗剤もこの辺りで売ってる?」


「あれはまた別の場所で見つけたんだ。今度案内してあげるね」


 リエルはニーナと気が合うようで、楽しそうに女子トークしていた。


「ユーマ、まずは日用品から買っていく?」


「そうしようかな。さっきフリストが貸してくれたタオルもこのお店で売ってる? あれ凄く良い匂いがしたから、出来れば同じものが欲しいなって」


「に、匂い!? すまない、普段僕が使っているモノだから、特に匂うなんて思ってなかった。洗剤もこの店で買ったものだし」


 良い匂いだったから全然問題ない。

 でも何故かフリストは耳を赤らめていた。


「じゃあ洗剤もフリストが持ってるのを教えて。それ買うから」


「わかった、こっちだよ」


 奨学金があるからと、調子に乗って買いまくった。


 1週間くらいしか滞在しない予定なのに……。


 女の子がいる買い物が楽しすぎたんだ。


 フリストがおススメしてくれる商品はセンスがあって、自分が使った感想なども教えてくれるから選びやすい。


 

「大量に買っちゃったな」


 基本的にフリストが勧めてくれたモノは全部買った。


「私の分までユーマが払ってくれたけど、後でお金渡すからね」


「別にいいよ。昨日ご飯を御馳走になったから」


「あれはユーマに助けてもらったお礼だもん」


 一通り買い物を終え、俺たちはアルメリアがおススメしてくれたカフェに向かって歩いている。そこも買い物に付き合ってくれたお礼として俺が支払うつもり。



「君たち、可愛いね」


「制服は1年生のだけど、君らみたいな可愛い子は初めて見たよ」


「こんな弱そうな男たちより、俺らとお茶しようぜ」


 3人の男子学生に絡まれた。


 美少女たちと歩いてるんだから、お約束展開だな。


 さて、どうしよう?


「か、かにゅ──」


 噛んだ。


『祐真様、ドンマイです!』


 めっちゃ恥ずかしい。

 穴があれば入りたい。


「彼女たちは僕の寮の生徒です。これから僕らとカフェに行くので、放っておいてください」


 フリストさん、凄くかっこいい。


「お前、可愛い顔してんな。お前が俺の相手してくれるなら、それでも良いぞ」


「ぼ、僕が?」


 おおっと!?

 そっちも行ける派ですか?


 確かにフリストは中性的な顔してて、見様によっちゃ可愛いけど……。


 あれかな。可愛くて良し、更になお良しみたいな。


「や、やめてくだしゃい!」


 また噛んだ。もう死にたい。



「ごめんなさい。私、弱い男には興味ないんです」


 リエルがとんでもないことを言い出した。


「あ゛ぁ゛?」


 男子学生のひとりが顔に青筋を立ててキレてる。


「てめぇ、ちょっと顔が良いからって調子に乗るなよ」


 リエルは“ちょっと顔が良い”レベルじゃないだろ。俺基準だけど、滅茶苦茶可愛いぞ。それにアルメリアやニーナも彼女と並んでも霞まないくらい可愛い。


「こいつらが3年の俺らより強いって言うのか?」


「こいつらって言うか、こっちね」

「えっ。ちょ、おい」


 リエルが俺の手を引き、男子学生たちの前に押し出した。


「このユーマに魔法で勝てたら、一緒にお茶してあげる」


「ほう。良いだろう。約束だぞ」


「えっ」


「お前はコイツの彼氏か?」


「あ、いや。ちが──」


「どっからどー見ても雑魚だろ。ぜんぜん覇気を感じない」


 もう止めて。俺の精神ライフは既に0ですよ!?



 なんでこんなお約束展開になるんですか。


 そもそも休みの日に学生が自由に魔法を使っていい場所なんて、都合よくあるはずなくない?


「こっちだ、ついてこい。魔法訓練場で勝負しようぜ」


 都合よくあるんだ。

 

「訓練場なら死なないからって油断すんなよ? 数日は指先も動かせねーくらい、ボッコボコにしてやるから」


「先に彼女に謝っとけ。負けてごめんなさいって」


「俺らの魔法で黒焦げになったら、しばらく話せないからな」


 そう言って男子学生たちはゲラゲラ笑いながら歩いて行った。



「ユーマ、ごめん。でもあなたなら勝てるでしょ」


「彼らは3年の特進クラスの生徒だと思う。かなり強いぞ」


 フリストは心配そうな顔をしていた。


「では、あの人たちにユーマさんが勝てたら、頬にキスしてあげます」


「え」


「あ、アルメリア。急になに言い出すの? 冗談だよね?」


「あら、ダメだったかしら……。男性はこういうのがご褒美だと頑張れるって、以前本で読みましたので」


 どんな本なのか気になる。


「じゃ、じゃあ。私が言い出したんだし、ユーマがあいつらに勝てたら、その……。私がほっぺにチューしてあげるね」


 マジっすか!?


 俺、やっちゃいますよ!

 良いんですね!?


 やっちゃって良いんですね!?

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