第5話 特許実施許諾契約とは
『雷哮が権利化されましたので、一度のみ魔力消費なしで魔法発動が可能です。これより、実行しますか?』
「それは権利化された特典みたいなもの?」
『そうお考えいただいて構いません。ちなみに雷哮の発動に必要な魔攻は8,000ですので、この機を逃せば威力の確認はしばらくできなくなります』
「は、8,000!?」
魔法を使うには魔力が必要だけど、それはステータスボードに表示されない。残り何回魔法が使えるかは体感でなんとなく分かるようになってるんだ。
MPがない代わりに、魔法にはそれぞれ必要とされる魔攻──つまり、魔法攻撃力が設定されていて、その数値を超えていないと魔法が発動しないらしい。
最上位魔法である雷哮で必要とされる魔攻は8,000。現在、俺の魔攻が60で、魔法使いの俺は1SP(ステータスポイント)で魔攻が+15される。レベルアップ時に得られる10SPを全て魔攻に振ったとして、雷哮を使えるようになるのは──
レベルが50以上になってからってことか。
魔物を倒せないであろう俺のステータスでは、そこまで強化するのが厳しそうだ。
なんとなく“俺が考えた最強の魔法”を最初に登録しちゃったけど、これを使える日は来るのかな?
とても不安になった。
やっぱり残り90のステータスポイントを、とりあえず攻撃力とか上げるのに使ってしまうべきなのだろうか……。
ただ、それは俺自身の強化を中途半端にしてしまうことになる。
RPGゲームで強いのは“ステータスの極振り”だ。極振りとは、ただひとつのステータス、もしくはスキルだけを伸ばし、その他は一切を捨てるというもの。
そうして専門職となることで、パーティーを組んだときにバランス良くステータスを上げたキャラクターより活躍できる。
だから俺はスキル【特許権】に極振りすることにしたんだ。
それでも、今ならまだ引き返せる。
普通にステータスを上げて強くなる努力をすべきかもしれないという思いと、このレアスキルを使ってクラスのみんなが驚くような活躍をしてやりたいって思いで揺れ動いている。
「どうしよう……。ステータスも上げたいけど、魔法詠唱をもっとたくさん俺の特許にしておきたい。なんとか両立できないかな?」
『でしたら、魔法詠唱の特許件数を増やすことを推奨します』
アイリスのオススメはスキルを伸ばす方みたい。
「それはどうして?」
『祐真様は特許化した詠唱を御自身しか使えないとお考えではありませんか?』
「えっ、そうだけど。違うの?」
ステータスポイントを10も使って俺の権利にしたのに、他の誰かが使えちゃうんじゃ意味が分からない。独占出来ないなら、何のための特許なんですか!?
『特許権者は自身のみがその詠唱を使えるようにするという選択肢の他に、他人に実施権を与えて利益を得るという選択肢もあるのです』
「実施権? よくわかんないけど、利益を得る方法があるんだ」
『例えば祐真様のクラスメイトに特許化済み魔法詠唱の実施権を与えると、その方も特許化済み魔法を使えるようになります。実施権を与える方とは双方合意の上で、“特許実施許諾契約”を締結することになります』
ヤバい、話しについていけないかも。
『実施権を設定された“実施権者”が特許化済み魔法で魔物を倒してレベルアップすると、得られた利益の5%が権利者に還元されます』
「……ごめん、もう少しわかりやすくお願い」
『祐真様が特許を取得した魔法を勇者様が使って魔物を倒し、レベルアップすると、祐真様は魔物と戦わなくてもステータスポイントを得られるんです』
なにそれ!
めっちゃ良くね!?
「得られるステータスポイントって5%なんだよね? てことは俺が魔法の特許を使えるようにしてあげた誰かが1レベル上がれば、俺にはステータスポイントが0.5入ってくるってことだよね?」
『そうです。例えば10人に実施権を与え、全員が10レベル上がれば、それだけで祐真様は50SPを獲得できます』
うぉぉぉおおおお!?
特許って、すげぇぇえええ!!
夢の不労所得じゃん!!
……いや、所得ではないか。
まぁそれはいい。
「じゃあ、俺はクラスのみんなが使いたくなるような強くて便利ですごい魔法をどんどん特許にしていけばいいんだ」
『御明察です。基本的には高位魔法の方が特許化しやすくはありますが、魔法攻撃力が低い方々にはあまり利用していただけません。そこでまずは現在この世界で利用されている魔法の効果を上げるような進歩性を探求し、中~上級魔法で新たな詠唱を特許化していくことを推奨致します』
「わかった! やってみるよ!!」
俺の
きっとクラスメイトたちも俺の特許を使いたくなるはず!
俺はやってやる!
やってやるぞぉぉぉおおお!
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