第46話 新魔法の授業(4/4)

 

 リエルが颶風烈火を完全な威力で放てるようになった。


「良い感じだね」


「ユーマ先生のおかげです! ありがとうございました!!」


 今の彼女ならオーク十数体に囲まれても何とかできるはず。


「よし、次。フリストいってみよーか」


「はい!」


 少し離れた所で見学していたフリストが、テテテと小走りでやってくる。


 いちいち仕草が可愛い。

 リエルより女の子っぽいな。


 でもコイツは男だ。

 勘違いしちゃいけない。



「やっぱりユーマは異世界人だったんだ」


 いきなり彼からそんなことを言われた。


「やっぱりって、気づいてたの?」


「僕は精霊掲示板に公開された32個の新魔法全て覚えているからね。3年生との決闘でユーマが未公開の魔法を使った時、そうじゃないかなって思った。魔法を撃ち消してしまう天帝領域も、上級魔法を遥かに凌駕する威力の雷哮も。どちらもユーマと特許実施許諾契約するかの確認メッセージが出なかった」


 フリストは既に新魔法の詠唱や特許実施許諾契約のやり方を知っていたのか。


 その状態で俺が未公開の新魔法をふたつも使ってみせたから、こっちの世界のヒトではないと気づいちゃったと。


 じゃあ仕方ないよね。


「黙っててゴメン」


「ユーマを責めようとか思ってない。ただリエルに教えたように、僕にも新魔法を完璧に使いこなせるよう教えてほしい。もちろん、最初に約束した通りの報酬はちゃんと支払うから」


 フリストの報酬って、たしか……。


「添い寝してくれるんだっけ」


「うん!」


 正直男と添い寝なんて気持ち悪いって思う。

 でもコイツなら何故か許せる気がする。


 実は女の子でしたってオチないかな?


 一応、ノーマル性癖を自負しているので、ほんとに男だったら新たな扉を開いてしまいそうでヤバいが……。


 まぁ、それは後で考えればいいか。


「フリストはまず、戦闘用の支援系魔法だね」


「はい。ユーマ先生、よろしくお願いします」



 その後フリストに支援魔法を、ニーナに身体強化魔法、アルメリアに回復系の新魔法を使うコツなどを伝授した。


 全員最低ひとつは新魔法を使いこなせるようになったので、教師になった初日としては上出来だと思う。



  ──***──


「ユーマさん。お口にあいますか?」


 心配そうな顔でアルメリアが尋ねてくる。


「これ、めっちゃ美味いよ! お店で食べるのより美味しい」


 俺は夕飯として彼女が作ってくれた調理に舌鼓を打っていた。


「良かったぁ。頑張った甲斐があります。明日からも期待してくださいね」


「私も、こんなにおいしい料理は初めて食べた。また今度作り方教えて」


「お任せください、リエルさん」


「アルメリア、おかわり欲しいにゃ」


 ニーナは授業中以外でも語尾を「にゃ」にして会話してくれるようになった。


「はーい。たくさん作ったので、みなさんもおかわりしてくださいね」


「こんなにおいしい彼女の手料理が毎日食べられるって、幸せだろ?」


「フリストは料理しないの?」


「何度か挑戦はしてるんだけどね。上手くいかなくって」


「私もそうにゃ」


 フリストとニーナは料理が得意ではないらしい。


「ふたりとも調味料などを計量しないからですよ」


「えー。だってめんどいんだもん」


「感覚でなんとかなるって思ってたにゃ」


 あぁ、そういうこと……。

 感覚でやっちゃうんだ。



 ──***──


 アルメリアが作ってくれた料理を食べ終え、みんなで少し談笑した後にシャワーを浴びて自室に戻った。


 寮の共用スペースから借りてきた魔導書を読んでいると、部屋の扉が叩かれる。


「はーい」


「おじゃましまーす」


 入ってきたのはフリストだった。


「どーした?」


「約束を果たそうかなって」


「えっ」


 マジで来たのか。

 てかコイツ、パジャマ姿可愛いな。


「あのさ、一応確認するけど。お前って男だよな」


「うん。そうだよ。見てみる?」


 そう言ってフリストがズボンの前を持ってスペースを開ける。


「……いや、いい。そして添い寝もしなくていい。ごめんな」


「実は僕が女の子かもって期待してたんだ」


「んー。正直言うと、可愛いから男でもアリかなって少し思っちゃった。でも冷静に考えればダメだろって」


「じゃあ、僕が女の子になれば添い寝してくれるんだね」


「は?」


 フリストの身体がぼんやりと輝きだした。


 僅かだけど、胸が膨らんだような気がする。



 あと、何故か背中に純白で二対四枚の羽根が生えている。



「お待たせ。女の子の身体になったよ。それじゃ、今日僕に魔法を教えてくれたご褒美を上げるね。ユーマ、一緒に寝よう」


「待てまてまて! なんで光った!? 女の身体になったってなに!? その背中の羽は、いったいなんなんですか!?」


「え、羽? ……あ、これか」


 後ろを向いた彼が羽に触れると、それはパっと消えた。


「出すつもりはなかったんだけどね。身体を変えるのってちょっと力を使うから、ついうっかり。てへ」


 てへぺろするフリスト。


 ぶりっこがやると若干ひくが、コイツは普通に可愛いって思っちゃう。


「身体を、変える?」


「実は僕、聖女を守護する天使なの。だから性別ぐらいは好きに変えれる。ユーマがもし男の娘と寝たいって思ったら、いつでも戻るよ」


 てことはほんとに今は女の子なんだ。


 しかも可愛い。

 え、マジで俺、この子と寝れるの?


 ドキドキしはじめていた。


 それとは別に少し気になることもあった。


「聖女を守護する天使が、なんで魔法学園に来てるの?」


「聖女を守護するためだよ」


 意味が分からん。

 聖都とかで守っとけよ。

 


「あれ、まだわかんないかな。アルメリアが次の聖女になる存在なんだ」

 

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