第27話 美少女のお願い
エルフの少女、リエルと一緒に街にたどり着いた。
大きな円形の街だ。異世界らしく、街を守る高い防壁に囲まれている。
「ユーマ。案内と護衛、ありがと」
「どういたしまして」
ここまでの道中、小さな人型の魔物であるゴブリンと、黒い狼っぽい魔物に襲われた。どちらも俺の敵ではなく、リエルを守りながらここまで来ることができた。
ちなみに魔物は野生の勘のようなもので、強い相手には襲い掛からないことが多いらしい。俺の魔法攻撃力は20万近くになっているが、これはステータスツリーを解放して魔力のみを上げているため、本来の魔法攻撃力というステータスに統合された“威圧”というものにSPが割り振られない。だから俺は魔物に襲われる。
めんどくさいが、それでも良い。
魔物を殲滅すると、その度にリエルが俺を褒めてくれたから。
ここまでの道中、俺は異世界無双ムーブを堪能した。楽しかった。特に異世界に来たらやりたいことリストNo.38 “エルフの女性を助けてチヤホヤされる”を達成できたことも大きい。ちなみにこのリストはNo.100まである。
「どこでご飯食べよーかな」
リエルが街の中で飲食店を品定めしていた。
街に入るのに審査とかはなかった。門番さんはいたけど、彼らの仕事は魔物が街に入らないようにすることで、俺たちはそのまま中に入ることができたんだ。
「ユーマは食べたいものある? 嫌いなものとかは?」
「嫌いなものは特にないよ。食べたいのは、お肉かな」
「お肉かー」
言ってから失敗したと思った。普通に食べたいものを答えたが、肉料理ってこの世界では高価である可能性も考えなきゃいけなかった。
数時間護衛した程度で、肉料理を奢ってもらうのもありなのか。そもそもエルフって肉を食べれるのか? 全く配慮に欠けていたと反省する。
「ごめん、肉以外でも良いよ」
「ううん。私もお肉が食べたい。この街は初めてだから、どこが美味しいかなー? おいしそうな匂いがするお店に入っちゃおうか」
肉でも良いらしい。
少し歩いて、リエルの食指が動いたお店に入ることになった。
「おいしー!!」
「これ、美味いよ」
美少女と食べる肉は格別だった。
普通に食事も美味い。
異世界の食事ってどんなものかと思っていたが、全然悪くない。
食べているのはレッドホーンっていう牛みたいな魔物の肉らしい。
「ねぇ、ユーマはなんでこの街に向かっていたの?」
お腹が満たされてきたところでリエルが聞いてきた。
俺がここに向かっていたのは、滞在していた古城から一番近い街がここだったから。特にこれといった理由はない。あるとすれば──
「ここで仲間を待とうと思ってるんだ」
俺はひとりで魔王を倒すことを決意した。
でも魔王が俺の魔法を使ってくるかもしれないってことはクラスメイトたちに伝えておくべきかと思い、彼らと合流できる可能性が最も高いこの街で少しの期間滞在するつもりだった。
「しばらくここにいるんだね! じゃあ、もし暇だったら私と魔法養成所に行かない? この街だと、魔法学園って呼ばれてるのかな」
「へぇ。魔法学園があるんだ」
異世界のド定番、魔法学園。
「ユーマは魔法使いでしょ。だったら最近、20個くらいの新しい魔法が使えるようになったのも知ってるよね?」
「……うん」
その魔法、俺が創ったんだよ。正確には32個の魔法をこの世界のヒトが使えるようにしてあげた。
そう言って自慢したいけど、信じてくれないだろうな。
「ここの魔法学園は世界でも有数の魔法学者がたくさんいて、使えるようになったばかりの魔法に関する研究も取り組んでいるらしいの! 私はもっと強くなりたくて、ここに勉強しに来た。でもユーマは強いから、学園に入る必要なんてないかも」
「魔法学園は一度入ると何年かは出てこれないとかある?」
「それはないみたい。成績優秀なら、数か月で卒業認定を貰えることもあるって」
『まさか祐真様、入学されるおつもりですか?』
アイリスが脳内で話しかけてきた。
1週間とかで退学できるなら、暇つぶしに学園を見に行くのも良いと思ってる。
俺の考えた魔法が、この世界の人々にどう思われているのか知りたいって気持ちも大きかった。
『入学金はどうなさるおつもりですか。それに授業料も必要です』
あー、そっか。
俺が今無一文なの忘れてた。
「入学金とか払えないから、俺は入れないかな」
「ユーマならそんなの要らないんじゃない? 魔法学園って凄い魔法使いの卵を育てる場所だけど、魔法の研究機関でもあるの。魔法学園を卒業したって肩書欲しさに強い魔法使いが編入することもあって、そーゆーヒトは入学金とかが免除されるの」
『……チッ』
えっ。今、アイリスさん、舌打ちしました?
『してません』
ならいいけど、俺って入学金免除してもらえるかな?
『さぁ、どうでしょうね』
なんかアイリスが冷たい。
やっぱり、リエルに嫉妬してる。
仕方ない。
興味はあるけど、断るか。
『そうですね。小娘の提案など、早急に断ってください』
「ユーマ、とりあえず一緒に学園行ってみようよ! 私もひとりじゃ寂しいの。知り合いがいてくれた方が心強いし、この通りお願い。ね?」
美少女が上目遣いでお願いしてくる。
そんな強攻撃に、年齢イコール彼女ナシ童貞の俺が耐えられるわけがなかった。
「わかった、行くよ!」
『祐真様!?』
「わーい! それじゃ早速、このあと魔法学園に行ってみよー!!」
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