第30話 新魔法の筆記試験

 

 ファリル先生は暗い顔でどこかに行ってしまった。


 学園長に言われた「半年間減給」が響いたんだと思う。でも魔力測定水晶が割れたのを俺のせいにせず、自らがついヒートアップして俺に触らせたと説明してくれたので、良い先生なんだと思う。


 いつかレアなアイテムとか手に入れたら、今回の補償としてファリル先生にプレゼントしてあげよう。


 

 この場には学園長が残った。


「改めて自己紹介しようかの。儂はこの学園を治めておるオーガスじゃ」


「私、知ってます! この地方を魔物のスタンピードから守った、大賢者オーガスですよね!? エルフ族の中でも貴方のお名前は良く知られています」


「それはありがたい。貴女はハーフエルフかな?」


「そうです。リエルといいます。研究が進められているここで新魔法を学ぶよう族長から言われて、西のエルフの里からやって来ました!」


 西のってことは、別の場所にもエルフの里があるのかな?


 また後で聞いておこう。


 ちなみにこの世界って、ハーフエルフがエルフから迫害されるってことはないらしい。ハーフじゃないと人族とエルフ両方の言葉を理解できないらしく、彼女はエルフと人族の交流のために里の内外で活躍してきたってことをリエルから聞いていた。



「そして君は、もしや異世界人か?」


 やっぱりバレちゃったか。

 でも隠す理由もないんだよな。


「はい、そうです」


「えっ? ユーマって勇者様だったの!?」


 まだリエルには俺が異世界から来たってことを言ってない。


「勇者じゃないけどね。俺はこことは別の世界から、勇者と一緒にこの世界に来た」


「そ、そうだったんだ。だから強いんだね」


 元は弱かったんだよ?

 俺は頑張ったんだ。


 また後で俺の苦労話をしてあげなきゃ。


「2週間ほど前、ここには10人を超す異世界人が魔法を学びに来た。あれは君のお仲間かな?」


「はい、そうだと思います」


「彼らは呑み込みが早く、たった2日でこの世界の魔法体系を理解してここから出て行った。君も彼らと同じく優秀なのだろうが……。今は異世界人の君でも、そう簡単に卒業できぬと思った方が良いぞ」


「なぜですか?」


「この世界に新たな魔法が追加実装されたのじゃ! 何百年も前から、使える魔法は増えることがなかったと記録されている。それがつい先日、なんと32個もの新魔法が追加された。まだ研究の途中ではあるが、ここの学生となる君らにも学んでもらいたいことがたくさんあるのだ」


 俺が魔法をたくさん登録したから、卒業難易度が上がっちゃったみたい。


 卒業するために来たんじゃないから問題ないけど。


 というか俺が創った魔法を研究してて、それを学ばせようとしてくるなら楽勝だと思う。むしろ俺が手伝えば研究が進むんじゃないかな?


 研究が進めば、まだまだ足りない部分が見えてくるかもしれない。


 足りなければそれを補う魔法を新たに創れば良い。


 俺にはそのための力が、スキル【特許権】あるのだから。


 そう考えると、俺はこの学園でしっかり学んで研究にも協力すべきだ。


「学園長先生。俺、ここで頑張ります!」


「わ、私も!!」


「良い返事じゃ。ちなみに君らふたりは、従来なら学科も実技もパスできるレベルの魔力量を持っておる。しかし新魔法が追加された今、それぞれの実力を確かめさせてほしい。これは編入希望者全員が同じ条件だ」


 筆記と実技ですね。

 どちらも自信があります!


「まずは筆記試験を行う。儂についてきなさい」


 かるーく満点を取ってやろう。

 俺の魔法なんだから楽勝だ。


 異世界に来たらやりたいことリストNo.14“知識無双”が、こんなに早く達成フラグが建つなんてな。



 ──***──


 この世界の魔法、それから新たに俺が登録した魔法に関する試験を受けた。


 楽勝だと思っていた。

 

 短時間ながらアイリスと一緒にこの世界の魔法についてたくさん勉強したし、試験に出題される魔法の大半は俺が創った新魔法なのだから。


 それなのに──



「な、70点? え、なんで!?」


 俺は筆記試験で満点をとれなかった。

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