第31話 やりたいことリストにない目標
魔法の筆記試験で満点がとれなかった。
自信あったのに……。
「ユーマ、なんで落ち込んでるの? もしかして不合格だった?」
リエルが心配そうに尋ねてきた。俺たちが受けた試験は100点満点で、合格ラインは20点以上。当然それはクリアしているのだが、全然納得できない。
「合格はしてる。でも、もっと点を取れたと思ったんだ」
「何点だったの? ──って、70点!? す、すごいね。なんでこんな高得点なのに、暗い顔して落ち込んでるのよ」
リエルが大きな声を出したので、周りから少し注目を浴びた。
俺たちは魔法学園の中庭にあるベンチで昼食を食べようとしていたところで、その前に試験結果を報告し合っている。
「100点取れる自信があったんだ。何度も見直したし、ミスなんてしてないと思う。どこがダメだったんだろ? ちなみにリエルはどうだった?」
「私は42点だった。不合格者も含めた編入生全体で平均点くらいだって言われたんだけど……。これ絶対にユーマが平均点上げてるだけだよね。すごく難しかったもん」
リエルは方向音痴だけど、頭が悪いわけじゃない。会話してて彼女の知識量の多さに驚いた。そんな彼女が42点しか取れなかったとなると、やっぱり試験内容が難しかったのかな。
ちなみに解答用紙は返却されていない。
試験結果の点数が書かれた紙を事務員っぽい眼鏡をかけた女性から受け取っただけ。だから自分がどこを間違えたのか分からない。
納得いかず、モヤモヤしていた。
「ユーマ! ユーマという編入希望者はいるか?」
教師っぽい男性に呼ばれた。
「はい、俺です」
「君がユーマか。食事中すまないな。先ほど受けてもらった編入試験の件で話がある。食事を終えたら、教員室にきてほしい。場所は中央塔の3階だ」
「彼女も一緒に良いですか?」
リエルが一瞬不安そうな顔を見せたので、一緒に行っても良いか聞いてみた。
「君は?」
「私、リエルと言います。私も編入希望です」
「あぁ。サファイヤ級の魔力の持ち主の。そうか、君か。本当ならユーマだけを招くつもりだったが……。ふたりは友人かな?」
「えっと、私は」
「友人です」
「そう言うことなら良いだろう。待ってるから、ちゃんと来てくれよ」
「はい」
男性教員は中央塔の方に歩いて行った。
「私とユーマって、友達でいいの?」
「俺はリエルとこれからも仲良くしたいって思ってるよ」
まだ出会ってそんなに時間は経ってないけど、仲良くなれたとは思ってる。
むしろこんな美少女と一緒にいられるなら、土下座して頼み込んででも友人ってことにしていただきたい。
「ありがと。それじゃ、これからもよろしくね」
「こちらこそよろしく」
異世界に来たらやりたいことリストに、異性と友達になるってのは入れてなかった。俺は自分から女子に話しかけるのが苦手だから、異性の友達を作るのは無理だって思ってたんだ。
でもリエルはたくさん話しかけてくれる。
彼女と会話するのは楽しかった。
無理だって思ってたけど、リエルとなら友達になれる気がした。
やりたいことリストには入れてなかったけど、いつかできたら良いなって漠然と考えていた目標を達成することができた。
──***──
その後、男性教員に言われた通りに中央塔3階までやって来た。
教員室の中では、何かの議論が白熱している様子。
「やはりこの水龍弾は、ドラゴン型ではないんじゃないか?」
「しかし、龍というものが分からぬ……」
「新たな水龍弾と古い水流弾では、威力が全然違う。つまり魔法でイメージする形状が正しければ、更なる威力を見込めるということだ」
「そうだな。なんとしても龍の形状を知りたい」
「クソっ。こんな時に彼らが、
どうやら俺がこの世界のヒトでも使えるようにした水龍弾について話し合っているみたいだ。
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