第42話 みんなの「望み」と「報酬」

 

「早速だけど、みんなは新魔法を使いたいって認識で良いよね」


 俺がリエルたちの先生になるなら、彼女らができるようになりと希望していることを叶えてあげたい。


「はーい。私はそうでーす」


「僕もそう……あっ、そうです」


 一応先生ってことになったからか、フリストが敬語になった。


「私も新魔法使いたい!」


 ニーナの言葉遣いは変わらなかった。


「ちなみに、ニーナ。もし俺のお願いを聞いてくれたら、君が望む魔法を使えるように全力で協力してあげるけど、どうかな?」


「んー。やらしいお願いじゃなければ。まぁでも、ユーマがどうしてもって言うなら、そーゆーのでもいいよ」


 比較的健全なお願いですので、ご安心ください。


「語尾を「にゃ」にしてほしい」


「……ユーマって、そーゆープレイが趣味なのかにゃ」


 こっちの世界じゃ、獣人に語尾を強要するのって特殊プレイ扱いなの?


 でも語尾を変えるのは受け入れてもらえたみたいだ。


「ありがと。ニーナはどんな新魔法を使いたい?」


「身体強化系のをお願いしたいにゃ」


「なるほど。りょーかい!」


 いいねぇ。やっぱり猫獣人の語尾はこうでなくっちゃ。


「ユーマ先生。私は魔力量を増やしたいのですが、それも可能でしょうか?」


 アルメリアの願いは魔力の増強か。


 俺が魔力量を増やせているのはスキル【特許権】の効果であって、誰もが俺の方法で魔力を増やせるわけじゃない。だから彼女の望みは叶えられないな……。


『では私が、魔力を増やす訓練メニューを作成します』


 脳内でアイリスが話しかけてきた。


 任せちゃって良いの?


『祐真様がアルメリアさんたちの教師になると決められたのです。私のマスターにできないことがあるなどと、彼女らに思われたくはありません。私が全力でサポートいたしますので、ご安心ください』


 やっぱり頼りになるぅー!!

 ありがと、よろしくね。



「いいよ。アルメリアのために、魔力増やす訓練も考えてあげる」


「ありがとうございます! あ、あの。では私は代償として、ユーマ先生に何をすればよろしいでしょうか?」


「代償? なんで?」


「えっ。だって、ニーナさんには語尾を変えるようにと」


 そう言えばそうか。


 ニーナにだけに負担を強いるのもどうかと思う。


 そもそも俺は教師としての賃金を貰うわけじゃないんだし、考案者である俺が直々に新魔法を教えてあげるんだから最高効率で学べるはず。その特典に見合う報酬はもらっても良いよね?


「アルメリアは料理できる?」


「えぇ。寮では夕食を自炊していますし、ニーナやフリストの分も作っていました」


「彼女が作ってくれる晩ご飯はおいしいんだ。あ、おいしいんです」


「いつもお世話になってるにゃ」


「じゃあ、寮で俺のご飯も作ってくれない? もちろん食材費は出すし、買い出しとかも任せて」


「それぐらいでしたらお任せください。3人分も5人分も、たいして変わりません。買い出しを手伝っていただけるのは助かりますね」


「5人分って、私の分も作ってくれる感じ?」


「はい。ハーフエルフのリエルさんにも是非、私の料理を召し上がっていただきたいと思っています」


「わー! アルメリア、ありがと。楽しみにしてるね!!」


 ニーナとアルメリアが俺に支払う報酬は決まった。


 残りのふたりは、どうしようかな?



「それじゃ私の報酬は、新魔法1個使えるようになるごとに、ほっぺにキスとか……どう、かな?」


 耳を真っ赤にしながらリエルが提案してきた。


 それ、ありですか?

 俺はありだけど。


 マジでいいの?


 何だったらこの世界のヒトに公開した32個だけじゃなくて、俺が特許登録した100個全部使えるようにしてあげちゃうよ? 


 そうしたらキス100回か。


 想像して、ちょっと口角が上がってしまう。


 冷静に考えれば、必要魔攻1万の最上級魔法とかもあるから全部リエルが使えるようにするのは不可能だ。最大で80個ぐらいになる。まぁ、それでも十分。



 念のためにファリル先生の反応を確認する。


 もしかしたら学びの場で不純なことをするなと咎められるかもしれない。


「…………」


 先生は黙々と本を読んでいる。

 問題ないみたいだ。



「おっけー! じゃリエルは新魔法1個につき、キス1回ってことで」


「ほ、ほっぺにだからね!」


「うん。それでいいよ」


 さて、最後はフリストか。



「語尾の強制に、食事とキスの強要……。ユーマ先生も、なかなかやりますねぇ」


 そう言いながらフリストが近寄ってきた。


「なら僕とは、添い寝とかいかがでしょう?」


 おまっ、その顔と声でその発言はヤバいぞ!

 

 俺が変態だったら喜んでその提案に乗るぞ!

 顔がめっちゃ良いんだから気を付けろって!!


『祐真様。彼はなんだか、危険な気がします!』


 アイリスも警戒していた。


 そこにフリストが追い打ちをかける。


「新魔法1つごとに頬にキスでも良いんですが、個人的なおススメは添い寝ですね。僕、癒しの魔法が使えるので、きっとぐっすり眠れますよ」


「添い寝でお願いします」

『祐真様!?』


 ごめん、アイリス。


 俺は、誘惑に勝てなかったよ……。

 

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