第24話 魔王討伐の決意
アイリスの案内で街に向かって歩いている。
その途中、とあることを思い出した。
「魔王が天地晦冥使ってきたけど、これってマズいよね」
俺は何とか生き延びたが、あの破壊力がクラスメイトたちに向けられたら大変なことになる。もしそれで誰かが傷付けば俺の責任だ。
「【特許権】って、敵に使わせないようにできないの?」
他人に使わせないようにするための特許だと思っていた。
それを魔王が普通に使ってきたので、納得できるわけがない。
『祐真様が拒否すれば、特許実施許諾契約は締結されません。しかしその場合も“世界の言葉”による警告を無視すれば魔法の発動は可能になってしまいます』
「世界の言葉って?」
『先ほど大神様からのメッセージをお見せしました。アレです。あのように、魔法試用前に祐真様と契約を結ぶよう促すボードが現れます。魔王はそれを無視して天地晦冥を放ったのでしょう』
「無視できちゃうなら意味ないじゃん!」
魔法を使う前にボードが出てくるだけ!?
そんなの、何の制限にもならないじゃないか!
『いえ。今回は対応が遅れたため逃げられてしまいましたが、本来であれば特許を無視して勝手に魔法を行使したことに対して“損害賠償請求”をすることが可能です。また許可を受けていない第三者が権利化された魔法を使うことが分かっていれば、“差し止め請求権”にて、魔法発動前に止めることもできます』
「……それは、俺以外の人でも可能?」
『権利者は祐真様ですので、他の方では不可能です。そして第三者が特許権侵害をしている場面を祐真様が直接目視しなければ、差し止め請求権は発動できません』
「俺が直接目視しなければ、って。さっき俺、魔王が魔法使うところ見てたよ? もし可能なら、あいつが天地晦冥を使えないようにしたい」
『誠に勝手ながら、私の方で既に処理済みです。魔王は今後一切、天地晦冥を利用できない状態になっています』
「そうなんだ、ありがと。それならいいけど」
でも問題はまだある。
「魔王が天地晦冥を使えなくなっても、それ以外の魔法はまだ勝手に使えちゃうってことなんだよね?」
『その通りです』
やっぱりそうか。
俺が発動させた時より、魔王の天地晦冥は遥かに広い範囲を消滅させていた。
特許権利化特典で特許権者である俺が完璧なイメージを持って発動させた魔法より、魔王の魔法の威力の方が高かったんだ。
そんな強敵が、俺の魔法を使ってクラスの仲間たちを攻撃するかもしれない。
ダメだ、絶対に許せない。
「知らなかったとはいえ、俺のせいだよな」
アイリスのアドバイス通りに動いた結果、魔王がこの世界になかった強力な魔法を使えるようになってしまった。彼女は【ガイドライン】というスキル。
【特許権】も【ガイドライン】も。
どちらも俺の力だ。
俺が力の使い方を間違えたせいで、クラスメイトたちの障害となる存在を生み出してしまった。俺の責任だ。俺が責任をとらなきゃいけない。
この世界に来て、【特許権】なんて意味の分からないスキルを貰った時点で俺は少し諦めた。魔王の討伐は、勇者である
魔王と戦うつもりなんてなかった。
こっちの世界のヒトよりちょっと強くなって、ピンチになってる美女を救ってチヤホヤされるくらいの存在になれれば良いかなって思ってたんだ。
でもそれじゃダメだった。
俺のやらかしたことは、自分で処理しなきゃ。
「やっぱり魔王は、俺が倒す」
魔王が天地晦冥を使ってここを攻撃してきたってことは、本来の力じゃ女神様の結界を破壊できなかったってことだろう。新たな力に気付いてしまったんだ。
つまり魔王は今後も、俺が特許登録した魔法を使う可能性が高い。
強力な魔法を使ってくる魔王に、俺なら対応できる。俺だけが魔王に魔法を使わせなくすることができる。
俺が戦うべきだ。
「アイリス、俺を手伝って。ふたりで魔王を倒そう!」
『承知致しました。全力でサポートいたします』
彼女は
俺ならできると判断してくれているのか、それとも……。
どちらにせよ、俺の決意は変わらない。
俺が
俺のクラスメイトには絶対に手出しさせない。
待ってろ、魔王。
俺の魔法を勝手に使ったこと、後悔させてやる。
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