大切な人に全部を背負わすほどヤワじゃない「その手導くぬくもりは」感想

 夢を後押しする家族の温かい強さがとても印象的でした。


 プロセカサブキャラの中でも珍しい大学生である斎藤さん。モモジャンのアイドル歴が長い3人の経験値が高すぎるせいで対等な感じがありますが、大学生にしても十分しっかりした人です。

 新しいイベントを開くため、ワンマンの際に運営を頼んだ斎藤さんに再び相談するモモジャン。手際よく話し合いを進め、既存のスケジュールのまずい点も発見という有能さ、何より信頼できる。雫からマネージャーになってくれないか打診されます。

 しかし、斎藤さんはその話を断ります。理由を聞いてもあまり答えたくない様子。後日、遠方ロケのため宿泊したのは、斎藤さんの家族が営む旅館でした。旅館の一人娘である自分はここを継がないといけない、ここが大好きだから、アイドルの手伝いをする夢を追えばそれができなくなるから。


 斎藤さんが悩んで決めたことなら尊重したいと思いつつ、もやもやしたままの雫は斎藤さんの祖母に出会い、斎藤さんがイベントスタッフに興味を持ったきっかけが雫だったことを伝えられます。そして、旅館を無理に継ぐ必要はなく夢を追いかけてもいいと話しても、頑なに自分の夢は旅館を継ぐことだと言ったこと、でも母も聞けば同じように夢を応援するだろうということを。


 割り切ったつもりが割り切れない斎藤さんの思考、特に好きなことに出会い夢中になった自分の大学生活を「ツケが回ってきたんだろうな」と思う所、すごくわかると思いました。旅館を継がなければいけないことは「本当は忘れてなんてなかった。見ないふりしてただけ」「やらなきゃいけないことを後回しにして……自分のやりたいことばっか優先してた」。

 周りから見れば、あるいは後から振り返れば「むしろその時間は必要だったんだ」となるかもしれませんが、苦しい選択肢に行きついた時、どうしてもそこまでの自身の歩みを否定的に捉えてしまうものです。私も大学院生活はそもそも進学を選んだ時からツケだらけ(奨学金という名の物理的な借金も含めて)、今ももっとこうすればの後悔は絶えませんが、ようやくこの道しかなかったとも思えるようになってきました。


 旅館を発つ日、雫は斎藤さんに夢を追いかけてもいいと思うと伝えます。責任感と使命感だけではうまくいかなかったチアデ時代の自分を踏まえて、立ち止まって考えてほしいと。確かに、ここで想いを無理やり置き去りにして責任感と使命感で走ってしまうこと、これもまた後々ツケが回ってくると言えます。

 それでも、自分の「わがまま」でこの旅館をなくすわけにはと話す斎藤さん。ここで現れた祖母・母が親の強さをまざまざと見せてくれてくれて、ここからの話すごい好きです。子どもが自分の「夢」を追うことは「わがままなんて言わない」、「誰かの幸せを犠牲にしてまで、この旅館を続ける必要はない」、自分たちもまだ現役、継ぎ手がいないなら探せばいい。「私たちはお前が思っているほどヤワじゃないよ。だから心配することは何もない」これ多くの親が思っている一つの核心かもしれないなあと思いました。(もちろんそうした親ばかりでないことはプロセカ内でも示されていますが。)


 後押しを受け、やっぱりアイドルを支える仕事をしたいと決意を固める斎藤さん。祖母の「一度やるって決めたんなら、戻ることは許さないよ。だから、『ダメだったら帰る』なんて甘い考えは持たないこと」「でも、彩香なら夢を叶えられるはずだ。お前が好きなことに一途なのは、私もよーく知ってるから」力強く温かい送り出しです。大女将すごい。

 信頼できる、悩みも過去も分かち合えるマネージャーを得て、モアモアジャンプは次のステージへ進みます。


★本感想のゲーム画像あり版はnoteで公開中:https://note.com/gakumarui/n/n855ee2c2242f

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