プロセカ イベスト感想

がくまるい

バレンタインや贈り物に対する認識が変わった ~感謝を伝える~「キャンドルの香りは思い出と共に」感想

 「キャンドルの香りは思い出と共に」ストーリーを読み終えると心にしみるタイトルです。バレンタインの贈り物としてアロマキャンドルを作るお話。誰かを想い、感謝を伝えること、贈り物という形にすることの意味に真摯に向き合う素敵な話でした。

 この話では、一貫してバレンタインデーは日頃の感謝を伝える日として定義されています。女子から意中の男子へ本命チョコという面が全く出てこないのは、もちろん作品の性質もあるのですが、近年は実社会でも囚われない傾向が強くなっています。


 私自身はバレンタインはおろか、お土産などを含めて贈り物自体があまり習慣になっていません。金銭的事情もありますが、相手が要らないものをあげてしまったら、喜んでくれなかったらという不安が根底にあり、心理的物理的コストに見合わないと思ってしまいます。

 しかし、この話では贈り物を選ぶ過程、作る過程自体が楽しいもの、そして思い出に残るものと示しています。奏にとっては、穂波に教えてもらいながら一歌・寧々と一緒に作ったこと、そしてレン君に教えながら一緒に作ったこと、どちらも大切な思い出となりました。


 そして、アロマキャンドルは思い出の媒介となります。モノが思い出になることの大切さは年齢を経るごとに感じます。昔は旅行で写真ばかり取る人を「残すことに執着して今を楽しめてなくないか?」と懐疑的に見てほとんど撮りませんでした。ですが、年齢を重ねると写真から思い出話が弾むことを実感し、少し撮るようになりました。プロセカに重ねれば、一緒にしたゲームや、バーチャルシンガーの楽曲も感情を思い起こさせる媒介でしょう。贈り物もそうした大切な媒介の一つ、そう思うと素敵な存在なのだと思いました。 

 贈ったものの価値は関係ありません。チョコでも「溶かして型に入れるのが手作りか?」と言われたりしますが、この考えは、贈り物に金銭的コストか、手間という労働力コストどちらかが掛かっていないと価値がないという価値観に基づきます。しかし、この価値観は寂しい。この話でもアロマキャンドルを作るのは言ってしまえば「溶かして固めるだけ」と簡単ですが、素敵な贈り物になりました。


 補足として、本作では一見手作りが過剰に価値づけられている印象を抱く方もいるかもしれませんが、全く既製品を贈ることを否定してはいません。手作りであれば作る過程の楽しみがある、ということです。状況や相手との関係性になどによって作ることが楽しみにはならない場合もありますし、優劣や義務ではありません。 

 義務ではなく、関わりたい形で関わってみて、感謝を伝えられたらありがとうと答える。バレンタインデーが緩やかに優しい形になればいいかなと思います。難しいこと言えば、何かを贈る贈答文化は共同体の維持と関わって義務感と切り離せない、バレンタインデーはそもそも古代ローマの祭りから聖バレンタインの話としてキリスト教化されるなど変化し続けた歴史を持つ、チョコの定着は商業戦略ではあるけど人々が無難な選択肢を欲している側面もある等、まあ一筋縄ではいかないのですが、今回は置いて別の機会に。シンプルに日頃の感謝を伝えるきっかけに活用できる日でいいんじゃないでしょうか。

 内気で不器用な子たちが頑張る姿がほほえましいイベストでした。


★本感想のゲーム画像あり版はnoteで公開中:https://note.com/gakumarui/n/n7ef7fafff84a

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