シンプルに考えるって凡才には簡単じゃねえのよ「BURN MY SOUL」感想
才能の壁にどう向き合うか、壁は決して壊れない現実とそれでも諦められず足掻く姿勢は、東雲姉弟共通に描写されるとても共感できるテーマです。
最初声がデカいだけと評された少年は、ストイックな努力で実力をつけてきました。しかし、散り散りになった仲間をもう一度結束させるためには、もう一つ壁を越える必要があります。実力者と戦う武者修行の日々、自制的に努力し戦い反省しまた努力することは彰人の得意とする所ではありますが、枷となっている力んでしまう癖はどうしても抜けません。
謙さんとのマンツーマンでも掴めなかった感覚のカギとなったのはルカさん。ルカさん自身は直感的なタイプですが、感覚的な部分を何とか彰人に伝えようと、彰人たちのこれまでの想いに関わる歌で実践しながら、精一杯言語化もしてくれています。掴みきれていない状況に寄り添って掴ませようと試みている、天才型がこうして教えてくれるのは凡才には凄くありがたいです。それまで彰人たちの想いをずっと見てきたバーチャルシンガーだからこそできる面はありますが、教える立場としてとても良い姿勢と思いました。壁を越えるタイミングは憧れの謙さんの前で、という配慮も◎です。
「なんでわかんないの」と匙を投げれば終わりですし、「そのうち自然とわかる」はマジで分からないまま終わることも多い、相手と持つ感覚は大きく違ってもそれぞれに自分なりの教えるアプローチが必ずあると思います。
そして謙さんとのタイマン練習で、ついに感情を解き放つ感覚を掴んだ彰人。謙さんは「難しく考える癖がある、もっとシンプルでいい」と考えており、それはその通りなんですが、凡才は簡単にはシンプルであれません。何を持って天才とするかは一概には言えませんが、心のままにで本質を掴めるのが天才、心のままにでは何も無しになってしまうのが凡才という基準は一つあるでしょう。天才なら「楽しめ」の3文字で掴むかもしれない感覚を得るのに大きな回り道が必要でしたが、その過程は決して無駄ではなく、そこで得た経験値もまた彰人を強くしていきます。
(謙さんも尋常でない量を重ねた者ですが、凡才タイプではなさそうです。大河さんの話でも何でも要領よくこなす奴が歌の世界へ来たという話がありましたし、ストイックに努力できるタイプでも元の能力も高い、遥に近いタイプかもしれません)
彰人の成長を見た謙さんが本気を出した場面、天才ならゾーンに入ったまま「あの夜の謙さんだ、ワクワクする」となるのかもしれませんが、まず抱いたのは自分がこれを越えられるのかという恐れ・不安。そこから自分を奮い立たせ、これまで得た大切な想いを燃やす…、この歌の場面では「楽しい」という語が出てこない所に、やはり天才ではない、だからこそ食らいつく姿が熱い東雲彰人の真骨頂を見た気がします。
★本感想のゲーム画像あり版はnoteで公開中:https://note.com/gakumarui/n/nc2a0c9a3faa3
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