概要
微妙な薫りの花びらに暖に包まれたら、そのまま命が失せてもいい
飛騨から信州へと向かう僧が、危険な旧道を経てようやくたどり着いた山中の一軒家。家の婦人に一夜の宿を請うが、彼女には恐ろしい秘密が。角川文庫『高野聖』所収。
(※キャッチコピーは本文抜粋)
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「語り」が「騙り」になる瞬間
高野聖、高野と言えば高野山で聖(ヒジリ)と言えばお坊さん。
その高野聖の宗朝さん(最初は実在の人物だと思っていたが実際には架空の人物らしい)が山で出くわした怪異譚を若い「私」に語り聞かせる。
ほとんどが饒舌な会話の調子で描かれた本作はまさに「地の文」の中に「語り」が嵌め込まれた構成となっている。
なんとこの二重構造、終盤には三重になる!
「親仁(オヤジ)」が女と少年(次郎さん)の出自をタネ明かしする部分がそれである。
実に実に面白いのは「物語の核心」にあたる部分をあえて宗朝の「語り」で描ききらず、さらにもう一重のベールを被せた点だ。
この怪異譚はあえて「ウソかマコトかわからない…続きを読む - ★★★ Excellent!!!艶やな白菊
日本文学とは詩詞によって形成されたもの、と論じた丸谷才一の『日本文学史早わかり』。西洋の文学史の方法では、日本文学史はうまく読み解くことはできぬ、との見解からものされた卓抜した傑作評論。それを本作を再読し、思いおこされました。
詩詞と散文はちがう、という反論は当然ありますでしょう。そういう方は、まず謙虚に、虚心に向き合う(読む)べきではないでしょうか。丸谷才一の評論を。泉鏡花の作品を。さすればその作品が日本文学の脈々たる系譜を受け継いでいることを看取できるはずです。その在り方からしても。当時はすでにドストエフスキーやトルストイが翻訳されてあって、文学をする者の必読となっていたようですけれ…続きを読む