河童

清流にひらめく鮎のようなきよらかな少女。
けれど鮎は清流をくだり、海とのあわいにて卵を産む魚であり。
その泥中に棲み、やがて卵を産みに海の底へと還るのが、黒くうねくる鰻。
その故郷にはひょっとして、唄いながら人を誘う水妖の国があるのかも知れない……。

　Ａが魅了されたのは、ソプラノ歌手のｃ。
　果たして、Aが惹かれたのはc という存在なのか、その歌声なのか。Aにとってのcとは、そして、cにとってAいう存在はどんな意味があるのか。
　恐怖を伴いながらも、とても美しい恋愛譚です。相反するような感情ですが、決して互いを損ないません。

　この話には音楽があります。
　そして、言葉が味覚を擽ります。

　あなたの体感が、この物語を楽しませてくれる筈です。

ちょっと変わった恋愛小説で、どこへ進んでいくのだろうと興味を惹かれました。怖いとは思いませんが、面白かったです。文章、読みやすいです。ホラーというより、ファンタジーとして、色々な思いを抱かせる物語でした。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（125文字）

海が無い土地は例外だが
広大な海に様々な想いを寄せない部族は居ない

多くの神話や逸話は限りを知らず
未確認な生物は、見つかっていないだけなのか、それとも新たに誕生し続けているかもしれない

地球上の生物種のおよそ『86％』はいまだに発見されていないか名前が無い

自然というモノの前では人類の見地など、追いつくことはない

果たして、この話の「種」は、太古からのモノなのか、それとも……

主人公はAという青年。
これは彼とヒロインの物語。

緻密な情景描写によって物語の世界を立ち上げ、機知に富んだ会話で私たちをその奥へと引き込んいく。

奥手な主人公は愛らしく、ミステリアスなヒロインの魅力は主人公を通して私たちさえも惹きつける。

二人の関係はどうなっていくのか？
思わずそう考えずにはいられない。

私たちが彼らの関係性に執心していると、一抹、不穏な影がよぎる。
その時、私たちはこの物語のジャンルが「ホラー」であったことを思い出す。

情景が転調して、変化していく様相の中、物語に漂う透徹した美しさは損なわれることはない。

そして、私たちは彼らの結末を見届ける。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（464文字）

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（441文字）

コンサート会場で美しいソプラノを披露する少女cとその歌声に心を奪われたA。ふたりの織り成す美しくも奇妙な物語です。

すっかり彼女のファンになったA。彼女のコンサートがあるたび頻繁に通うようになり、食事も共にする間柄に。

「遠出して海に行きませんか？」

彼女から誘われた初めての旅行。驚きを隠せないA。でも彼女とふたりで過ごせるのならと約束をします。

非日常の晩夏の扉、くぐりぬけた先の浜辺にふたり。
はるかな海に呼応する彼女の微笑。
音楽と詩と、水精と――これらが言葉を超えて混ざり合い、性のゆらぎが妖しさを孕むように惑わせます。

ふたりの向かう先が奇妙な符号で繋がれて、清流のせせらぎ…続きを読む

この「河童」には誰もが意表を突かれるはず！


「ウンディーネ」が心から離れない私には、いろんな意味で衝撃の一作でした。