ＺＺ・倶舎那

とてもとても霊験あらたかな「神様」（？）のお話です。
ええ、間違いなく。
少なくとも楽しめるお話であることは、疑いないです。

ガラスに針で描いた絵のような、あるいは黒い紙に毛一本の筆をもって白土で画いたような幻視の物語。
夢の中で出会った遠い昔の風景の中で演じられる、残酷で悲しい〝時代劇〟

マヤの遺跡を思わせる密林の呪都。
それは呪文で紡がれた幻の街なのか。
それを描いたこの物語自体が美しい陀羅尼なのか･･･

あなたにも迫るかもしれない現代の妖怪、その正体は･･･

くるりと裏返った異界の裏
それはかくも美しく･･･

闇の中の錦のように美しくも恐ろしい
存在しない彼方のまたとない美声の語り手が騙った説話
そんな思いが頭をよぎる
またとない唯一の物語

神がみあれまする宵宮は、異界のものも行き来する。
化かされたのは祭見物の兄弟かと思いきや、化け物の方であったかと･･･

この「河童」には誰もが意表を突かれるはず！


「ウンディーネ」が心から離れない私には、いろんな意味で衝撃の一作でした。

祭とは清らかな闇（浄暗）に神を招くことといいます。 露店が並ぶ賑やかな参道を歩きながら、懐かしいような、怖いような感慨を抱くのは、そのためでしょう。 祭がずっと続いてほしいと願うの…続きを読む

古き良き日本の夏。 蚊帳が吊られた座敷の話。 翡翠の蝉に注がれた主人公の視点が、読者のそれと重なったかと思うと、ゆるり、とそれはずれていく。うたた寝の夢のように。 夢見ていたのは自…続きを読む

柳田国男も南方熊楠も採録することができない、語られなかった、しかし真実の伝奇物語。

掌編なのに、ピアノのソロ・コンサートを聴くような音の奔流を感じさせる傑作。夏休みに最適。

少年がその家に至る冒頭は、桃源郷への道行きを思わせる。しかし、そこは理想郷ではなく、赤い花が炎のように家を包む町であった。それはおそらく泉鏡花の「髙桟敷」の町に通じる場所であろう。…続きを読む

紬の着物のように初見は地味に思えるが、読んでいくうちに複雑に織り込まれた物語が奥深い光沢と恐怖を潜めていることがわかっていく。やがてその風合いが読者を虜にしていく･･･

大正文学の香りを漂わせつつも、実話怪談の怖さもあわせもつ、懐かしくも新しい怪談

その部屋は絵画や物語生まれ出る場所。そして、それらが食べ尽くされる場所。今日もその部屋を絵の具を携えた鳥が訪れる。

能を持ち出すまでもなく、目を惹く植物、なかんずく花や実は怪異を秘めているもの。それを美しく取り上げた掌編集。とくに1作目が印象的。

折口信夫「口ぶえ」、須永朝彦『天使』に次ぐ傑作。

ささやかで密やかな、とあるサロン。
そこで語られる怪異は･･･。

緻密に織り上げられた文章から浮かび上がる心象の光景。それは少しずつ現実を変容させていく。

たとえば飲み物や人の匂い、さまざまなシチュエーションの会話、そういったものがパイのように積み重なり、ゆっくりと絵を描き出していく。まるでゴブラン織のような物語。

美しく懐かしさも感じさせる紀行から耽美な座敷の描写、そして怪異へ。１行の緩みもない美文と構成、まさに鏡花の後継者というにふさわしい名作です。急ぎでやらねばならない仕事がありながら、…続きを読む

山中の一軒家。それはただの廃屋か呪われた迷い家か異界の入口か。
家が朽ちていくほどに怨念は深くなるのか･･･
鵺は･･･怖い

京都の老舗喫茶店の片隅には、おそらくこうした情景が見られるのでしょう。そういう目をもっている人限定ですが。