薬屋りんさんのシリーズになりますが、他を未読でも楽しめます。
逆に後で知った方が「そういう関係性!?」と楽しめたりするかも。
わたしも後でりんさんの正体を知って、
(淡々としてるけどその視点から人を眺めてたのかあ)
と、視座が変わって面白かったので。
物語は普通の世間話から始まり、話題の人物の過去に飛びます。
蜃気楼やかげろうなど、夢のような幻のようなものが物語のキーになるのですが
──いやぁ、伏線回収が見事で爽快! すっきり鮮やかな読後感だったなぁ。
幻を扱っているからといってふわっとした終わりかたではなくて、本当に鮮やかに着地するので拍手喝采したいぐらい素敵な物語なのです。
ただ物語の展開される神社のご本尊の先行きが個人的に少し残念。
わたしは形態に拘りはないので、現在まで続いていて求人があるなら応募してみたかったかも。
居心地良さそうだし、夢を現実にできる可能性があるなら、ブラックでも求人倍率そこそこありそう、なーんて思ったり。
爽快だし、見事だし、終身雇用形態ですがちょっと就職してみたい物語なのです(※男性は期間雇用で一名採用となってます笑)。
題名とキャッチコピーを読むと、女性が惚れた男性と暮らす夢を叶えようとするのかな……そう想像するのですが、事態は思わぬ方向へ進みます。ネタバレはいたしませんが、予想もしない展開であることは明言します。
夢なら一晩で終わろうものを、この夢の始まりから終わりまでは如何ほどか。気の長いことで。しかし悠長ではなく、裏から伝わるヒリヒリとした焦燥の熱が読者の心を焦がします。
ホラーに分類されますが恐怖のみにあらず。喜怒哀楽が程よく配合され多くの貌を持つ物語です。
夢ならば、幻です。それの何が悪い? 幻は人の心に跡を残すことにおいて現実と変わらず、その跡により人は突き動かされるのですから。
そうでなければ、皆様、小説を読んだり書いたり為されませんよね?
あらすじにあるように、20年ばかり惚れた男と一緒に過ごしたいという想いも素敵だなと思います。
ですが、この物語の素晴らしさは、約束という形で繋いだ一つの想いが綿々と未来へと継がれていく、命の連鎖のような尊い光のように思います!!
物語はどれだけ中身に力を入れても最後の締めくくりで良し悪しが決まるように、個人的には思っています。
どれだけの長編でも中編でも、語り継いだ物語をどう収めるのかで読後感は全然違ったものになってしまう。
こちらの夢蜆─ゆめしじみ─という作品はそういう意味でもラストの締め方が素晴らしく、読後感はホラーなのに泣けてくるような感動する物語へと昇華されていました!!
ホラーが苦手な方でも安心して読めるほどの怖さですので、万人におすすめします!!
とくに文体が綺麗で読みやすく中編ですので、休日の有意義な読書にいかがでしょうか(=゚ω゚)ノ
ある翁が、風変りな旅の薬売りを、貧弱ながらもてなし昔話をするところから、物語は始まります。
それは、奇妙な慣習のある村の話。
村で祀られている、かげろう様、とその、つがいさん、に選ばれた男の話。
妙なことに今回は、これまでとは違うタイプの、つがいさん、が選ばれました。
何か意味があるのでしょうか。
かげろう様、と、かげろう様に仕える女たちの正体とは?
昔話の幻想的な世界に没入して、たっぷりひたれる満足感のある作品です。
描写がとてもお上手で、情景が思い浮かべやすいので、読みやすいです。
この薬売りさんのシリーズは三作目、ああっ、二作目を読みにいかなくてはっ!
ぜひ、おすすめします。