ホラーには、特有の文章表現というやつが必要になってきます。
じっとりと詳細に、事細かに情景を表現することで、日常の正常性と非日常の異常性をより際立たせることができるためです。
が、これをサボって、安直な怪異の存在や、シナリオ構造で怖がらせようとする作品が割と多いのですよね。
ホラーの求める文章力の敷居の高さを感じます。
しかし、本作は空気清浄機というシナリオの妙もありながらも、それ一辺倒に頼り切っていない、実に緻密で見事な「ホラーの文章表現」を書き綴っています。
書き出しのぐうたら男が寝ている場の雑然とした散らかり具合、一つ一つがじっとりと、重苦しく圧し掛かってくるようで、まさに圧巻の書きぶりです。
これは文章に飲み込まれる……そう、「魅せ」られてしまうのです。
こういう傑作はWEB小説の中ではなかなかお目にかかれません。
是非とも学びの手本にするような気持ちでお読みください。
今日び珍しい……と感じたのは私だけでしょうか?
雰囲気と文章力だけで魅せる、正統派ホラーという印象でした。
男は、おそらく線路沿いにある安アパートで生活しているのだと思うのです。
文章の構成は、主に日常パートの『昼』があり、
不穏なことが起きる『夜』がきて、それを繰り返します。
夜が来るたびに主人公と、読み手の感覚が同期するものですから、
なんだか木造アパートの……しめっぽいと言いますか、じめーっと蒸し暑い感覚が伝わってくるのですな。そして、真っ暗闇の中あたりには電車の通過する音が聞こえ、線香の香りがし、やかましい犬の鳴き声が聞こえ……
そういう描写がいちいちリアルなんですよな……。
それで、空気清浄機が『強』になり、一応不穏な事態は収まり、とりあえず『事象』は納得のいく『説明可能』なものであると解決されます。
が、それが二日三日と続くんです。
そして、主人公はそれが空気清浄機のせいであると考え、この日はそれを切って寝てしまうんですな。
そうしたら……? という物語にございますね。
あまりネタバレになるようなことは控えますが、そうですなあ……
なぜか自分に害を与えてきた人が、思い返せば自分のことをずっと思っていてくれたんだなあ……と、そのようなことなのかな。
グロ描写はなし。ただ、私は怖いと思いました。
夢に出てきそう……これかな。
夢に出てきそうな感じです。
そしてラストには……?
お勧めいたします。
ぜひ、ご一読を。
音や空気、というものが強く体感される作品でした。
ごうごう、という音がする。最初は電車の音、続いて空気清浄器の動く音。
ぐっしょりと汗をかいてしまうような空気の中、けだるく過ごす男。
そんな中で彼の日常にふと入り込んでくる「何か」の存在。
本作は何と言っても、ラストの回収が面白かったです。
この現実と夢が交錯するような、朦朧とした意識の中、ゆったりと侵食してくる怪異なもの。
それらを全部打ち消すような「ごうごう」とする空気清浄器。
やはり家電には思わぬ効果が、と喝采を挙げたくなるような感覚。基本的に「空気の悪いところ」には悪いものが憑きやすく、換気は大切、という話もあります。
それを自動でやってくれる家電。それによって「怪異」にも効果があるかも、というのは現代ならではの感覚で面白かったです。
不快な暑さ、ぬるい風、酒と脂のにおい、薄暗い和室、
そして、何気ない音。
最初は「夢の中の出来事」に見えたそれらが、少しずつ重なり合い、
やがて日常の皮を剥いで、底に沈んでいた「何か」が顔を出す。
空気清浄機の“ごうごう”という音が、ここまで怖くなるとは思いませんでした。
生活の中に潜む幽霊譚として、あまりにリアルで、あまりに怖い。
それでいて、文章のひとつひとつが濃厚に“生きている”。
読後、「あれ? 今、自分はどこにいるんだっけ?」とすら思ってしまいます。
夜中に読んでしまったら。
空気清浄機のちょっとした動きに耳を澄ませてしまうこと請け合いです。
家電の稼働音が周囲の騒音と聞き紛うことはよくあること。今回は空気清浄機がその役を買って出るお話です。
気のせいにしたい「恨めしい」という冷たくも胸に落ちる戦慄。家電の音のせいにしてやり過ごすも、どこか糸を引きながら絡みつく艶然に身を委ねてしまうのか。
自動運転設定――気づけば最強モードになるってある意味ホラーですよね。一体何を吸い込んでいるのでしょう?
突如――「空気の汚れ、見つけました……」と赤く灯る無機質な音声。暗闇の中で流れるだけでも怖いのに。
空気清浄機が思わぬ効果を発揮するコメディホラー。思い当たる方は自動運転オーバーナイトをオススメします。