【eスポーツ小説】Faster Fastest R
赤城康彦
New Challenge ――新たな挑戦――
ふぅー、と大きく息を吐きだす。
ハンドルを握り締め、アクセルを踏めば。マシンは雄叫びを上げ、4つのタイヤを激しく回転させて疾走する。
ボンネット越しに見える景色。青空が広がり、雲が泳ぐように空を漂っている。
その空の下、未舗装のダートの林道、右に左にくねくね曲がりくねっている。
ヘアピンに差し掛かれば、左手はハンドブレーキを引いてリアタイヤをロックさせ、リアが流れ。ハンドブレーキから手を離し、アクセルを踏んで、リアタイヤをスライドさせ、フロントタイヤも前から引っ張り、カーブを曲がってゆく。
ヘッドセットからは、コ・ドライバーの声がマシンのエキゾーストノートとともに聞こえてくる。砂利や小石も飛び跳ねる音もする。
画面上にも、コ・ドライバーに合わせて走行指示のマークが現れては消えてゆく。
それに合わせてマシンを操る。
「トゥ、フィニッシュ!」
コ・ドライバーが言えば、画面にもチェッカーフラッグのマークが現れる。
「うしッ!」
ゴールに飛び込む。タイムが表示される。
「よおーっしゃ!」
思わず右拳を握り締め、ガッツポーズ。
自己ベストを更新だ。
フィニッシュすると、ゴールしたマシンの全体像が映しだされる。
ノーズには3つの菱形。言わずと知れたミツビシのマークに、使用マシンは、丸っこい愛嬌のあるデザインの、5ドアハッチバックのラリーカー、ミツビシ・ミラージュ。
テールのハッチにはリアスポイラーが装着され、それがラリーカーらしさを際立たせていた。
未舗装路を激走したうえに、多少(?)の接触もあったりして傷やへこみもあった。なかなかリアルに表現されているものである。
白を基調としたホディに各スポンサーのステッカーが貼られているが、横っ腹に大きく、AVP Gamingのロゴが張られている。
AVP Gamingは所属チーム、ウィングタイガーのメインスポンサーで台湾のゲーミング機器メーカーだ。
「잘했다!」(チャレダタ!)
ヘッドセットから韓国語が聞こえてくる。それからすぐ、
「よくやった!」
と、同じ声で日本語が聞こえてくる。
「감사합니다」(カムサハムニダ = ありがとう)
水原龍一はそう返した。ビデオチャットの相手は韓国の、チームメイトのユン・フィチ(伊貴志)だ。
「課題のコースもどうにか慣れてきたよ」
「うん、その調子だ」
レースゲーム用のハンドルとシートのセット、シムリグに身を預け。サイドテーブルのノートパソコンを自分の方に向け、ビデオチャットで相手とつながってもいた。
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