Tokyo Final ――東京決戦――
優とソキョンも顔合わせして、優佳を通訳として、言葉を交わす。フィチはヤーナと火花を散らし合っているが、そうではなく愛想と愛嬌を見せる龍一は、いろんな意味で面白い人材ではあった。
少し言葉を交えて、それぞれシムリグにスタンバイする。
ゲーミングPCを、100インチ大型ディスプレイを起動させる。
まだシークレット扱いなので音は小さめで、外に漏れないようにしているが。それでも空(くう)を震わせ腹にまで響く心地よさを感じた。
「すごいなあ、オレのミラより高いんだなあ」
シムリグのシートに腰かけ、ポジションの確認をしながら、龍一はぽそっとつぶやき。それを聞いた北条は内心笑いをこらえつつ、微笑ましかった。
Forza E World GPは、それなりの優勝賞金が出て、チームからもそれなりの給与が支給されているはずだが。それに似合わぬ庶民感覚に好感も覚えた。
4K8K対応の有機型ディスプレイで、その画質の美しさは言うまでもなかった。特に100インチ大型ディスプレイも、斜めから見ても画質にムラはなく。チームメンバーは思わずそっちに目を向けてしまったりした。
この画面でどのような試合が展開されるのかと思うと、いちゲーム好きとして胸がわくわくするのも禁じ得なかった。
シムリグのディスプレイは小さすぎず大きすぎずの丁度の大きさだった。小さすぎるのもよくないのはもちろん、あまり大きすぎても目が余計な動きを強いられプレーに支障が出てしまう。
パネルの外から、ほかの展示ブースからの音も聞こえてくる。ゲームの爆発音やBGMに、人々の声。それらも気持ちを盛り上げてくれた。
龍一、フィチ、ヤーナは互いに目配せすると、互いに頷き合い。ゲーム、ラリーマスターズ4を起動し。決勝の3つの課題コースを設定し。
ひとまず3つのコースをひと通り走ってみることにした。
100インチ大型ディスプレイにもゲーム画面が映し出される。
予選でも使用されたウェールズのコース。
ミラージュが、i20が、フィエスタが、3台一緒に、スプリントのように走っている。
「すごい」
優佳は目を輝かせて100インチ大型ディスプレイに感歎した。
もともと美麗なCGで絵画のような芸術性も感じさせるラリーマスターズ4だが、ディスプレイのスペックもあって、まるで幻想世界が映し出されて、その扉が開かれて、この地上に降り立ったようだった。それこそ、ウェールズの国旗にあるようなドラゴンが降り立っても違和感なく、そこからファンタジードラマが紡ぎ出されそうな異世界の雰囲気だった。
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