Tokyo Final ――東京決戦――
ブース開放は試合の時だけでそれ以外はパネルで覆ってシークレットにするということ。そのパネルの中で、プレーヤーはシムリグの調整や練習ができるということなどが伝えられる。
もちろんビジネス展開のためにブース出展をしている。新しく取り扱うシムリグや100インチ大型ディスプレイにスピーカーの展示が主な目的であるという。
その100インチ大型ディスプレイでは、試合展開が映し出されるという。第三者のリプレイ視点で、3台のマシンが当たり判定のないミラージュカー設定で、スプリントレースさながらの展開を見せる、ということだった。
それらの展示品目も、まだシークレット扱いなので、決勝まで口外しないよう口止めをされた。説明時に関係書類も配られ、守秘義務を守ることを誓うサインもした。
「ある意味、社運を皆様に託しているとも言えます。勝手なことを言うのは承知のうえで、試合を楽しみにしつつ、お頼み申し上げるところでございます」
北条は自分の立場とはうらはらに謙虚に頭を下げ。それぞれのチームメンバーも恐縮して頭を下げた。
eスポーツの試合となればプレスも来るものだが。今日は練習に専念してもらうために、日曜日にだけ来てもらうようお願いしているという。なにかと気を使ってくれていた。
以上です、と北条の説明も終わり。
「さあ、やるか」
と、皆立ち上がり、シムリグのもとまでゆく。
シートに着く前に、龍一とフィチ、ヤーナが顔合わせする。
「お久しぶり……」
互いに顔を知っているというだけで、交流はなかったから。これが初めての顔合わせとなる。
ヤーナはふっと不敵な笑みを見せる。
「あの時はダメだったけど、この試合は、私が勝つわ」
青い目をふたりに向け、日本語で勝利宣言する。燃えるような赤い髪にタトゥーも、その気持ちを表し本当に燃えているようにも見えた。
「その挑戦、受けて立ちますよ」
と、日本語も堪能なフィチはそう返すが。当の日本人の龍一は気の利いた言葉がとっさに出ず、
「お互い頑張りましょう」
と、少しおどおどしながら、月並みな挨拶をしてしまった。
「ふふ、噂通りシャイな人だね」
言いながらヤーナは肘を出し、龍一もはっとして肘を出して、
「うん、まあ、どうも口下手で」
と言いつつ、愛想笑いを浮かべて肘タッチをし。それからフィチとヤーナで、互いに火花を散らすように見据え合って肘タッチをする。
「彼は本当にシャイですねえ」
「ええ、まあ。たまに、あの時勝ったのが信じられなくなりますわ」
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