Tokyo Final ――東京決戦――
そうしてフィエスタとミラージュが追いつき。3台のバトルふたたびとなった。
「フィチも頑張ったけど」
「ペース配分も大事ですからねえ」
飛ばしすぎなほど飛ばして、よくぞクラッシュしなかったものだと感心させられる。ウィングタイガーの面々は固唾を飲んでノートPCを見据える。それはレッドブレイドも同じだった。
「そうか、ガンガンに飛ばしてヤーナにプレッシャーを掛けていたのか」
はっとするように優は言った。レースでは基本のことだが、リスクも当然高い。そのリスクのある方を取ったのだ。
「死中に活を求める、か。にくい真似するじゃねーか」
言いながら、心が弾む。そうだ、この緊張感、勝負感。これを求めたからこそ、趣味にとどめず勝負事としての、eスポーツの世界に関わるようになったのだ。
3台は夜のスペインのターマックステージを懸けぬけてゆく。
夜闇から次から次へとアスファルト路面が出てくる。それを右に左にクリアしてゆく。
やがて、コースも終盤に差し掛かり。ゴール手前の、2つ目の町が見えてきた。
わずかな差で3台重なり合いながら町の中に飛び込んだ。まず直角の左カーブ。
ハンドブレーキを引きうまくクリアすれば、右左のS字区間。そこから高速の、レンガ壁の家屋に挟まれた石畳の高速S字。
そこも3台重なり合って駆け抜けてゆく。画面の中のギャラリーはもろ手をあげたりスマホをかまえたりしてラリーを楽しんでいた。それと同じように、リアルギャラリーたちもこの第2レースを楽しんでいた。
高速S字を抜け家屋が途切れて、またレンガの家屋に挟まれた高速右コーナーからの直線。その次は、石壁に囲まれた右左のシケイン。
しくじればマシンのドアが凹んだり、ピンボールよろしく壁にぶつかりながら吹っ飛ぶことになる。
そうならないよう操作しながら、3台ハイペースでシケインに突っ込んでゆく。
ブレーキング、シフトダウンで2速まで落とす。同時にハンドとフットブレーキとハンドル操作でマシンに動きを促す。
(2位以下なんか意味がない!)
勝負を懸けて、3人ともギリギリのラインでマシンを操作する。ここで勝負が決まると言ってもいい。
ミラージュが、i20が、フィエスタが、まず右直角カーブに突っ込み、そこから左直角へと動きを変える。
(いくか!)
龍一は覚悟を決めた。2位以下になるくらいならクラッシュもやむなしと、思い切ってシケインに突っ込んだ。
順位表も見ない。
だがそれは他の2名も同じだ。
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