New Challenge ――新たな挑戦――
ところかわって、日本のどこかの地方都市のアパート。
「うわー!」
龍一は両目が×マークになりながら、愛機ミラージュを橋から落としてしまった。
哀れミラージュはどぼんと川に落ち、夕陽の紅い陽光降り注ぐ川にて、どんぶらこと流されてゆき、画面は暗くなって。
Do not finishedの赤い文字の表示。
「やっちゃった……」
夕方のウェールズのコースの、ゲートクラッシャーモードコースの真ん中ほどにある川にかかる橋。
この橋の両端にゲートが左右交互に置かれていて、ミラージュを蛇行させながらゲートを壊していっていたのだが。ハンドルさばきをミスして、川に落ちてしまったのだった。
「沈下橋ぃー? なんで欄干ないんだよー」
「文句言う暇で、やり直し!」
ヘッドセットから、よく通る女性の声がする。ウィングタイガーのオーナー兼監督のチョ・ソキョン(曺小絹)だった。
初めて会った時は伸ばした髪を金髪に染めてK-POPアイドルのような装いだったが、最近は髪を染めず黒髪に戻っている。
が、韓国語なのでわからない。とっさにもうひとりの女性、江洲葉優佳(えすは・ゆうか)が通訳する。
ビデオチャットをつなげて、ソキョンは韓国にあるチームの拠点でノートパソコン越しに龍一の走りを見ていた。
龍一は韓国のチームに所属しながらも日本にいてのリモート所属だった。
つながっているのはソキョンと龍一、優佳だけではない。フィチも自宅にてビデオチャットをつなげて、自分のシムリグで走り込みをしている。
もうひとり、江洲葉優佳は東京在住のマネージャーで通訳も兼任していた。ショートカットのヘアスタイルで、眼鏡越しにノートパソコンのディスプレイを見据えていた。
この4人でビデオチャットでつながっている。
「龍一さん、ファイトですよ」
「は、はい……」
「もう新人じゃないんだからね、しっかりしなさい」
「は、はい……」
フィチはヘッドセットから聞こえる会話に、走り込みをしながらも微笑ましい気持ちになるのだった。
でも確かに、龍一はもう新人ではない。プロデビューしてまだ1年弱とはいえ、世界大会優勝経験もある。そのステータスの重みよ。
Forza E World GPからは、龍一とフィチは他のゲーム、耐久レースを題材にしたゲームでの大会に参加し、GTマシンをドライブしていた。
世の中便利なもので、オンラインでつながってのリモート参加で、交代でGTマシンをドライブし、ひたすらチェッカーと、勝利を目指した。
だがやはり、勝負の世界は甘くない。
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