Tokyo Final ――東京決戦――
優はノートPCにコース図を表示させて言う。
「通常コーナーリングは、アウト・イン・アウトのライン取りが基本だが。ゲートクラッシャーはその逆、イン・アウト・インで置かれていたりする」
ウィングタイガーも同じようにコース図をノートPCに出してソキョンが話す。
「ゲートを壊すために余計なスラロームも強いられて。そのせいで挙動が不安定になってスピンやコースアウトもあるわ。欄干のない橋では要注意よ」
別に揶揄られているわけでもないのに、龍一はぎくりとしてしまう。
「短距離コースだから作戦とか立てづらいですねえ」
と優佳が言う。それを聞きフィチはうなずいて言う。
「作戦というか、心掛けかな。無駄な動きを強いられるから、いつもよりブレーキングで挙動を安定させるのが重要になりますね」
「コ・ドラの指示もないしね」
龍一の言う通り、コ・ドライバーのフランシス・シェイクスピアのナビゲートはない。記憶力だけが頼りだ。
「四の五の言わず。ただ突っ走る。それだけ!」
と、ヤーナ。
優は、ふん、と不敵な笑みを見せる。他のメンバーも、一瞬苦笑いしそうになりつつ、結局それしかないかと思う。
「そうだな。四の五の言わねーで、走るしかねえな」
「うん。後悔したくないから」
去年のForza E World GPでは12位の結果だった。世界中からの選りすぐりのトップ選手による世界大会なのだから、12位完走でもたいしたものではあるのだが。
「今思えば、守りに入っちゃったね」
予選でクラッシュし下位スタートを強いられ。決勝でもクラッシュしたくないという気持ちがにわかに湧いて。完走優先の守りの走りになってしまった。
と、後になってから後悔させられたものだった。
「余計な動きを強いられるから、挙動の安定には気をつけてな」
「わかってる」
「よし、ならこっちから言うことはない」
時間が来た。
「よし!」
「やるか!」
龍一とフィチは互いの拳を触れ合わせて。ブースに出る。ヤーナもメンバーたちにうなずき、ブースに出る。
「泣いても笑ってもこれが最後。第3レース、もうすぐスタートです!」
司会の冬月は声を張り上げて言う。
スタート前インタビューでは、それぞれが勝利の決意を述べて、シムリグにスタンバイする。
スタートの画面になる。
第1レースと同じのウェールズコースの最初の5キロ区間だが、設定時間は夕方で、空は茜色に染まっていた。
コ・ドライバーの声はなく、ディスプレイに数字が表示され。カウントダウンが始まる。
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