Chase the mirage! ――彼方を追え!――

 ミラージュは人気があるとは言い難く。モータースポーツでの実績も少ないので。そんな理由でなかなか認められず。ランエボやかつてのミラージュサイボーグと比べられて、嫌われることもあった。

 だが、ゴリゴリのレースゲームメーカーのコードは、ミラージュを登場させた。少ないとはいえ、愛好家がミラージュのラリーカーを制作し。コードはそれを見逃さず、ゲームに登場させた。

 意地悪な言い方だが、日本のゲームメーカーがラリーゲームを創っても、ミラージュを出すかどうかは怪しいものだった。それだけミラージュは不人気な車種だった。

 だが、コードは出した。そして龍一をはじめ、世界中の愛好家がミラージュを走らせていた。

 ミラージュのラリーカーの疾走、そしてミラージュで勝つ。それこそ幻のようなものだったが、ゲームの力はその幻をリアルにするところに真骨頂があった。

(日本が表現できない日本って、あるんだなあ)

 と、ふとふと優佳は考えた。

 神経を集中させる。ディスプレイを凝視する。シムリグとリンクする。画面の中のマシンとリンクする。

 没入する。

 リアルとゲームがリンクする。

 草原区間から森林区間に移る。

 うねうねと曲がりくねっているが、見えないけど見える一本のラインが走っている。まるで串で刺したように。

 そのラインをi20が、ミラージュが疾走する。

 山肌や崖っぷちにタイヤが車体やギリギリまで迫ってふんばり、回転する。

 そこから左のヘアピンカーブ。ハンドブレーキを引きリアをロックさせ斜めにスライドさせ。

 砂煙を巻き上げつつマシンはカーブをクリアしてゆき。次の右カーブへと突っ込んでゆく。

 KBカーはうっすらながら見えているが、引き離されずについてゆけている。

(当たり判定ないって、超難しい!)

 龍一は単独タイムアタックの難しさを今更ながら痛感していた。抜きつ抜かれつのスプリントレースなら一瞬の隙を突いて抜き、インを塞いで前に出させないということができるが。

 言うまでもなく当たり判定のないミラージュカーにはそれはできない。もちろん他車を抜くというのも相当な技量を要することだが。

 ソキョンと優佳たちは、固唾を飲んで様子をうかがっていた。

 食らいつき、前に出て、ミラージュカーが出ないように。龍一とフィチはディスプレイを凝視し、うっすらと見えるKBカーを凝視し。自然感溢れるウェールズのステージを駆け抜ける。

(ああ、KBよ。なぜ僕らを置き去りにしたのか!)

 フィチは走りながら感慨にふける。ミラージュカーでなく、マジの勝負がしたかった。

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