New Challenge ――新たな挑戦――
タイムは、フィチがコンマ1秒まさっていた。
「ランキング表を出してください」
ずっしりと重い感じのソキョンの声がして、ふたりはおそるおそるランキング表を表示させた。
1位はHoney Bear。2位はDragon。3位はSpiral K。
だが、さっき出したタイムは自己ベストに後れを取っていた。
「これが決勝だったら表彰台にも立てないわよ」
「すいません……」
ふたりは忸怩たる思いに駆られてしまった。
他の車と抜きつ抜かれつのレースをするのではない、単独でタイムアタックするラリーにおいて、自分との戦いが重要になってくる。
自分との戦いはどのカテゴリーにおいても最終的にはそうなのだが、他の車がなく単独で走る場合は、より重要になってくる。
スタートしてすぐミスしてリタイヤしても、単独走行なので、誰のせいにもできない。
完全自己責任なのだ。
心が張り裂けて何度も叫んでも、叫び声がむなしく響くだけの、取り返しのつかない事態で。かつ、完全自己責任なのだ。
「もうお昼になりますね」
優佳が言う。その通り、12時になろうとしていた。
今日は月曜日だ。
(やっぱりプロでやるって、大変だ)
アマチュアで個人的なプレーなら、ミスっても「あーやっちゃたあ~」とのんきに言いながらリセットできるが。プロの場合はそうもいかない。
そのプレーにプロとしての責任を伴うのだから。
その責任を果たすとは、すなわち勝つこと。
龍一はウィングタイガーと契約し、給料も支払われていた。家は自営業で専従者として働いていたのだが、Forza E World GPで優勝したのを機に、親と相談のうえで仕事を辞め、プロのeスポーツ選手として生きていた。
昨日は個人的にゲームをプレーしていたが、今日はチーム所属選手としてプレーしていた。しかしいいところがない。それがどういうことか。
いろいろ考えるが、お昼だ。
1時間休憩だ。
龍一はシムリグからはなれ、ラジオをつけ、部屋の真ん中のちゃぶ台の上の宅配弁当を食して、横になった。
テレビをつけずラジオをつけたのは、目に負担を掛けさせないためだ。いい加減負担が大きいゲームをしていたのだから。
DJの軽妙なトークののち軽快なポップミュージックが流れる。番組進行状況で時間もわかる。
目を閉じラジオを聴きながら横になって、時間が過ぎゆくに任せてゆく。
13時になり、ノートパソコンの前に座り直し、ビデオチャットに参加する。
午前中はミーティング、練習。午後はミーティングで終わり。という流れだ。
「龍一は、もっとエゴイスティックにならなきゃだめよ」
などとソキョンは言う。
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