Tokyo Final ――東京決戦――
ソキョンも気に留めることなく、幕の内弁当を食べ終わり。優佳を交えてメンバーとあれこれ話し合っていた。
龍一とフィチは隣同士に座って、丁度幕の内弁当を食べ終わったところだ。そこに、ヤーナがその間に来てひょっこり顔をのぞかせるものだから。驚いて変な声が出そうなのを慌てて止めた。
「ちょっといいかな」
「え、な、なんですか?」
ヤーナはポケットに手を入れて、にっこり笑って両者に笑顔を見せて、龍一の方に向き、
「ヴァイオレットガールと、つきあってんの?」
などと、小声ながら言うから、龍一はさらに変な声が出そうになったのを必死に止めて。お茶を飲みなおした。
(すごいこと聞くなー)
フィチは苦笑。
「い、いや、そんな仲じゃないですが……」
「そうなんだ。あんたが勝った時、あの子駆け寄って、ほっぺにちゅーしたじゃん。ふたりはそんな仲? と、私驚いちゃって」
龍一は一気に顔を赤くし、全身が過熱するのを禁じ得なかった。あの試合はウェブでライブ配信されていたから、全世界でその様子を見た人も多く。語り草にもなっていた。
龍一も時々をそれをたずねられては、いいえと照れながら応えることもあったが。まさかHoney Bearことヤーナからもたずねられようとは。
「あ、あれは、祝福のためにしてくれたことで……」
「そうなんだー」
と言いつつ、ヤーナのにっこり笑顔に龍一は対応に困った。隣のフィチは顔をそらして笑いをこらえていた。
「あ、椅子どうぞ」
優佳が気を利かせて椅子を持ってきてくれて。ヤーナはありがとうと言いながら腰かけた。
気にすまいと思っていても、どうしても目が向いてしまうもので。余計な茶々を入れぬよう気を付け、優たちレッドブレイドのメンバーや、北条たち主催者スタッフはその様子を微笑ましく見ていた。
「でも顔真っ赤だよー」
「そ、そりゃあ、女の子にそうしてもらったら照れるもんですよ」
「ふーん。じゃ私にされても」
「え、ええ、まあ、そりゃあ」
ぶっと一瞬噴き出す声がする。フィチだ。おかしくてたまらないといった感じだ。ソキョンたちウィングタイガーのメンバーもそれを微笑ましく見守る。
「でも付き合ってないんだ」
「ええ、まあ」
「ぼやぼやしてると、私が取っちゃうかもよ。あんな、素敵なコ」
「いやあでも、だから、放っておかれないでしょう。もういい出会いがあったかもしれないし」
と言いつつ、もう龍一は顔を真っ赤にしっぱなし。
「ふふ、あんた面白いねえ」
「や、やだなあ、からかわないでくださいよ」
照れて赤面する龍一をヤーナはついついからかってしまいたくなるが、ともに好感も抱いた。好感を抱けばこそだった。
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