第14話 大樹

工房で鍛冶職人のおっさんに、武器を強化して貰う。

見事成功。


「よし!+20!」


エーリルからは、結構な額を報酬として貰っていた。

流石は腐っても王族だけはある。

そしてその金を使って、早速剣を+20まで強化したという訳だ。


「さて、21を目指すべきか……」


+21からはオプションがさらに追加され、武器強化時の効果も上昇する。

が、それと同時に成功率がガクンと下がり、強化に必要な資金もガツンと上がってしまう。


強化の確率は、+4から10までが50%程。

+11から20までは30%で、+21以降は10%と、かなり厳し目の成功率となっている。


更に+31以降はその成功率……なんと驚異の3%!


どう考えても50まで作らせる気のない確率である。

50所か、30だって怪しい。


まあ+10以降は大量課金を期待しての物だから、ある程度は仕方がないのだろうが。


フォースエターナルには、年数回、節目ごとに課金ガチャが襲来する。

その大半が、コスプレだったりのゲームバランスには全く影響しない物だ。

だが、一部超大当たりには有用な物が入っていた。


その中の一つ、護符と呼ばれるアイテムは、強化時の破損を防いでくれる効果を持っている。

運営的には、これを使ってオーバーエンチャントしてねって感じなのだろう。


因みに、ガチャでの期待値は護符1枚で3万程だ。

超絶強気の値段設定。

しかも武器や鎧のパーツごとに種類があるので、狙った護符を手に入れようとすると、実質その数倍が期待値になってしまうという。


これで成功率が上がる訳ではないのだから、運営が狂ってるとしか思えない。


まあそれでも課金してしまうのが、人のサガという物。

俺も+21武器を作るのに、500万近くガチャにつぎ込んだからな。


え?

なんで無職の廃人であるお前に、そんな金があるのかって?


親が金持ちだったとだけ言っておこう。


そう!

俺のかじっていたスネは、大樹の如く太かった訳さ!


正に親ガチャ勝者にのみ許された特権である。


まあそんな事はどうでもいいだろう。

護符も今の俺には必要ない物だしな。


「流石に武器より、防具強化に回した方がいいか」


武器のオーバーエンチャントを諦めれば、余った金を防具類の方に回せる。

+21への挑戦にかかる金額なら、小手も鎧も余裕で+10以上に持っていける事だろう。


「エーリルのパワーレベリングで、強い敵狩るしな」


パワーレベリングは、経験値が多い強い敵を狙った方が絶対に早い。

だがそれをするには今の防御力では心もとなかった。


当たらなければどうという事はないと言いたい所だが、延々続ける狩りを集中して行うというのは、中々に辛い物だ。

万一のミスに対する保険としての、防御力はやはり必要だろう。


「……」


そう、それが合理的な判断だ。

分かっている。

そう、分かってはいるのだ。


だが……強武器は男のロマン!!


「親父!武器の強化を頼むぜ!」


俺は武器職人の親父に、衝動的にオーバーエンチャントを依頼する。


保険?


そんな物はいらん!

当たらなければどうという事はない!

廃人の集中力なめんな!


そしてオーバーエンチャントの結果。

俺は10%の壁を越え、+21鉄の剣を手に入れる事に成功する。

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