第2話 無限強化

「女神様!転職を希望します!!」


……


「全部終わると、パネル自体出て来なくなるのか」


選べるもの全ての転職を終えた後、確認のためもう一度転職希望してみたが駄目だった。

バグってまた転職一覧全部復活とかちょっと期待していたのだが、世の中そこまで甘くはない様だ。

残念。


「取り敢えず、次は半年後だな」


まあ、半年後に更にステータスが上がるかどうかは未知数だが。

今回は転職が一つもかぶっていなかった。

だが、次回の転職は全てのクラスが被りになる。


「一度貰ったクラスのボーナスが、次も貰えるとは限らないからな」


現在の俺のステータスは――


【コモン】


名前:大和猛やまとたける


LV:1

HP:462

SP:88

MP:80


筋力:20

速度:19

体力:12

魔力:16

器用:4

幸運:4


――こんな感じだ。


初期に比べればそうとう高くなっている。

ステータスの総和的には、レベル35相当と考えていいだろう。


まあ実際の強さ的には、ワンランク下になるだろうが。

普通はクラスに特化した能力になる所を、バランスタイプになってしまってるからな。


それにスキルの差もある。

下級クラス全般の初期スキルが使えるとは言え、それらはさほど強くない。

レベルアップで強力なスキルを覚えていく他のクラスに比べたら、大したアドバンテージにもなりはしないだろう。


因みに現在の俺のスキルは――


攻撃スキル:スラッシュ(近接武器)・パワーアタック(格闘)・パワーショット(弓)。

マスタリー:ウェポン(近接武器全般)・格闘・短剣・弓。

特殊スキル:スティール(盗む)・アイテム制作。


攻撃魔法:ファイヤー・コールド。

回復魔法:ヒール


といった感じだ。


「さて……この状態であれを取りに行けるか?」


このゲームには、女神の祝福を受けてのクラスチェンジ――下級クラス。

更に下級クラスのレベルを100まで上げての、上級へのクラスチェンジ。

そしてそれとば別に、特定の条件を満たす事で行う事の出来る特殊クラスへの転職があった。


俺の言ったあれと言うのは、ある特殊クラスへのクラスチェンジを行うためのアイテムの事だ。


「若干きつい気がするなぁ」


普通なら、レベル35もあれば入手は可能である。

だが如何せん、俺のステータスは特化型に劣るバランスタイプ。

更にスキルも追加の物がなく、装備まで初期のままときている。


魔物を狩るタイプのクエストで入手する物なので、今の強さだと正直きついと言うのが本音だ。

まあこれが完全にゲームなら、無理して死んでも取りに行くところなのだが……


「ゲームは死んだら経験値ペナルティを喰らって復活するんだが……」


ゲーム世界とは言え、此処は現実である。

もし死んでも復活しなかったら?

そう思うと無茶は出来ない。

勿論、試す気もないぞ。


「……」


余計な事はせず、半年待つという手もある。

もしボーナスが重複してくれるのなら、半年後に俺の能力は大幅に強化されるからだ。

そうなれば楽に入手する事も出来るだろう。


だが……


「この廃ゲーマー大和猛様が、半年も指をくわえて見てられるかよ!」


そう、俺は廃ゲーマーだ。

半年もまったり生活など、絶対にお断りである。


「とはいえ、能力的に厳しいのは事実だ。プレイスキルで何とかってのも限界がある。なにか対策を考えないと……」


現状でパッと思いつくのは、装備の強化ぐらいだ。


フォースエターナルでは、装備をエンチャントする事が出来た。

+3までが安全圏であり、それ以降は成否判定の有るオーバーエンチャントと呼ばれ、失敗した場合装備は失われる事になる。


「けどプラス3程度じゃ……まてよ、クラスチェンジがキャンセルされるって事は……強化ももしかしたら……」


俺には初期装備という制限があった。

強化された装備が別物と扱われるのならば……転職の様に強化ボーナスだけが付与され、強化の段階がリセットされるのではななかろうか?


「もしそうなら、金さえあれば強化し放題!」


希望が見えた。

いや、もしそうならもはやゲームクリアおめでとうございます状態だ。

何せ装備が無限に強化出来る訳だからな。


「よし!早速工房にいってみよう!」


俺は町はずれの廃墟となっている神殿を出て、工房へと向かう。

工房は街の中心部にある、赤と青の極彩色豊かなド派手な大きな建物だ。


俺はそのドアを開けて中に入り――


内装や店員は、完全にゲームと一致している。


――迷わず武器エンチャント担当の鍛冶屋に声をかけた。


「この剣の強化を頼むよ」


腰に掛けてあった鉄の剣を、髭面の鍛冶職人に付きつける。

これが俺の初期装備だ。


「あん?こんななまくらを強化するってのか?」


「おう!やがて最強の剣になる武器だ。しっかり頼むぜ」


「……まあ、別に構わんが」


鍛冶職人は胡散臭げに剣と料金を受け取り、鞘から抜いた剣を鍛冶台の上に置く。

そして右手に持った槌で、勢いよく剣の刀身部分を叩いた。

その瞬間、剣から小さな星がいくつも舞う。


これがエンチャント成功のエフェクトである。


「よし、出来たぞ」


鍛冶職人のおっさんから返って来た剣を握り、俺は剣へと意識を集中させる。

こうする事で、武器のステータスを確認する事が出来るのだ――やり方は何故か本能的に理解できた。


【鉄の剣+1】

攻撃力:5(+1)


鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1鉄の剣+1。


どう見ても普通に強化されています。

本当にありがとうございました。


無限強化編。

完。

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