ゲーム転生~SSSランクチートかと思ったら(S)初期装固定(S)初期レベル固定(S)初期クラス固定とかいう糞縛りでした~あれ、転職は無効化されるけどボーナスは貰えるな。武器も絶対壊れないし。これは……
まんじ
第1話 SSS
町はずれにある廃墟の中、目の前には人の倍ほどもある女神像が立っていた。
その右手には天秤が、左手には翼の生えたロッドが握られている。
女神フォース。
この女神像は、世界を生み出したとされる神を模して造られた物だ。
その前に跪き、俺は一心不乱に祈る。
心の底から、強く強く祈る。
唯一の希望とも言える、奇跡が起こる事を願って。
『あなたに、戦士としての道を与えましょう』
俺の中に女の声が響く。
これは
そう。
目の前の巨大な像は只の象徴ではなく、女神の依り代でもあるのだ。
――この世界にある女神像には半年に一度、二十四時間程女神の魂が宿る。
その際に祈りを捧げる事で、
俺が祈っていたのはこのクラスチェンジの為である。
『近接戦闘を極める第一歩を踏み出しなさい』
俺の頭上で天使の羽が舞う。
転職のエフェクトだ。
「ふぅ……頼むぞぉ……」
膝を突いて祈っていた俺は立ちあがって、自分のクラスを確認する。
【コモン】
戦士の道を進みなさい。
女神はそう言って俺を転職させてくれた。
だが表示された職業は、初期クラスであるコモンのままだ。
「まあこれは分かってた事だ」
俺の名前は
26歳。
フォースエターナルと言うゲームに嵌まっていた超廃人で、先日体調不良で死んでしまっている。
多分、ゲームのし過ぎが原因だろう。
まあそんな事はどうでもいい。
今の俺は転生者で。
それも、死ぬ程やり込んだフォースエターナルの世界に転生していた。
何でそんな世界があって、そんな場所に転生したのか?
それは神様に聞いてくれ。
俺も気づいたらこの世界にいたので、その理由なんて知り様がない。
分かっている事は、此処がフォースエターナルのゲーム世界そのままである事。
そして俺には、SSSなる謎の仕様がある事だけだ。
(S)初期装固定。
(S)初期レベル固定。
(S)初期クラス固定。
略してSSS。
うん、何処からどう見ても完全に縛りだ。
普通、転生したら特典的なチートが貰える物である。
なのに俺は縛り。
しかも滅茶苦茶強烈な奴。
ぶっちゃけ、これは冒険者としてはほぼ詰みの状態と言っていい。
クラスは
レベルは上げられず、装備も変更できない。
これでステータスが重要なゲームを楽しめとか、無理ゲー過ぎるわ。
まあ一市民として、地道に生きて行けと言う神の思し召しなのだろう。
が、廃人にゲームの世界で普通に生活しろとかもはや拷問に等しい。
当然それを素直に受け入れるつもりなどなかった。
何とか抜け道はない物か?
そう思い、俺はこうやって女神像の前で転職を受けた訳だ。
――フォースエターナルは転職の際、ステータスにボーナスが貰える仕様となっている。
俺の目当てはこのボーナスだ。
初期クラス初期レベル固定ではあるが、ステータスは固定と出ていないからな。
もし初期クラス固定がクラスチェンジ自体をキャンセルする仕様だったら、恐らくボーナスは貰えないだろう。
転職自体出来ていない訳だからな。
だが、もし転職後に強制的に初期クラスに戻す仕様だったならば……
「頼む!」
俺は再び神に祈りながら、自身のステータスを確認する。
【コモン】
名前:
LV:1
HP:109
SP:20
MP:10
筋力:6
速度:4
体力:3
魔力:1
器用:1
幸運:1
「よし!」
俺は自分のステータスを見て、ガッツポーズする。
フォースエターナルの初期ステータスはHPが50。
SPMPが10づつで、それ以外は1となってる。
だが見ての通り、俺のステータスは上昇していた。
これはステータスボーナスが貰えた証拠だ。
「お!スキルも残ってる!!」
戦士転職時には、攻撃スキルのスラッシュと、近接武器装備時に補正のかかるウェポンマスタリーが手に入る。
俺のクラスは【コモン】に戻されてしまっているが、確認するとスキルもしっかりと残っていた。
「これで少なくとも、レベル1戦士としてはやっていけるな」
とは言え、所詮レベル1。
焼け石に水のレベルでしかない。
俺が確認したいのはここからだ。
「女神様!転職を希望します!!」
俺は女神像に転職を希望する。
通常、一度基礎クラスに付くともう女神像による転職は出来ない。
じゃあ何故、女神像に転職を希望したのか?
簡単な事である。
俺は謎の逆チートにより、転職が取り消されてコモンクラスに戻っているからだ。
だからもう一度転職できる!
……かもしれない。
これはまあ、フラグ――情報管理の仕方次第だ。
現在のクラスでチェックというガバ仕様なら、再び転職できるはず。
だが転職専用の専用判定がきっちり用意されていた場合は、残念ながらこれ以上の転職は出来ないだろう。
――俺は前者である事に賭けていた。
「お!でた!」
目の前に転職用の案内パネルが現れ、俺はガッツポーズする。
取り敢えず、もう一度転職は出来る様だ。
その半透明のパネルには――
『転職するクラスを選んでください』
・戦士――近接系【クールタイム180日】
・闘士――格闘系
・回復士――回復系
・魔導士――魔法系
・狩人――弓系
・盗賊――特殊系
・職人――制作系
「同じクラスに連続して転職は出来ないみたいだな」
戦士の選択肢だけは文字が灰色っぽくなっており、クールタイム180日と表示されていた。
どうやら1度転職したクラスは、半年後の再降臨を待たなければならない様だ。
転職は出来るけど制限はされる。
フラグ管理どうなってるのだろうか?
謎だ。
ま、細かい事はいいか。
再度転職できるのだから、それ以外の事は置いておこう。
今は――
「次は闘士に転職だ」
重要なのはここからだ。
ここからが本番と言っていい。
転職すれば、ステータスボーナスと初期スキルが手に入る。
此処までは確定していた。
問題は……さらに別のクラスになった際、その二つがどうなるのか、である。
前の物はリセットされて消えてしまうのか?
もし、消えずに重複して付与されたなら――
『あなたに、闘士としての道を与えましょう』
女神の声が響き。
『格闘を極める第一歩を踏み出しなさい』
俺の頭上で天使の羽が舞う。
これで転職(キャンセルされるけど)完了。
「頼むぞぉ」
俺は再び、自身のステータスを確認する。
【コモン】
名前:
LV:1
HP:172
SP:31
MP:10
筋力:10
速度:7
体力:5
魔力:1
器用:1
幸運:1
「よし!よしキタコレ!!」
闘士と戦士のステータスボーナスは一緒だ。
もし転職ボーナスがリセットされていた場合、能力には一切変化がなかっただろう。
だが、俺のステータスはさっきよりも上昇していた。
闘士への転職ボーナス分ピッタリと。
スキルを確認すると、此方もウェポンマスタリーとスラッシュはそのままに、素手での戦いで補正の乗る格闘マスタリーと、攻撃スキルのパワーアタックを習得していた。
……これで活路が見いだせたぜ。
「まあ完全にバグなんだろうけど……」
普通に考えれば転職し放題。
ボーナス貰い放題などありえないからな
「有難く利用させて貰おう」
基本的に、俺はゲームのバグを突く様なプレイは好きではない。
だが――
(S)初期クラスで転職できず。
(S)初期レベルから一切レベルが上がらない。
(S)初期装備の変更も不可。
こんな無理ゲー押し付けられたら、そらバグでも何でも利用するわ。
じゃねぇと、ゲームとして成立しないんだから。
……所で此処って、ゲームの世界であってるよな?
ゲームそのまんまの世界の有り方に、ここがフォースエターナルである事前提で俺は行動している。
だが実際はよく似た、全く別の世界で有る可能性は否定できない。
「ま、それこそ考えても仕方がない事か」
俺は残った5つのクラスにも転職する。
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