第25話 範囲狩り

死の森。

現在俺とエーリルは、10数匹からのアンデッドに囲まれていた。


それだけの数に一斉に襲われれば、普通に考えれば窮地。

俺もプレイイングには相当自信があるが、流石にエーリルを守りながらだと切り抜けるのは難しい。


だが――


「フロストエンチャントかっぱ!」


詠唱を終えたケロッグが、魔法を発動させる。


【フロストエンチャント】


それは対象とした武器に、一定時間冷気属性の力を込める強化魔法だ。

これを受けた武器は冷気属性になり、更にあるスキルが付与される。


「いくぜ!フロストノヴァ!」


【フロストノヴァ】はエンチャントによって付加される、使いきりの、自分を中心とした冷気属性の範囲攻撃である。

しかも敵味方識別機能付き。

某風の魔装なんとかさんを思わせる素敵スキルだ。


俺が剣を振るうと、膨大な冷気が俺を中心に嵐しとなって周囲に炸裂する。


「ぐげげげぇ」


「ぐぎゃぁ!」


冷気の渦に飲み込まれたアンデッド達のHPが一瞬で0になり、その場に崩れ落ちた。


十数匹のモンスターを纏めて一網打尽。


これは今までの単体狩りより遥かに効率がいい。

MMO系ゲームで範囲狩りが流行るのも、当然と言えば当然の話である。


「ケロッグちゃん凄い!」


実際、このスキルの攻撃力は破格だ。

弱点属性を突いた訳でもないのに、レベル3桁のアンデッド系を確殺できる訳だからな。


月光やフロストエンチャントと言い。

それ以外のスキルと言い。


最初押し付けられた時は、何この嫌がらせとか思ったものだが、こいつはとんでもない掘り出し物である。


「大活躍カッパ!ご褒美欲しいカッパ!」


「ふふふ、じゃあお菓子を上げるね」


「うまうま」


エーリルが袋から取り出したお菓子を頬張り、ケロッグが幸せそうに口をもぐもぐさせる。


現在、ケロッグは進化した事で見た目はかなりスリムになっていた。

色は淡い青。

変身後は同色の、スリム体型のカッパだ。


が、まあこの調子だとまた元のまんまる姿に戻るのもそう遠くない物と思われる。


さて、進化したケロッグのステータスだが――


【フロスト幼体(前期)】


マスター:大和猛やまとたける

名前:ケロッグ

LV:―

成長:50/5000

HP:562

SP:110

MP:103


筋力:15

速度:20

体力:15

魔力:15

器用:15

幸運:15


【スキル】


・妖精変身

・月光

・ひっくりカエル

・転移

・フロストエンチャント(new)

・カエルの歌(new)


――といった感じだ。


ステータスは相変わず低めではあるが、スキルが補助メインな事を考えると、まあこんなもんだろうとは思う。


で、もう一つの新スキル【カエルの歌】だが。

これは周囲に複数の状態異常をばら撒く、範囲デバフスキルになっている。


効果は幻覚・睡眠・混乱・恐怖。

要は精神異常系だな。


その範囲や成功率に関しては、まだ検証していないので分かってはいない。

まあ今の狩場では全く不要なスキルなので、確認はエーリルのレベルを100まで上げてからになるだろう。


え?

なんで今の狩場に不要なのかって?


確殺の範囲狩りをするからってのもあるけど、アンデッド系は精神異常に完全耐性があるからだ。

効かない相手に、成功率や範囲の確認なんて出来る訳もない。


「よし、じゃあこのまま奥に進もうか」


死の森は外縁と中心部で、敵の密度に大きな違いがある。


今までは単体狩りだったので、安全を考慮してモンスターの少なめな外縁で狩りをしてきた。

だが、今は範囲殲滅が出来る様になったので、これからは中心部でガッツリ敵を集めてレベリングさせて貰う。


「中心部はアンデッドがわんさかいるけど、エーリルは慌てず俺の後ろにしっかりついて来いよ。最悪、死ぬ事もあるからな」


エーリルのレベルは現在80。

装備もミスリルなので、早々簡単にやられる事はないとは思う。


とは言え、引きの際に離れた場所でモンスターに囲まれてしまうのは流石にまずい。

だからそうならない様、俺は念押ししておく。


まあ、よっぽどのことがない限り大丈夫だとは思うが……


「は、はい」


俺の言葉に、それまで笑顔だったエーリルの顔が急激にこわばってしまう。

死ぬかもしれないって脅し文句が相当効いた様だ。


ただまあ、ガチガチはあんまり好ましくないな……


生き死にがある以上、緊張感は絶対に必要である。

だが、緊張しすぎるのも問題だ。


ミスに繋がるからな。

適度に余裕を持ってもらわんと。


「まあでも、そんなに緊張しなくてもいい。もし距離が離れそうになったら、直ぐに大声でその事を伝えてくれれば対応するから。そこだけ気を付けてくれればいい」


適当にフォローを入れておく。


「大丈夫カッパ!エーリルが離れそうになったら、ケロッグがタケルに伝えるかカッパ」


「お前は俺の懐の中だろうが」


「ふふん。今のケロッグには、パーティーメンバーの位置が確認できるカッパ。だから懐の中でも問題ないカッパ!」


「へぇ」


スキルはないが、どうやらケロッグ――フロストというクラスには、スキル以外の特殊な能力がある様だ。

固有能力って奴だな。


「ケ、ケロッグちゃん宜しくお願いね」


「任せるカッパ!エーリルはお菓子をくれるから、全力でサポートするカッパ!」


サポートする理由がお菓子ってのはどうかと思わなくもないが、まあこれで後顧の憂いは完全に消えてくれた。

後は狂った様に範囲狩りで敵を狩るのみ。


「よし!じゃあ行くぞ!」


さあ、エーリルのレベル100大金まで猛ダッシュだ!

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ゲーム転生~SSSランクチートかと思ったら(S)初期装固定(S)初期レベル固定(S)初期クラス固定とかいう糞縛りでした~あれ、転職は無効化されるけどボーナスは貰えるな。武器も絶対壊れないし。これは…… まんじ @11922960

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