第7話 追加
テイマー。
それはモンスターを使役して戦う特殊クラスだ。
日本で一番の有名どころを上げるなら、『ゲットだぜ!』とかほざいてるガキンチョだろう。
しかし奴はビジュアル重視派。
某黄色のモンスターを進化させないなど、強さを求めるテイマーから見れば3流もいい所である。
そんなんだから……
おっと、話がそれたな。
テイマーの話に戻そう。
通常、ゲームのテイマーはモンスターを弱らせるなり、アイテムを使うなりで魔物を捉えて使役するのが一般的だ。
だがエターナルフォースでは違う。
野生のモンスターの捕獲は一切できず、クエストで手に入る物を育てて使う事となる。
当然、使役できるモンスターが貰えるクエストはテイマーにしか発生しない訳だが……
「バグか?」
俺のクラスは【コモン】。
当然このクラスではテイム系のクエストは受けられないし、魔物を使役する事も出来ない。
だが実際、蛙型の魔物――コーンは俺の支配下に入っている。
ステータスが見えるのがその証拠だし、マスターの欄もバッチリ俺の名前になっていた。
――もう一度確認してみよう。
【コーン幼体(初期)】
マスター:
名前:none
LV:―
成長:0/100
HP:462
SP:88
MP:80
筋力:1
速度:4
体力:1
魔力:1
器用:1
幸運:1
スキル:none
テイムモンスターにレベルはない。
餌をやる毎に成長の数値が増えて行き、上限に達すると次の段階に進化する様になっている。
「うん、やっぱ俺だよな。しっかし……初期とは言え酷いステータスしてやがるな。スキルも無いし」
速度以外1で、スキルもない。
初期状態と考えてもありえない弱さである。
序盤で手に入るだけあって、完全に雑魚モンスターだ。
「見た事ない奴だし、やっぱ俺が初ゲかな?」
廃人である俺は、テイマーの知識もちゃんと頭に入っている。
だが俺の知る限り、こんな糞弱いカエルのモンスターは存在していない。
イベントの発生条件がアレだった事を考えると、俺が世界初ゲットの可能性が高いと思われる。
……まあ手に入れた奴が、情報を公開してないだけって可能性もあるが。
因みにHPSPMPの数字だけ高いのは、テイムモンスターがマスターである俺とリンクしているためだ。
そのためモンスターがスキルを使えば俺のSPやMPが減るし、攻撃を喰らったら俺もHPが減る仕様となっている。
死ぬときは一緒。
正に一蓮托生。
「……参ったな」
いくら初期が弱いとはいえ、育てれば戦力アップになるのは間違いない。
が、テイムモンスターには明確な弱点が二つある。
一つは、被ダメ判定が二倍になる点だ。
HPがリンクしているので、蛙がダメージを受ければ俺のHPも減る。
この状態で範囲攻撃を喰らえば、当然被ダメは実質2倍になってしまう。
え?
退避させておけばいい?
それが出来れば苦労はしない。
テイムモンスターは、マスターから遠く離れる事が出来ない仕様になっている。
範囲が狭めならいいが、ある程度広範囲のスキルや魔法なんかが飛んで来たら絶対一緒にヒットしてしまう。
大ダメージ待ったなし!
二つ目は、
テイムモンスターは、とんでもなくヘイトを稼ぎやすい仕様となっていた。
それこそ何もさせず、突っ立たせてるだけでも優先的に敵から狙われてしまう程に。
俺はプレイヤースキルに自信があるから敵の攻撃をいなせるが、大雑把な命令しか出来ないテイムモンスターはそうもいかない。
そのため優先的に狙われると、必要以上にダメージを喰らう事になってしまう。
「ボス系で取り巻きに集中攻撃された日には、あっという間に昇天物だぜ」
俺だけなら完璧な立ち回りでどうにでもなる相手でも、この蛙がいたら挑む事すら危険になってしまう。
足手纏いもいい所だ。
「リターンに対してリスクが大きすぎるわ」
テイマーは、テイムしているモンスターを強化する事が出来た。
そのため、多少のリスクは能力で踏み倒せる仕様をしている。
だが俺にはそれがない。
「どの程度育つかも分からない初ゲットモンスターを、強制運用とか酷すぎだろ」
せめてテイマーのスキル、待機が使えればまだ分るのだが……
待機は謎空間にモンスターを収納しておくスキルだ。
テイマーは同時に3体までしかコントロールできず、4体目以降は付いて来るだけの棒立ちになる。
つまり、的だ。
その状態を避けるため、戦闘時は余分なモンスターを待機でしまっておくのが基本となっている。
俺もそれが出来ればやばい相手には収納しておけばいいだけになるのだが、残念ながら初期スキルではないので、クラスチェンジ詐欺では手に入らない。
「完全に縛り追加じゃねぇか。ってか、昇ってこようとすんな!」
さっきまで足元で飛び跳ねていた蛙が、俺の足に取り付きにじにじとよじ登って来る。
蛙に体を這い上られて喜ぶ趣味はないので、俺はそれを手で叩き落とした。
「まあ嘆いても仕方がないか。幸い、こいつ小さいし……」
さっきマッチョの精が、懐から蛙を取り出したのを思い出す。
こいつのサイズなら、懐に入れて動き回る事も可能だ。
蛙なんかを懐に忍ばせたくなんかないが、少なくとも、それならターゲットに取られてやられると言う心配はなくなる。
全部俺が処理すればいいだけだからな。
とは言え、範囲攻撃はどうにもならないが。
「くっそ、ホントどんな罰ゲームだよ。ゲームぐらいじっくり楽しませろよな」
俺は足元の蛙を拾い上げ、それを服の中へと放り込む。
うん、気持ち悪い。
まあだがこの程度なら、そのうち慣れるだろう。
「さて、金ウサギ狩りに戻るか」
折角見つけた金ウサギは湖にポイされ、その代わりに変な
そんな逆境にもめげず、俺は腐る事無く狩を続ける。
――何故なら廃人だから。
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